「物価高騰の影響で以前のように貯金ができない」「賃上げが話題だけど自分の年収は上がっていない」と悩んでいませんか?
これまで収入を増やす方法といえば、現在の職場で昇給・昇格したり、より年収の高い勤務先へ転職したりといった方法が一般的でした。これからの時代、手っ取り早く収入を増やしたいなら、副業にチャレンジしてみるのがおすすめです。特に薬剤師の職能を活かした副業なら、効率よく収入アップを狙える可能性もあります。
薬剤師が副業をする際には、いくつかの点に注意が必要です。この記事では、薬剤師におすすめの副業や、薬剤師が副業するメリット・デメリット、失敗しないためのポイントについて解説します。
すべての薬剤師が副業できる……わけではない
副業にチャレンジしたいと思っても、すべての薬剤師が副業にチャレンジして良いというわけではありません。勤務先や職種によっては、副業が禁止されているケースもあります。
管理薬剤師・公務員の薬剤師は原則として副業禁止
管理薬剤師には、責任者という立場で薬局を管理する義務があります。そのため、薬機法によって薬事に関する副業が基本的に禁止されています。たとえば、休日に別の薬局やドラッグストアなどで派遣業務やパート勤務をすることはできません。
ただし、以下のような公益性の高い仕事であれば、都道府県知事からの許可を得て例外的に副業が可能となる場合があります。
● 非常勤の学校薬剤師
● 夜間休日診療所などでの輪番勤務
● 薬剤師会の事業
● へき地で他の薬局にも勤務する
また、薬事に関係のない副業であれば特に制限はなく、記事作成や翻訳作業、データ入力、アンケート回答などの副業は可能です。
それに対し公務員は、国家公務員法や地方公務員法で副業が全面的に禁止されています。公立病院や保健所などで働く公務員薬剤師は、学校薬剤師など例外的に許可が出る場合を除き、薬事に関係のない仕事であっても副業をすることはできません。
就業規則で副業が禁止されている場合も
管理薬剤師と公務員薬剤師以外が行う副業は、法律には違反しません。しかし、会社によっては就業規則に違反する可能性があるため、副業を始める前にしっかりと確認しておきましょう。
就業規則に法的拘束力はないため、違反したとしても法律違反ではありません。ただし、就労規則で禁止されているにも関わらず無断で副業をしてしまうと、社内処分の対象になってしまうこともあります。
また、副業可能な会社だったとしても、本業に支障が出ないようにスケジュールを調整し、上司にもあらかじめ相談しておくのが無難です。
薬剤師の職能を活かせるおすすめの副業
薬剤師の職能を活かせるおすすめの副業を、魅力や注意点とともに紹介します。たくさんの副業の中から、自分に合った副業を探してみてください。
派遣薬剤師
「短時間で効率よく高収入を狙いたい」と考えている人には、派遣薬剤師がおすすめです。薬剤師派遣サービスに登録し、希望に合った派遣先に出向いて働きます。
資格の必要な薬剤師派遣は、他の職種の派遣よりも時給が高めに設定される傾向にあります。相場は時給2,500〜3,500円と高めで、効率的に稼ぎたい人にぴったりです。
本業とほぼ同じ仕事内容のため、とくに薬局薬剤師の人にとっては取り組みやすい副業といえるでしょう。また、これまで経験したことのない診療科の処方箋を扱う薬局や面分業の薬局を選べば、薬剤師としての今後のキャリアにもつながる経験を積むことができるかもしれません。
派遣薬剤師は、毎週固定で働くことがほとんどですが「週数回だけ」や「1日数時間だけ」といったように柔軟な働き方ができるのが魅力です。ただ、派遣薬剤師の求人が出ている薬局は非常に人手不足の状況にあるため、即戦力が求められます。調剤経験のない人や経験の浅い人は、まず選ばれないと思っておきましょう。また、欠員の穴埋め要因という性質が強いため、急な欠勤は非常に嫌がられます。子どもが幼い場合など、急に欠勤するリスクのある人は、先方から派遣を渋られるケースもあるため注意が必要です。
毎週固定ではなく、時間に余裕があるときだけ働きたいという人には、単発派遣もおすすめです。単発派遣は、通常の派遣よりも契約期間が短く柔軟で、中には単発で1日数時間だけ勤務することができる求人もあります。
単発派遣の受け入れ先には、緊急に人材を確保したいというニーズがあるため、時給も高めなのもメリットです。ただし、単発派遣は働ける人が法律で制限されている(本業収入が500万円以上など)というデメリットもあります。
派遣薬剤師は、パートやアルバイトと比べて高時給で募集していることがあります。時給の高い職場で働きたい方にとって、魅力的な求人条件が提示されていることも多いのではないでしょうか。 そこで今回は、派遣薬剤師の平均時給や働きやすさ、派遣ならでは[…]
