乳幼児の処方せんを応需する場面では、「どの加算が算定できるのか」「医科と調剤で考え方は同じなのか」と迷うことも少なくありません。とくに乳幼児加算は、医科・調剤・在宅医療で制度の位置づけが異なるため、断片的な理解のままでは算定ミスにつながるおそれがあります。
今回は、乳幼児加算の全体像を整理したうえで、調剤報酬における算定ポイントや注意点を薬剤師の実務視点から解説します。日常業務の確認としてご活用ください。
乳幼児加算とは?

乳幼児加算とは、乳幼児に対して診療や調剤、服薬指導などを行った場合に、通常の診療報酬・調剤報酬に上乗せして算定できる加算のことです。
乳幼児は身体機能が未発達であり、年齢や体重に応じた用量調整、剤形の選択、保護者への丁寧な説明など、成人患者とは異なる専門的な配慮が求められます。こうした医療従事者の負担や専門性を評価する目的で、乳幼児加算が設けられています。
調剤報酬における乳幼児加算は、単に「乳幼児に対してどのような場合でも算定できる加算」ではありません。
薬学的管理や服薬指導を適切におこなうことが前提となっており、算定要件を理解せずに対応すると、算定漏れや不適切算定につながるおそれがあります。
日常業務の中で適切に算定できるよう、制度の位置づけや考え方を整理しておくことが重要です。
乳幼児加算の種類

乳幼児加算は、医科・歯科・調剤といった診療区分ごとに異なる仕組みで設定されており、加算の考え方や区分も必ずしも共通ではありません。
とくに医科や訪問看護の分野では、「厚生労働大臣が定める者に該当するかどうか」によって、乳幼児加算の点数や評価が分かれる制度が設けられています。
一方で、調剤報酬における乳幼児加算は、年齢要件や服薬指導・薬学的管理の内容にもとづいて算定される仕組みであり、この区分によって点数が変わることはありません。
制度全体の理解を深める目的で、ここでは医科側の考え方について整理します。
厚生労働大臣が定める者に該当する場合
「厚生労働大臣が定める者に該当する場合」とは、主に医科や訪問看護における乳幼児加算の区分で用いられる考え方です。これは、医療依存度が高い乳幼児や、継続的かつ専門的な医療管理を必要とする患者を、より手厚く評価する目的で設定されています。
この区分に該当する場合、医科の基本診療料や訪問看護関連の報酬において、通常より高い1日あたり180点の乳幼児加算を算定可能です。
● 超重症児または準超重症児
(スコアリングにより判定)
● 特掲診療料の施設基準等別表7に該当する疾病等の小児
(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、人工呼吸器を使用している状態など)
● 特掲診療料の施設基準等別表8に該当する小児
(在宅気管切開患者、在宅酸素療法や在宅血液透析を実施している患者、人工肛門や人工膀胱を設置している患者など)
調剤報酬における乳幼児加算の算定要件や点数には、影響しません。
上記に該当しない場合
厚生労働大臣が定める者に該当しない乳幼児についても、医科の診療報酬体系では年齢要件を満たしていれば乳幼児加算の対象となります。この場合は、該当者区分よりも低い1日あたり130点が設定され、一般的な乳幼児診療に対する評価として位置づけられています。
この区分も、あくまで医科・訪問看護における報酬設計上の考え方であり、調剤報酬の乳幼児加算とは切り分けて理解する必要があるので注意してください。
基本診療費に関する乳幼児加算について

乳幼児加算は、調剤報酬だけでなく、医科の基本診療費にも設定されています。
基本診療費における乳幼児加算は、診察や診療に伴う時間的な負担や、安全のためのきめ細やかな配慮や判断を要することを評価したものです。
薬剤師として直接関わる項目ではありませんが、医療全体の流れを理解するために知っておきましょう。医科側でどのような加算が行われているかを把握しておくことで、保護者からの質問に対応しやすくなり、多職種連携の理解も深まります。
初診料金
初診時の乳幼児加算(75点)は、初めて医療機関を受診する乳幼児に対して、初診料に加えて算定されます。初診では、症状の把握や診断だけでなく、保護者への説明や不安への対応など、多くの時間と配慮が必要となるため、加算が設けられています。
対象となるのは、6歳未満の乳幼児であり、年齢は受診日時点で判断されます。6歳の誕生日当日に受診した場合、乳幼児加算を算定できません。
初診時に処方される薬剤は多岐にわたるケースも多く、用量や投与日数の妥当性、副作用の初期症状など、薬剤師として説明すべき項目も多くなります。
医科での加算の考え方を理解しておくことで、より一貫した対応が可能になり、保護者の安心感・納得にもつながるでしょう。
再診料金
再診時にも、乳幼児に対しては乳幼児加算(38点)が設定されています。再診では、症状の経過確認や治療方針の調整などがおこなわれますが、この場合にも乳幼児には特別な配慮が必要となることから、再診時にも加算が認められています。
乳幼児の場合は症状の訴えが不十分であったり、体調変化が急であったりと、成人とは異なる点が多いです。そのため、診察時には前回からの変化を丁寧に確認し、保護者から聴取した情報を踏まえた慎重な判断が求められます。
こうした診療上の特性が、再診時の乳幼児加算に反映されています。
調剤の場面でも、前回処方との違いや服薬状況の確認を丁寧におこなうことが重要であり、医科・歯科と調剤の考え方が連動していることを意識すると理解しやすくなるのではないでしょうか。
調剤に関する乳幼児加算について

