派遣薬剤師は、パートやアルバイトと比べて高時給で募集していることがあります。時給の高い職場で働きたい方にとって、魅力的な求人条件が提示されていることも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、派遣薬剤師の平均時給や働きやすさ、派遣ならではの特徴など、派遣薬剤師の実態を解説いたします。
派遣薬剤師の年収・時給相場【職場・地域別】

派遣薬剤師といえば「高収入で効率よく稼げる」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
時給相場は勤務する地域によっても大きく変動します。一般的に薬剤師が充足している都市部と比較して、慢性的な薬剤師不足に悩む地方やへき地では、人材確保のために高時給の求人が出される傾向にあります。
これは、地方の薬局や病院が採用活動に多大なコストと時間をかけても、応募者が集まりにくいという背景があるためです。そのため、一時的にでも即戦力となる派遣薬剤師を、都市部よりも高い給与条件を提示して確保しようとします。
この地域差は、派遣薬剤師の年収を考える上で非常に重要なポイントと言えるでしょう。
ここでは、派遣薬剤師の収入相場について、以下の3つの職場別と地域別の傾向をご紹介します。
● ドラッグストア
● 病院薬局
調剤薬局の時給相場と求人の特徴
派遣薬剤師が働く職場として、最も一般的なのは調剤薬局です。
派遣薬剤師は、基本的に時給制で給与が支払われます。勤務地や働く時間帯にもよりますが、平均時給は約3,000円とされていて、調剤薬局でパート薬剤師として勤務するよりも時給が高い傾向にあります。
とくに、夜間の勤務やへき地での勤務など、働き手がなかなか見つからないような案件では、3,000円を上回る時給が提示されることも少なくありません。
派遣薬剤師の月平均労働時間は約136時間とされています。先ほどの時給から年収を算出すると、派遣薬剤師が調剤薬局で勤務する際の平均年収は約490万円となります。
調剤薬局で高時給の求人が多い背景には、その売上構造が深く関係しています。
薬剤師は、調剤報酬の稼ぎ手として企業の売上に直接貢献する専門職です。そのため、急な欠員で薬剤師が不在となると、薬局の運営が停止し収益が完全に途絶えてしまいます。
営業停止による莫大な損失を避けるため、企業は一時的に高い人件費をかけてでも、即戦力となる派遣薬剤師を確保しようとします。
特に経営体力のある大手チェーン薬局ほど、事業を止めないための投資として高時給を提示する傾向が強いです。
ドラッグストアの場合
派遣薬剤師がドラッグストアで勤務する際の平均時給は約2,700円〜3,000円とされており、月平均労働時間136時間で年収に換算すると、平均年収は約440~490万円となります。
派遣薬剤師としてドラッグストアで勤務する際に注意しておきたいのは、任される業務内容の範囲です。店舗併設の調剤薬局での調剤業務に加えて、OTC医薬品の接客や商品の陳列、レジ打ちなどの業務を任される場合もあります。
ドラッグストア未経験の薬剤師の方には少々ハードルが高い場合もあるため、応募する際には業務内容の詳細についてよく確認しておくことが大切です。
病院の場合
病院への薬剤師派遣は、派遣法によって基本的に禁止されています。しかし、産休・育休者の代替要員や紹介予定派遣の場合は、特例で就業が認められています。
派遣薬剤師が病院で働く際の平均時給は約2,500円〜3,000円とされており、月平均労働時間136時間で年収に換算すると、平均年収は約400~490万円となります。
派遣薬剤師が病院で勤務する際の主な業務は、院内処方の調剤業務や服薬指導で、調剤薬局との大きな違いとして、注射剤を取り扱う機会が多いのが特徴です。
また、場合によっては病棟で患者指導やほかの医療スタッフとの意見交換を行う機会もあるため、とくに病院未経験の方は、自分のスキルで対応できそうな業務内容かどうかを事前に確認しておきましょう。
紹介予定派遣とは、最長6ヶ月間の派遣雇用期間を経て、薬剤師と病院の双方が合意した場合に正社員やパート として直接雇用される制度です。派遣として働きながら、実際の業務内容や職場の雰囲気を確かめられるのが大きなメリットです。
【地域別】都市部より地方の方が高時給になる傾向
