薬剤師として、給与を上げたい。キャリアアップしたい。そのようにお考えの方は、調剤薬局やドラッグストア等の責任者である「管理薬剤師」を目指してみてはいかがでしょうか?一般の薬剤師と比較して、大幅な年収アップが期待できます。
今回は、管理薬剤師の給与事情と、管理薬剤師の仕事や目指し方などについて簡単にご紹介します。管理薬剤師を目指す方の参考になれば幸いです。
管理薬剤師の年収とは?
管理薬剤師になると、年収はどの程度変わってくるのでしょうか?まずはデータをご紹介します。
管理薬剤師の平均年収
令和3年に実施された「第23回医療経済実態調査」によると、管理薬剤師の平均年収は、646万円と報告されています。
店舗数が少ないほど管理薬剤師の年収は高い傾向にあり、1店舗の薬局では平均817万円、2〜5店舗の薬局では平均729万円、6〜19店舗の薬局では平均672万円、20店舗以上の大規模薬局では平均542万円という結果でした。
薬剤師としての経験年数・勤続年数・勤務地域などによっても差が出ますが、管理薬剤師の平均年収は概ね高い水準を維持していることがわかります。
一般薬剤師と比較した場合の年収
同じく令和3年に実施された「第23回医療経済実態調査」によると、調剤薬局に勤務する一般薬剤師の平均年収は415万円でした。これは、経験年数などは考慮しない全体の平均年収です。
一般薬剤師の場合も、管理薬剤師と同様に店舗数が少ないほど管理薬剤師の年収は高い傾向にあります。
管理薬剤師 | 一般薬剤師 | |
1店舗 | 817万円 | 481万円 |
2〜5店舗 | 729万円 | 423万円 |
6〜19店舗 | 672万円 | 444万円 |
20店舗以上 | 542万円 | 392万円 |
管理薬剤師になれば、管理薬剤師としての役職手当が加わります。基本給が上がることも踏まえ、 平均で200万円前後の年収アップが見込めるということがわかります。
管理薬剤師の給与については、こちらの記事でもご紹介しています。
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そもそも管理薬剤師とは?どんな仕事をしているの?
「管理薬剤師」が実際にどのような仕事をしているのか、ご存知でしょうか?業務内容についてご紹介します。
従業員の指導や監督
店舗の管理責任者として、働く従業員の指導や監督をします。職種も働き方もさまざまなスタッフが協力しあって円滑に業務を進められるよう、調整しなくてはなりません。
シフト作成、環境整備 といった業務だけでなく、従業員の教育や実務に関するマニュアルづくりなども、管理薬剤師がおこなうことが多いです。
業務のあらゆる面で、管理薬剤師がリーダーシップをとり、従業員をまとめ上げる必要があります。
医薬品の在庫管理
医薬品の在庫管理も重要な仕事です。患者が来局したときに、不足なくお薬を渡せるように十分な在庫を備蓄したり、期限切れにならないよう在庫量を減らしたりと調整するため、来局する患者の情報を把握しておく必要があります。
また、近年は流通状況が安定しない医薬品も少なくありません。在庫の確保や、代替医薬品の調達など、薬剤師としての知識を活かした管理が重要です。
利益を上げていくためには、後発医薬品の置き換え率も重要視される項目となっています。経営の部分にも目を向けなければならない点は、管理薬剤師ならではと言えるでしょう。
店舗の運営や管理
店舗の経営、地域貢献、薬薬連携など、さまざまな側面から店舗を効果的に運営していく必要があります。赤字が続けば店舗を閉めなければならなくなるため、年々変更される診療報酬制度に対応し、従業員にも指導しなければなりません。
その土地で長く経営を続けるためには、周辺の店舗や病院との連携をとり、地域へ貢献するという視点も大切です。薬剤師としての知識や経験だけでなく、社外とのコミュニケーション能力 も必要になります。
管理薬剤師の仕事内容について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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管理薬剤師になるための必要な条件とは?
誰でもすぐに管理薬剤師になれる、というわけではありません。以下の条件を満たすことが求められています。
● 原則として、薬局における5年以上の実務経験があること
● 中立的かつ公共性のある団体(公益社団法人薬剤師認定制度認証機構など)の認証を受けた認定制度の認定薬剤師であること
ただし、あくまでも上記の条件は「推奨」であるため、職場によっては必須とはなっていない場合もあります。
管理薬剤師になるメリットとは?
