管理薬剤師は、簡単にいうと、その店舗の責任者のようなものです。薬剤師として働き始めると、まず目指すのが管理薬剤師ではないでしょうか。
管理薬剤師になると、これまでとは違った仕事を任せられます。それもあって、一般的な薬剤師よりも高い給与をもらえる傾向にあります。今回は、管理薬剤師の仕事内容や年収、管理薬剤師になるための方法について解説します。
管理薬剤師とは薬局やドラッグストアの責任者のこと
管理薬剤師とは、医薬品や従業員を管理する薬剤師のことです。薬局やドラッグストアで薬剤師の責任者として勤務します。
薬局やドラッグストアでは管理薬剤師を1人置くことが義務付けられています。主な仕事内容としては、以下があげられます。
・医薬品の管理
・従業員の監督
・適正な医薬品使用のための情報提供
このうち、管理薬剤師特有の仕事といえるのは、医薬品の管理と従業員の監督です。
管理薬剤師は店舗で扱う医薬品の在庫管理、仕入れを担い、薬局やドラッグストアで医薬品を必要なときに必要な量だけ供給します。
また、医薬品の温度管理や保管方法にも気をつけなければなりません。定期的に医薬品の期限チェックをし、期限が切れているものは廃棄します。
このほか、従業員の接客が一定のレベルに達しているか、必要な情報を提供しているかを監督するのも管理薬剤師の仕事です。
管理薬剤師になるには一定の要件を満たす必要がある
管理薬剤師は、以前なら特別な資格や経験は必要なく、薬剤師1年目から管理薬剤師として働いている人もいました。
しかし、2019(令和元)年に薬機法が改正され、状況は一変しました。
この法律には薬局の管理者について「管理者は薬局における実務経験が少なくとも5年あり、中立的かつ公共性のある団体(公益社団法人薬剤師認定制度認証機構等)により認証を受けた制度又はそれらと同等の制度に基づいて認定された薬剤師であること」と記載されています。
現在、管理薬剤師になるには、実務経験と中立的かつ公共性のある団体からの認定が必要です。ただし、これは必須条件ではありません。あくまでもこの条件を満たすことが推奨されているということです。そのため、状況によっては実務経験や認定がなくても管理薬剤師になれることがあります。
管理薬剤師の気になる年収は?
厚生労働省の「第23回医療経済実態調査」によると、管理薬剤師の平均年収は約720万円です。同じく厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、一般的な薬剤師の年収は賞与を含めて約580万円でした。
管理薬剤師になることで、年収は約140万円上がります。仕事内容が増える分、年収も高くなるのです。
ただし、薬剤師の年収は地域によって大幅な違いがあります。薬剤師が足りている地域では年収は低くなり、不足している地域では高くなることが一般的です。
管理者になると、年収にどれくらい反映されるかは職場によって異なります。あらかじめ店舗の責任者や人事部などに手当について確認しておくと安心です。
出典:「第23回医療経済実態調査」(厚生労働省)
出典:「令和3年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)
管理薬剤師に求められるスキル
管理薬剤師はどこの店舗で働く場合でも、ある一定のスキルが求められます。その店舗の責任者として働く以上、一般的な薬剤師と同じような働き方にはならないかもしれません。
管理薬剤師にはさまざまなスキルが要求されますが、ここではなかでもとくに重要な3つのスキルについて紹介します。
医薬品・医療制度の知識
まず必要なのは、医薬品や医療制度に関する知識です。自店舗で扱っている薬に関しては、最低限押さえておく必要があります。
管理薬剤師になると、ほかの薬剤師から「この薬について聞きたいことがあるのですが…」と質問される機会が増えます。その際に的確に回答できる知見をもっておかなければなりません。
このほか、診療報酬や保険制度にも詳しい必要があります。日常業務に関わる知識を一通り身につけておかなければ、何かトラブルが起きたときに早急に対処できません。
管理薬剤師は責任者という立場にある以上、医薬品や医療制度の知識が豊富であること求められます。
在庫管理・数値管理の知識
在庫管理や数値管理も管理薬剤師に必要なスキルです。薬の在庫が少なすぎると患者に渡す分が足りなくなり迷惑をかけます。一方、多すぎると在庫過多となり棚卸しの際に店の利益を小さくする要因となります。
最近では多くの薬が入荷しづらい状況が続いており、在庫管理も大変な状況にあります。卸業者に相談しながら、最適な在庫を保てるように管理しなければなりません。
ジェネリック医薬品の採用率や処方箋単価、薬価などの数値管理も大切です。数値管理は加算できる点数に影響し、最終的には店舗の利益にも関わります。
数値管理に万全を期し、利益を上げられる薬局やドラッグストアを目指していきます。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力も重要なスキルです。医薬品の管理やスタッフの監督、取引先と円滑に話を進めるのにもすべてコミュニケーション能力が必要です。
伝える技術と話を聞く技術の両方がなければ、薬局やドラッグストアの運営をスムーズに進めることはできません。
管理薬剤師になるための2つの方法
管理薬剤師のポジションを獲得するためには、主に2つの方法があります。
現在勤めている職場で昇進する
メジャーなのは、現在勤めている職場で昇進する方法です。日々の業務をしっかりとこなして経験を積み、愚直に働いていれば「管理薬剤師になってみませんか?」と上から声がかかることがあります。
現在の管理薬剤師が退職、異動するタイミングで昇進の機会を得るためには、実務での経験を積み重ねて信頼を得ることが大切です。
管理薬剤師の求人に応募する
管理薬剤師のポストが空きそうにない場合は、管理薬剤師を募集している求人に応募して転職するのもおすすめです。なるべく早く管理薬剤師になりたい人は、この方法がもっとも確実で早いといえます。
求人によって管理薬剤師に求める条件が異なりますので、よく内容を確認してから応募することが大切です。
【注意】管理薬剤師を目指す際に知っておくべきこと
管理薬剤師になるうえで注意したいのは、兼業や副業が原則できないことです。
薬機法には、「薬局の管理者(第一項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第一項及び第三項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない」と記載されています。つまり副業、兼業が禁止されているのです。
ただし、薬局がある都道府県の知事の許可を受けている場合は管理薬剤師であっても兼業や副業が可能です。たとえば学校薬剤師は、管理薬剤師であっても行うことができます。
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まとめ
管理薬剤師とは、薬局やドラッグストアで医薬品や従業員を管理する責任者のことです。医薬品の在庫管理や従業員の接客をチェックし、スムーズに患者の対応ができる環境を整えていきます。
管理薬剤師になるためには、原則として実務経験を5年以上積み、外部団体の認定を得る必要があります。できるだけ早く確実に管理薬剤師になりたい人は、管理薬剤師のポジションを募集している職場に転職してみましょう。