MSとはどのような職業?MRとの違いは?なるために必要な資格や向いている人も詳しく紹介

「MSとはどのような職業なの?MRとの違いは何なの?」「MSになるために必要な資格や向いている人って?」と悩んでいる薬剤師の方もいるかもしれません。

MSとは卸の営業担当者のことです。もっとも、単に医薬品を販売するだけではなく、ほかにもさまざまな情報提供や医療機関の経営サポートなどの重要な役割をたくさん担っています。MSになるために必要な資格はなく、学歴も不要です。しかし、医薬品の知識は不可欠なので、重宝されるのが薬学部の出身者です。

この記事では、MSの仕事内容やMRとの違い、なるために必要な資格や向いている人について、ドラッグストア勤務経験のある元病院薬剤師が解説します。この記事を読めば、MSとはどのような職業かが分かります。ぜひ、最後まで読んでください。

MSとは「Marketing Specialist」のこと

MSは「Marketing Specialist」の略称で、日本語では「医薬品卸販売担当者」と訳されることが多い言葉です。MSは医薬品卸売会社の社員として営業活動を担当しています。

医療用医薬品の9割以上は卸経由で医療機関や薬局へ納入され、一般用医薬品の約半数は卸を経由して薬局やドラッグストアへ納入されているのが実情です。MSは「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC医薬品)」の流通と情報提供を担っており、医薬品の流通において欠かせない存在です。

また、コスト削減になる製品選定や開業のサポートなど、経営に関与するコンサルタントのような役割や患者からの問い合わせ対応までする場合もあります。

多数の製薬会社の製品を取り扱うため、中立的な立場での情報提供や医療機関のニーズに対応した製品の提案が求められます。また、医療制度や疾病について、理解して仕事しなければならないので、幅広い知識が必要です。

MSになるために必要な資格はなく、学歴も不要です。しかし、医薬品を扱うので、薬学部などの医療系学部出身者は重宝されるでしょう。また、MSは自社が扱う医薬品のプレゼンテーションを行います。したがって、必要な情報を的確に伝えられ能力がある人は向いているでしょう。

MSとMRの違い

MRは「Medical Representatives」の略称で、日本語では「医薬情報担当者」という意味です。
MSとMRの違いを以下の表にまとめました。

【MSとMRの違い】

MS MR
取り扱う製品複数企業自社製品のみ
必要な知識取扱商品に応じた広範な知識自社製品の専門的な知識
価格決定権ありなし

MRは製薬企業の営業担当者で、MRが取り扱うのは自社製品のみです。MSには、多くの分野の取扱商品に応じた広範な知識が必要なのに対し、MRは自社製品に関連する詳細で専門的な知識が求められます。MRには価格決定権などはありません。

MRは、MSに新製品の情報を提供したり、営業活動に必要な製品知識を提供したりします。また、MSは営業活動で得た医薬品に関する情報や医師・薬剤師からの要望をMRにフィードバックし、必要に応じて同行訪問することもあります。両者は協力関係にある大切なパートナーです。

MSの仕事内容

MRと混同されがちな医薬品卸販売担当者であるMSの仕事の内容は、どんなものなのでしょうか。
ここでは、MSの業務内容を3つに分けて紹介します。

医薬品販売に関する営業活動

MSの役割は、製薬企業から手配した医薬品や医療用材料、医療機器などを医療機関や調剤薬局、ドラッグストアなどに安定的に供給することです。具体的には、医療機関や調剤薬局などを訪問して販売交渉や価格交渉を行い、価格を決定して、納品、売上金回収までを行います。

MSの取り扱う医薬品は、医師の処方箋が必要な医療用医薬品とドラッグストアなどで販売される一般用医薬品の2種類です。ほとんどの医療用医薬品は卸売会社経由で医療機関や薬局へ、また、医師からの処方箋が不要な一般用医薬品の約半数も卸売会社から流通しています。

医療機関や調剤薬局などは各々特徴があるので、医薬品のニーズが異なる場合も少なくありません。個々のニーズに適した商品を提案するのもMSの役割です。

MSは取り扱い医薬品の価格決定も行うため、製造原価や利益に関する知識のほかに、他社の調査や市場動向の把握も必要不可欠で、MRよりも幅広い知識が必要とされています。価格は低すぎても、高すぎても好ましくないので、利益を考えつつ、価格交渉は行われます。

さまざまな情報提供

MSは中立的な立場から、薬の有効性や安全性などの情報を医療機関や薬局へ提供する役割を担っています。医療従事者が必要とする、正確な情報を伝えるためには、MRからの情報収集が必要不可欠です。

また、医療機関や薬局などが必要とする医療制度改定や疾患(コロナ、インフルエンザ、花粉症など)の流行状況などの情報提供活動も積極的に行います。正確な情報提供のために、MSには医療制度や疾患など医療全般についての知識が必要です。

医薬品販売後は、医師や薬剤師から実際の効果や副作用についてヒアリングし、製薬企業(MR)へフィードバックします。情報収集や情報提供を重ねることで、卸会社にも医薬品についての知見が蓄積されていきます。知見が集積されれば、自社発の情報提供を行うこともできるようになるでしょう。