派遣薬剤師の時給は、勤務するエリアによって大きく異なり、都市部よりも地方の方が高時給になる傾向が顕著です。
薬剤師の多くは都市部に集中しており、地方では慢性的な人材不足が続いています。そのため、地方の薬局や病院は、採用活動に多大なコストと時間をかけても人材を確保するのが困難な状況です。
そこで、一時的にでも戦力となる派遣薬剤師を、高時給を提示して確保しようとします。例えば、都市部の時給相場が3,000円前後であるのに対し、地方では3,500円〜4,000円といった好条件の求人も珍しくありません。
【派遣薬剤師の実態1】「給与が高い」は本当!ただしフルタイムの求人が見つからないことも

派遣薬剤師は給与が高いというイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
ときには、「正社員で働くよりも稼げる」、「奨学金を早く返したいなら派遣薬剤師が一番」ともいわれるほどです。高い時給で働きたい方にとって、より良い条件で働けることはとても魅力的なことです。
ここでは、派遣薬剤師の収入に関する実態をご紹介します。
派遣薬剤師の平均時給と地域・職場別の相場
派遣薬剤師の平均時給は約3,000円です。一方、厚生労働省が公表している「令和6年賃金構造基本統計調査」では、正社員の薬剤師の労働時間は167時間(残業時間含む)に対して、月収は43万800円でした。単純に月収を労働時間で割ると時給は約2,580円です。
このデータから、時給3,000円の派遣薬剤師だと正社員に比べて時給が高いといえます。また、派遣薬剤師は人手不足の地域でさらに時給が高くなる傾向にあるため、都市部よりも地方のほうが高くなっていることがほとんどです。
仮に時給3,000円で週5日のフルタイムの場合、日給は24,000円、1ヶ月20日間の勤務で月給は48万円です。給与を見ると効率のいい働き方といえるでしょう。
ヤクジョブの調査によると、都市部の時給相場が平均3,000円程度であるのに対し、薬剤師が不足している地方では平均3,500円を超える高時給の求人も珍しくありません。
高時給な理由は、地方の薬局や病院が、正社員の採用に時間とコストをかけても人材を確保するのが難しいためです。そのため、即戦力となる派遣薬剤師に好条件を提示してでも、一時的な人員不足を解消しようとします。
このように地域によって時給に大きな差が生まれるのが、派遣薬剤師の給与の大きな特徴です。
出典:e-stat|令和6年賃金構造基本統計調査「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
なぜ派遣の時給は正社員より高いのか
派遣薬剤師の時給が正社員より高く設定されている主な理由は、以下の3つです。
● 短期的な人件費の調整
● 福利厚生の違い
派遣薬剤師には研修期間がなく、すぐに現場で活躍できる即戦力としてのスキルが求められます。企業側は教育コストを削減できるため、その分を時給に上乗せするのが可能です。
また、ボーナスや退職金がない分を、正社員との待遇差を埋める意味合いで、時給が高く設定されているといった面もあります。
年収換算すると正社員より給与が低いケースも
時給3,000円で1日8時間、フルタイムで週5日働いたとすると、年収は576万円になります。(年間所定労働日数が240日の場合)単純計算をすると正社員より年収が高く見えるかもしれません。
ただし、派遣薬剤師の求人は正社員やパートと比べると少なく、年間を通してフルタイムで働ける保証はありません。また、正社員にはボーナスがあることが多く、結果として正社員の年収が高くなるケースもあります。
時給だけで見ると正社員は稼げないように思えますが、「令和6年賃金構造基本統計調査」の数字から計算すると、ボーナスを加えた年収は約599.3万円でした。ボーナスを加味すると、わずかですがフルタイムで働いた場合の派遣社員よりも正社員の年収が高い結果になっています。
比較すべきは、月々の給与や年収を大きく左右するボーナスだけではありません。
正社員には、将来受け取れる退職金制度があるのが一般的です。一方、派遣薬剤師には退職金がないため、生涯にわたって得られる収入で比較すると、さらに正社員の方が多くなる可能性があります。
また、派遣契約は雇用期間に定めがあり、必ずしも更新される保証はありません。契約が満了すれば収入が途絶えるリスクがある点も、安定した雇用が保障されている正社員との大きな違いです。