パート薬剤師
派遣よりもゆったりとした環境で気軽に働きたいという場合は、調剤薬局・病院・ドラッグストアなどでのパート・アルバイト勤務もおすすめです。派遣と比較すると時給は低いものの、希望の勤務時間に柔軟に対応してもらいやすい傾向にあります。
薬局やドラッグストアのパートの求人数は派遣よりも多いため、さまざまな選択肢の中から希望条件にあった勤務先を見つけられる可能性も高くなります。営業時間が長い勤務先であれば、本業の終業後や週末のみといった自由度の高い働き方が叶うかもしれません。
「今より高い時給でパート薬剤師として働きたい」 「どうすればもっと時給が高い薬剤師の求人を見つけられるの?」 できるだけ高い時給で働きたいと思うのはごく自然なことです。フルタイム勤務の場合だと、時給が100円違うだけでも年間にすると[…]
夜間休日診療所
管理薬剤師でも従事できる可能性が高く時給も良いのが、夜間休日診療所での勤務です。夜間休日診療所では、20時以降や土日祝日限定などの条件で、アルバイトの求人が出る場合があります。本業の薬剤師業務と仕事内容がほぼ同じで取り組みやすいのに加え、社会貢献性の高さから勤務先にも話がしやすい副業といえるでしょう。
日当は2~5万円程度と、とても効率の良いアルバイトです。ただし、報酬の高さから非常に人気があり、頻繁に働ける確率は低めです。また、募集やシフトの調整は薬剤師会経由で行われるため、勤務先や個人で薬剤師会に加入していないと仕事ができない点にも注意が必要です。
専門学校や予備校の講師
国試勉強で学んだ知識を活かせる副業をしたい人や、人に教えることが得意な人は、美容専門学校や薬剤師国家試験予備校の非常勤講師として働いてみるのはいかがでしょうか?
自身の業務経験や専門知識を活かして、効率的に働ける点がメリットです。デメリットとしては、派遣薬剤師やパート薬剤師と比べると、求人数が少ないことです。また、学生に分かりやすく講義できる高いコミュニケーション能力が必要なのに加え、講義の事前準備で勤務時間外に時間を取られる場合もあります。
WEBライター
WEBライターは、WEBに掲載される記事を作成する仕事です。薬剤師の資格を活用した薬や健康に関する記事の作成は、一般的なWEBライターよりも報酬が高い傾向にあります。
最近はクラウドソーシングサイトでのやり取りが主流のため、PCとネット環境があれば、時間や場所に縛られず在宅勤務が可能です。
報酬は案件によって異なりますが、月収の平均は1〜5万円程度とされています。とくに駆け出しの時期は、常に仕事があるとは限らず、報酬も低めに設定されます。依頼内容によっては記事作成前の下調べに時間がかかるため、実際の作業時間を考えると、かけた時間に対しての収入が割に合わない場合もあります。また、自分のペースで仕事ができると思われがちですが、決められた納期があるため、ある程度のスケジュール管理は必要です。
WEBライターを目指す薬剤師は増加傾向にあるため、安定した収入を得るためには、読みやすく分かりやすい文章を書くスキルが重要です。能力がないと判断された場合は、容赦なく仕事を切られてしまう場合もあります。
医療系の翻訳業務
語学が得意な人は、医療や薬に関する海外文書などの翻訳もおすすめです。
薬剤師としての専門知識と高い語学力が求められるため、仕事を行うことができる人が非常に限られます。そのため、WEBライターよりも高い報酬が設定されることが多く、安定して仕事を得ることができれば、高収入が期待できます。とくに英語以外の言語は対応できる人が少ないため、報酬が大幅にアップする可能性もあります。在宅で完結でき、出勤時間や曜日を気にする必要がない点も、魅力的な副業といえるでしょう。
ただ、医療系翻訳の仕事はそもそも募集が少なく、仕事を見つける難易度が高いというデメリットがあります。また、薬剤師としての専門知識と語学の両方で高いスキルが求められます。時間的な制約は少なめですが、納期までに納める必要があるため、完全に自分のペースで仕事ができるわけはないことにも注意が必要です。
医療系のイラストレーター
絵やイラストが得意な人には、医療系のイラストレーターがおすすめです。薬の作用機序や人体の仕組み、薬局や病院の風景など、薬剤師だからこそ描けるイラストの作成依頼があります。
在宅で自分のペースで仕事ができ、納期に間に合いさえすれば自由な時間配分で仕事を進められるのがメリットです。ただ、プロレベルのスキルが求められることから、仕事を受注するまでの難易度が高いのが特徴です。また、受注できたとしても安定して仕事をもらえるケースは少なく、収入が不安定になりがちというデメリットがあります。