薬剤師として今よりも年収を上げていくには、どのような方法があるでしょうか?代表例をご紹介します。
①収入がアップする
管理薬剤師としての手当が月に数万円つき、大幅な年収アップが見込めるということは、この記事のはじめにもご紹介しました。
定期昇給だけでは、管理薬剤師になるほどの大きな年収アップはなかなか実現しません。管理薬剤師は各店舗に1人ずつのため、やや狭き門ではありますが、確実な年収アップを目指すのであれば早道と言えるかもしれません。
②経験者は転職時に有利
「管理薬剤師の候補として採用する」という求人は多いです。管理薬剤師の経験があれば、ほかの求職者と差をつけることができ、給与面などでも交渉がしやすくなります。
また、管理薬剤師として従業員の育成や店舗運営をおこなった経験は、違う業界へ転職を考える際にも活用することが可能です。いずれは別の業界・企業へ挑戦したいと考えている方も、管理薬剤師を経験してみてはいかがでしょうか。
③キャリアアップにつながる
管理薬剤師は、責任のある仕事なだけあって、「調剤薬局の薬剤師」として大きなキャリアステップとなります。薬剤師としての医薬品の知識だけでなく、経営や法律に関わる知識も必然的に身についていくため、広い視野が持てるようになるでしょう。
管理薬剤師の経験があれば、さらに大きな規模の薬局の管理薬剤師へ、エリアマネージャーへ…というように、さらなるステップアップも見えてきます。
管理薬剤師になるデメリットとは?
管理薬剤師は責任のある立場ですので、メリットばかりというわけではありません。管理薬剤師になるデメリットも知っておきましょう。
①副業ができない
管理薬剤師は、自分が管理している店舗以外において、薬事に関する業務をおこなうことを法律で禁じられています。学校薬剤師としての業務など、一部には都道府県知事から許可を得られる業務もありますが、基本的には副業ができません。
休日診療所での勤務など、薬剤師としての副業をして収入を得ていた方は、管理薬剤師になってからはできなくなるということを加味して給与条件などを考えましょう。
②休みに融通が効かない
店舗によっては、一人薬剤師であったり、正職員の薬剤師が少なかったりと、管理業務だけでなく一般的な薬剤師業務もしなければならない状況に置かれ、負担が大きくなる場合があります。
管理薬剤師は、各種申請資料の作成や在庫管理といった事務作業も多いです。それに加えて薬剤師業務もカバーするとなれば、休みが取りにくくなることは十分考えられます。あらかじめ、店舗の状況を確認する必要があるでしょう。
③年上薬剤師に気を遣う
管理薬剤師は、店舗で最も年上の薬剤師が担うというものではありません。ですから、若くして管理薬剤師になった場合、年上の薬剤師に対しても指導や注意をおこなわなければならないシーンが出てきます。気を遣ってしまう、やりにくいと感じる方もいるようです。
店舗の責任者として、年齢を気にせず、しっかりとリーダーシップを取れることが重要になります。
管理薬剤師になるためには?
管理薬剤師になるためには、大きく2つの方法があります。自分にとっての近道になる方法で、目指してみてはいかがでしょうか。
現職で昇進を目指して働く
現在の職場で、管理薬剤師を目指して働くというのが1つです。身近な上司がロールモデルとなるため、仕事やキャリアをイメージしやすいでしょう。目指すために必要な認定資格取得のサポートなどが得られやすくなることもあるため、「管理薬剤師になりたい」という意思表示をしておくと良いです。
管理薬剤師候補にはさまざまな経験を積ませる必要があるため、チェーン薬局の場合には、店舗異動が必須となることもあります。目指そうと考えている方は、早めに動き始めましょう。
転職の際に管理薬剤師の求人を選択する
「管理薬剤師の候補を募集」という求人を選択することも1つの方法です。勤務している調剤薬局の店舗数が少なかったり、管理薬剤師が若かったりする場合には、ただ待っていても、管理薬剤師になるチャンスはなかなか巡ってきません。
管理薬剤師の経験がなくても、意欲があれば応募できる求人が多いです。管理薬剤師を目指す方は、思い切って転職を考えてみるのはいかがでしょうか。
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まとめ
今回は、管理薬剤師の給与事情を中心に、管理薬剤師になるための方法、管理薬剤師になるメリット・デメリットなどをご紹介しました。
管理薬剤師は責任ある立場であり、それに見合った年収アップも見込めます。
店舗によっては休みが取りにくくなるなどデメリットが生じる場合もありますが、大きなキャリアアップになることは間違いありません。
転職を機に管理薬剤師を目指すという方法もありますので、興味のある方は検討してみてください。