【注意】交通費や社会保険の扱いは事前確認を
派遣求人に応募する際には、給与以外の待遇面、特に交通費と社会保険の扱いを必ず確認しましょう。
交通費は時給に含まれているケースと、別途全額または一部が支給されるケースがあります。遠方の職場を希望する場合は、大きな差額になるため見落とせません。
また、社会保険への加入は、派遣会社の規模にもよりますが、「週の所定労働時間が20時間以上」 「契約期間が所定の期間を超える場合」などの条件を満たす必要があります。応募前に以下の点は必ず確認・比較しましょう。
● 社会保険の加入基準
● 薬剤師賠償責任保険への加入の有無
● 研修制度や福利厚生の内容
派遣会社によって福利厚生の内容は異なるため、注意が必要です。
【派遣薬剤師の実態2】「希望の働き方を実現させやすい」は本当!ただし忙しい職場が多い

派遣薬剤師に対して、自由な働き方ができるイメージをもっている方もいるのではないでしょうか。ここでは、働き方の実態について解説します。
自分に合った勤務条件を選びやすい
派遣の場合、フルタイム以外に短時間勤務や勤務日数の少ない求人も存在します。
勤務条件の選択肢が幅広いため、自分の希望に応じた働き方がしやすいでしょう。正社員やパートで働きながら、ダブルワークとして派遣で勤務する方も少なくありません。
例えば「扶養の範囲内で週2日だけ」「Wワークとして午後のみ」「平日のみ」といった曜日・時間指定など、自身のライフスタイルに合わせた求人を選びやすいのがメリットです。
勤務条件を選べると、育児や介護、趣味などプライベートと仕事を両立させるワークライフバランスを実現しやすくなります。
残業がない
派遣先の企業が派遣社員に残業を命じる場合は、派遣元との雇用契約や36協定に基づく必要があります。派遣先の企業が自社の規定に応じて残業を命じることはできないため、残業を指示された場合も断ることができます。
契約上の問題はありませんが、残業を断ることで勤務先の人間関係に悪影響を与えると感じる方は、「予定がある」などの事情を伝えて、ネガティブな印象を与えないよう工夫すると良いでしょう。
また、残業が発生した場合も、労働に対して賃金は支払われ、サービス残業になることはありません。ただし、派遣会社と時間外労働がある旨の契約を結んでいる場合は、正当な理由がない限り断るのは難しいため、契約内容を必ず確認しておきましょう。
忙しい職場も多い
派遣薬剤師は即戦力が求められることがほとんどです。募集している職場の多くは、多忙で人手が足りていません。
パートの求人募集を掲載しても応募が集まらず、派遣薬剤師を雇っているところもあります。基本的には忙しい店舗で働くケースが多いでしょう。
派遣薬剤師の求人は、急な欠員補充や季節的な業務量の増加に対応するために出されることが大半です。例えば、インフルエンザが流行する冬場の繁忙期や、産休・育休に入る正社員の代替要員などが典型な例です。
派遣薬剤師は、多忙な状況下ですぐに業務をこなせるスキルや対応力が求められる職場が多いと心得ておきましょう。
契約満了による雇用の不安定さ
派遣薬剤師として働く上で最大のデメリットは、雇用の不安定さです。
派遣法では、同じ職場の同じ部署で働ける雇用期間は原則最長3年と定められています。契約は数ヶ月ごとに更新されるのが一般的ですが、必ず更新される保証はありません。
派遣先の経営状況や方針の変更により、契約が更新されずに終了する、いわゆる「派遣切り」のリスクは常に伴います。この不安定さに備えるためには、以下の対策が有効です。
● 複数の派遣会社に登録し、仕事が途切れないようにしておく
● 契約満了時期を見据え、早めに次の求人を探し始める
安定した雇用を望めないのが、デメリットと言えます。
【派遣薬剤師の実態3】「人間関係は楽」は本当!ただしコミュニケーション力は必要

派遣薬剤師は正社員やパートと比べると、人間関係で悩むことが少ないと考えられます。今の職場で人間関係がうまくいかない方、トラブルを抱えるのが苦手な方は派遣薬剤師がおすすめです。
ここでは、人間関係の実態を紹介します。
有期雇用なのでトラブルを抱え続ける必要がない
派遣社員は基本有期雇用ですので、雇用期間があらかじめ定められています。派遣法の3年ルールに基づき、派遣薬剤師はひとつの職場で働ける上限期間が3年までです。