薬剤師が副業するメリット
薬剤師が副業をすることで、さまざまなメリットが得られます。
収入が増える
副業によって、本業とは別の収入源が確保できます。本業だけに頼っている場合は、手取りを数万円アップさせようと思っても、長い時間と努力が必要となります。それに対し副業は、本業を続けながら隙間時間を活用して効率よく収入を増やせる可能性があります。
スキルアップにつながる
副業でさまざまな業種や職場を経験することで、本業では叶わないようなスキルアップが期待できます。別の薬局や病院で薬剤師として勤務する場合でも、本業とは違った環境で働き多くの人と接することで、視野や知識が拡がります。副業を通じて新たな知識や技術を身につけることで、本業の年収アップも狙えるかもしれません。
人脈が広がる
本業では接さないようなさまざまな業種の人との人間関係を構築できることは、副業の大きなメリットの1つです。さまざまな人の考え方や働き方に触れることで、将来のキャリアアップに役立つ手がかりが見つかるかもしれません。
薬剤師の副業で注意すべきデメリット
メリットの多い薬剤師の副業ですが、デメリットも存在します。
自由に使える時間が減る
副業には、本業の休日や隙間時間を利用して取り組むことになります。効率良く稼ぐ方法を確立できなければ、友人や家族と過ごしたり趣味に使ったりしていたプライベートの時間を削らなくてはならなくなる可能性もあります。
夢中で副業に取り組むあまり、家族や友人との人間関係が疎かにならないよう配慮も必要です。
オーバーワークになりがち
休日や夜間など、これまで休んでいた時間に働くことになるため、心身の休息が不十分になってしまう可能性もあります。
副業に時間を費やし過ぎて、本業に支障が出てしまっては本末転倒です。本業との両立が可能な副業を選び、時間や体調の管理に注意するなど、計画的に仕事を進めることが重要です。
手取りが減ることがある
扶養家族としてパートやアルバイトをしている人は、副業によって収入が増えることで、扶養から外れてしまう可能性があります。扶養を外れてしまうと自分で国民年金や健康保険料を負担することになり、手取り収入としては減ってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
薬剤師が副業で失敗しないためのポイント
薬剤師が副業を始める際、失敗を避けるために把握しておくべきポイントがいくつかあります。
副業の目的を明らかにする
薬剤師が副業を始める際に最も大切なことは、副業の目的やゴールが自分の中で定まっているかどうかです。
漠然と副業を始めるのではなく、「効率よく収入アップしたいから派遣薬剤師」「本業とはまったく違う仕事でスキルアップしたいからWEBライター・翻訳・イラストレーター」など、副業の目的やゴールを明確にすることで取り組むべき副業が見えてきます。
薬剤師の職能を活かせる仕事を選ぶ
薬剤師の副業では、薬剤師資格を活用できる仕事を選ぶことが重要なポイントです。資格を活かした副業であれば、非資格者が副業するよりも高い収入が期待できます。
「未経験の新しい分野で副業したい」と考える人もいるかもしれませんが、薬剤師資格やこれまでの経験を活かせる仕事を選ぶことが、負担が少なく短期間で高い収入を得る近道です。
無理のない範囲で働く
副業で得られる収入の多くは、あくまで一時的なものです。目の前の収入にとらわれず、無理なく続けられる副業なのかをしっかりと見極めましょう。副業に励むあまり本業が疎かになり、勤務先との関係性が悪化したり、過労で健康を害してしまったりしては本末転倒です。
副業での失敗を避けるためには、これを良い機会として思い切って転職してしまうのも1つの方法です。転職がうまくいけば、収入アップやスキルアップの希望を叶えることができるかもしれません。
まとめ
社会がより柔軟で自由な働き方を求める方向へシフトする中、副業を考える薬剤師が増えてきています。
副業には、即効性のある収入確保や普段とは異なる業種や職場だからこそできるスキルアップなど、さまざまなメリットが存在します。しかし同時に、休息時間やプライベートの時間を削る必要があるといったデメリットにも目を向ける必要があります。
副業を検討するときは、手当たり次第に始めるのではなく「副業によって何を得たいのか」という目的を明確にしておくことが大切です。
また、薬剤師として今後のキャリアを考えた場合、一時的な収入が得られる副業よりも、より長期的なキャリアアップが期待できる転職活動を選んだ方が良いケースも存在します。転職エージェントを利用するなど、プロのアドバイスも参考にしながら副業について考えてみてはいかがでしょうか。