調剤報酬における乳幼児加算は、薬剤師がおこなう調剤および服薬指導の専門性を評価するものです。乳幼児への調剤では、粉砕や混合、シロップ調製など、成人よりも手間のかかる作業が多く、保護者への説明にも時間を要します。
算定にあたっては、単に薬を交付するだけでなく、乳幼児の年齢や発達段階に応じた服薬指導をおこなっていることが重要です。薬歴への記載内容も含め、実務として算定根拠を残しておく意識が求められます。
「服薬指導管理指導料」「かかりつけ薬剤師指導料」
「服薬指導管理指導料」または「かかりつけ薬剤師指導料」に、「乳幼児服薬指導加算(12点)」を加算できます。乳幼児の特性や背景を踏まえ、安全かつ容易に服用できるような支援については、薬剤師の職能の一つである製剤特性等を踏まえた対応が必要であり、これを評価する加算です。
6歳未満の乳幼児が、適正かつ安全に薬剤を使用するために、必要な情報の確認、誤飲防止等の必要な服薬指導、情報提供をする必要があります。また、服用期間中、家族等から処方薬剤に関する問い合わせがあった場合、適切な対応・指導などをおこなう体制も必要です。
指導の要点などは、薬歴だけでなく、患者の手帳にも記載が必要とされています。手帳を持参しなかった患者には、シール等を交付し、次回の来局時にシールが貼付されていることを確認することで差し支えありません。ただし、手帳を持っていない患者の場合、手帳を交付した場合にのみ加算できます。
これは外来患者に対する算定項目であり、在宅患者に対しては次で説明する別の加算を取得します。
「在宅患者オンライン服薬管理指導料」「在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料」
オンラインによる指導の場合でも、乳幼児の服薬には特別な配慮や支援が必要なことには変わりありません。
そこで、「在宅患者オンライン服薬管理指導料」または「在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料」に「乳幼児加算(12点)」を加算できます。
療養中の乳幼児がいる場合、保護者は来局自体が負担となるため、オンラインによる対応はニーズが高いです。
通院が困難なため在宅で療養をおこなっている6歳未満の乳幼児を対象に、対面による服薬指導と同様に、年齢や体重などの確認、適切な服薬方法の指導、誤飲防止の指導などを実施しましょう。手段が異なるだけで、求められる薬学的管理の質は変わらない点に注意が必要です。
ただし、18歳未満の医療ケア児に対して算定する「小児特定加算(350点または450点)」と、乳幼児加算とは、併算定できません。
「在宅患者訪問薬剤管理指導料」「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」「在宅患者緊急時等共同指導料」
訪問による在宅指導においても、乳幼児加算は重要な位置づけとなっています。患者の自宅では、服薬環境や保管状況を直接確認できるため、より実践的な指導が可能です。
訪問時には、薬剤が手の届かない場所に保管されているか、兄弟姉妹の誤飲リスクがないかなど、家庭環境を踏まえた確認と助言が求められます。
こうした環境調整を含む必要な指導をおこなった場合、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」「在宅患者緊急時等共同指導料」に、「乳幼児加算(100点)」を加算できます。
18歳未満の医療ケア児に対して算定する「小児特定加算(350点または450点)」と、乳幼児加算とは併算定できない点は、在宅患者オンライン指導の場合と同様です。
基本入院費に関する乳幼児加算について

基本入院費に関する乳幼児加算は、入院中の乳幼児に対する看護や管理の負担を評価するものです。入院中の乳幼児は、成人患者に比べて観察頻度が高く、医療スタッフ全体でのきめ細かな対応が必要とされます。
薬剤師が直接算定する項目ではありませんが、入院中の薬物療法に関わる立場として、制度の背景を理解しておく必要があるでしょう。病棟業務や退院時指導においても、乳幼児特有の配慮が求められるため、加算の考え方は調剤業務にも通じるものがあります。
乳幼児加算(3歳未満)は、病院の場合で333点または289点、診療所の場合で289点です。幼児加算(3歳以上6歳未満)は、病院の場合で283点または239点、診療所の場合で239点となっています。
これらの加算は、乳幼児が疾患の治療のために入院する場合に算定できるものであり、産婦や生母の入院に伴って健康な乳幼児を在院させる場合には算定できません。
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薬剤師は幅広い診療科の処方箋を応需するため、全般的な知識を求められる側面が強い傾向にあります。一方で、小児薬物療法、がん化学療法など、特定領域の専門性を高めたいと希望する方もいるでしょう。
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まとめ
乳幼児加算は、乳幼児に対する診療や調剤、服薬指導に求められる専門的な配慮や業務負担を評価する重要な加算です。ただし、その考え方や算定要件は、医科・調剤・在宅医療で異なる部分があります。
薬剤師が調剤報酬として算定する乳幼児加算については、年齢要件や指導内容を正しく理解し、薬歴やお薬手帳への記載を含めて根拠を残すことが重要です。制度を正しく理解し、安心・安全な小児薬物療法につなげていきましょう。