医療機関の経営サポート

MSには、医薬品の販売を通して医療機関の経営をサポートする役目もあります。医薬品の購入額は、医療機関の経営を左右するほど大きいものです。そのため、医療機関へコスト削減につながる医薬品選びを提案することで、経営をサポートすることもできます。

また、その延長上で行うのが、医師や薬剤師の開業サポートです。この場合は、マーケティングの知識も必要ですが、非常にやりがいがある仕事でないでしょうか。

さらに、複数企業の医薬品を取り扱ったり、さまざまな訪問先に行ったりすることで、多くの最新情報が得られます。そうして得た最新の情報を、得意先の医療機関と共有して、医療機関に適した医薬品を提案することで、結果的により良い医薬品の提供につながるでしょう。

MSの仕事はこのようなコンサルタントのような役割から、ときには患者からの問い合わせ対応まで行うケースもあります。

MSになるための条件

「医薬品卸販売担当者」のMSになるためには、どのような条件を満たせば良いのでしょうか。ここでは、MSになるための条件や求められるスキル・知識を紹介します。

MSになるために必要な資格

MSになるために必要な資格はなく、学歴も不要です。しかし、医薬品に関しての知識や医療従事者とのコミュニケーションが必要なので、薬学部や医療系学部の出身者は重宝される傾向にあります。

できるだけ、製薬会社やMSに関する情報やニュースをチェックする習慣を身につけましょう。最新の業界情報を入手しつつ、自分の医療や薬学の知識量を増やすことにもなります。

MSに求められるスキル・知識

MSに求められるスキル・知識は以下のとおりです。

 プレゼンテーション能力
 コミュニケーション能力
 ヒアリング能力
 医薬品に関する知識
 医学に関する知識
 製造原価や利益に関する知識

MSは営業活動で自社が取り扱う医薬品のプレゼンテーションが必須です。必要な情報を分かりやすく、しかも正確に伝えられるプレゼンテーション能力をつけていきましょう。

また、医師や薬剤師をはじめ、さまざまな職種の人と接する機会が多いので、顧客と交渉するときもコミュニケーション能力は重要です。顧客が抱える課題をなにげない対話で引き出し、自社の利益につなげたり製薬企業にフィードバックしたりするのも、MSの役割です。

そのようなことが得意でなくとも、経験を積むことでコツを身につけ、やがてはうまくできるようになるというスタンスでも問題ないのは、MSの仕事でも同じです。

日進月歩の医薬品に関する情報や技術について学び続けるという向上心も必要です。人の命に関わることに関わっていることも意識し、常に責任感を持ちましょう。

MSに向いている人

「医薬品卸販売担当者」のMSはどのような人が向いているのでしょうか。ここでは、どのような人がMSに向いているかを解説します。

コミュニケーション能力が高い人

MSは医師や薬剤師、MRなどさまざまな立場の人と話す機会が多い仕事です。どのような立場の人でも接することが好きな人や相手の立場に応じた適切なコミュニケーションを取れる人はMSに向いていると言えるでしょう。もう少し大きく言えば、「さまざまな立場の人と話すのが好きな人」と言っても良いでしょう。

プレゼンテーション能力の高い人

医療関係者との面会は時間が限られているため、短時間で効果的なプレゼンテーションができると有利です。医療関係者は日々、業務で忙殺されています。そのため、相手が必要で有益な情報を端的に、かつ的確に伝えていくプレゼンテーション能力は重要です。

前職でプレゼンテーションの機会が多かった人や得意だと感じる人はMSに向いているでしょう。取り扱う製品が複数企業のものなので、比較する知識・製品の特徴を端的に伝える能力も必要です。訓練で上達する可能性もありますが、その時にはこのようなことが「好き」なことは武器のひとつです。

知識の習得に積極的な人

次々と発売される新薬や医薬品の流通状況、診療報酬の改定に関する情報、コンサルティングに関する知識も学ばなければならないのがMSです。得意先が必要とする情報をタイミングよく提供することも必要になるでしょう。知識のアップデートが欠かせないため、知識の習得に積極的な人はMSに向いています。

知識の習得に勉強は欠かせませんが、勉強は「継続は力なり」です。毎日、短時間でも良いから、勉強の時間を取る、〇〇の研修会には欠かさず出席する、〇〇の資格取得を目標にするなど、自分なりの工夫をしてみましょう。同じ会社の先輩MSにどうやって知識を習得したのか、尋ねてみるのもいいでしょう。

まとめ

MSの仕事内容やMRとの違い、なるために必要な資格や向いている人について解説してきました。MSとは卸の営業担当者のことです。

単に医薬品を販売するだけではなく、ほかにもさまざまな情報提供や医療機関の経営サポートなどの重要な役割をたくさん担っています。MSになるために必要な資格はなく、学歴も不要です。
しかし、医薬品の知識は不可欠なので、重宝されるのが薬学部の出身者です。

略語が似ていることで間違われやすいMRは製薬企業の営業担当者で、取り扱うのは自社製品のみという違いがあります。両者は協力関係にある大切なパートナーです。

MSは医薬品のプレゼンテーションが必須だったり、さまざまな職種の人と接する機会が多かったりするので、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力が高い人が向いています。また知識の習得に積極的な人も向いています。

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