そのため、仮に勤務先に価値観や性格が合わない方がいても、雇用期間が過ぎると勤務先から離れることができます。定期的に人間関係がリセットされるため、トラブルの悩みを抱え続ける心配はありません。
職場が変わるたびに人間関係の再構築が必要
人間関係のトラブルがあっても我慢して乗り切ることができる一方、職場が変わるたびに人間関係を築き直す必要があります。これは、人によってメリットにもデメリットにもなるでしょう。
職場が変わってもすぐになじめる方であれば、大きな負担にはなりません。派遣薬剤師として働き続けるためには、どのような職場でもすぐなじめる適応能力やコミュニケーション能力を備えておくことも大切です。
また、新しい環境や業務にすぐ順応できる柔軟性に加え、人間関係をある程度割り切って仕事に集中できるような精神的なタフさも、派遣薬剤師として快適に働くための重要な要素と言えるでしょう。
煩わしい人間関係を引きずらなくてもよく、短期間の付き合いと割り切って働けます。
【派遣薬剤師の実態4】複数の職場での現場経験を積める!ただしキャリアアップは難しい

派遣薬剤師は、数多くの職場で働いてみたい方にはぴったりの働き方です。職場が変わる度に薬の配置やルールを覚える必要がありますが、多くの職場で現場経験を積むことができます。
一方で、管理薬剤師やエリアマネージャーなどへのキャリアアップは難しく、即戦力が前提となるため、調剤未経験者が応募できる求人はほとんどないというデメリットもあります。
また、派遣先は忙しい職場ばかりになりがちです。例えば、あまり忙しくない、スタッフ数に余裕のある職場で働きたいと希望しても、叶う可能性は少ないと思った方がよいでしょう。
豊富な現場経験を積むことで視野が広がる
派遣薬剤師は数ヶ月程度で職場が変わることが一般的です。職場によって扱う処方箋の科目も違えば、調剤や監査のルールが独自に設けられていることもあります。
職場が変わるたびにさまざまな経験を積めるため、薬剤師としての能力をより高められます。
たとえば、調剤を経験してから、その後にドラッグストアで働くことも可能です。自分の夢やキャリア、目標に合わせて働く職場を選びやすいのは大きなメリットでしょう。
同じ職場でのキャリアアップは期待できない
数ヶ月程度で職場が変わるため、同じ職場でキャリアアップを目指すことはできません。最長でも3年までしか在籍できないことから、管理職を目指すキャリアは期待できないでしょう。
管理薬剤師になりたい、エリアマネージャーになりたいといった目標をもっている方には向かない働き方です。
【高時給の狙い方】時給4,000円以上を実現する条件
時給4,000円を超えるような高時給求人は数が限られますが、特定の条件が重なった際に発生します。
高時給求人の主な特徴は「地方・へき地」「繁忙期」「急募」の3つです。薬剤師不足が深刻な離島や、インフルエンザの流行で人手が足りない薬局、急な退職でどうしても人員が必要な場合などに、相場を大きく上回る条件が提示されます。
具体的には「四国地方の薬局で時給3,500円~4,500円、家具付き住居と赴任費用を提供」といった求人でがあります。
好条件の求人は、サイトには公開されないこともあり、派遣会社に登録している人に優先的に紹介されることが多くあります。そのため、複数の派遣会社に登録し、希望条件を伝えておくことが高時給求人に出会うための最も有効な方法です。
高時給である場合には、非常に多忙であったり、特殊なスキルが求められたり、遅い時間帯や土日を含むシフトである可能性も考えられます。応募の際は、求人先の情報をよく確認し、納得した上で契約を結ぶことが重要です。
派遣薬剤師として後悔しないために

派遣薬剤師は、高時給で働き方の自由度が高いという大きなメリットがある一方、雇用の不安定さやキャリアアップの難しさといったデメリットもあります。
大切なのは、特性を理解した上で、自身のライフプランやキャリアの目標と照らし合わせ、本当に自分に合った働き方かを見極めることです。
派遣薬剤師という働き方に少しでも興味があれば、派遣会社に登録して専門のコンサルタントに相談してみましょう。希望を伝えておけば、非公開の求人や最新求人を優先的に紹介してもらえるかもしれません。具体的な情報を得ることで、より自分に合った選択ができるはずです。