外来がん治療認定薬剤師とは?求められる役割や資格取得条件、取得のメリットを解説

がんは日本人の死因の第1位で、毎年100万人近い方が新たにがんと診断されています。男性の2人に1人、女性の3人に1人が一生のうちにがんにかかると推測されており、誰にとっても他人事ではありません。

がん治療は日々進歩しており、毎年新しい治療薬が承認されています。外来でできる治療も増えてきました。そこで今回は、外来でおこなうがん治療に特化した資格「外来がん治療認定薬剤師」についてご紹介します。

外来がん治療認定薬剤師について興味のある方、目指そうとお考えの方の参考になれば幸いです。

外来がん治療認定薬剤師とは

外来がん治療認定薬剤師の概要や求められる役割を解説します。

外来がん治療認定薬剤師とはどのような認定資格?

外来がん治療認定薬剤師は、日本臨床腫瘍薬学会による認定資格です。外来がん治療認定薬剤師は以下の2点を備えた薬剤師の養成を目指して、2014年から認定が始まりました。

・外来がん治療を安全に施行するための知識・技能を習得した薬剤師
・地域がん医療において、患者とその家族をトータルサポートできる薬剤師

病院薬剤師だけでなく、保険薬局の薬剤師でも要件を満たせば取得することができます。現在、認定取得者の約10%が保険薬局の薬剤師となっており、今後割合が増えていくことが期待されています。

外来がん治療認定薬剤師に求められる役割

外来がん治療認定薬剤師には、さまざまな役割が求められています。

病院の場合は、患者ごとの問題点の評価と明確化・薬物療法プランの設計などが求められるでしょう。最近では、医師の診察前に「薬剤師外来」をおこなっている病院もあり、外来がん治療に対する薬剤師の取り組みが広がっています。

保険薬局の場合は、薬物療法プランに基づく患者指導・服薬モニタリングの継続と副作用のフォローアップ・病院へのフィードバックなどが重要な役割です。治療期間中、自宅での副作用状況はどうか、過ごし方などについて困っていないかなどフォローアップする必要があるでしょう。

さらに、外来でがん治療を受ける患者本人だけでなく、患者の家族や病院、訪問看護、介護事業所などと連携して、治療をサポートする役割が求められています。

外来がん治療認定薬剤師の資格取得条件

外来がん治療認定薬剤師になるには、どのような条件を満たせば良いでしょうか?

外来がん治療認定薬剤師になるための条件

2023年10月現在、日本臨床腫瘍薬学会が定めている条件をご紹介します。

1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
2. 薬剤師としての実務の経験を3年以上有すること。
3. 本法人の正会員であって、申請の時点で会費が未納でないこと。
4. 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師(日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師/日本病院薬剤師会 日病薬病院薬学認定薬剤師/日本薬剤師会 JPALSクリニカルラダーレベル5認定薬剤師をはじめとする認証番号にGまたはPのついた認定薬剤師制度)、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師、のいずれかの認定を取得していること。
5. 本法人が認定するがん領域の講習または研修で60単位以上を履修していること。
6. 外来のがん患者の薬学的介入実績の要約(事例)を10例提出すること。
7. 所属施設長の同意があること。

認定申請を目指す場合は、スケジュールを立て、必要な単位や症例をしっかり準備する必要があります。実際に申請する場合は、条件が変わっている可能性がありますので、各自で臨床腫瘍薬学会のホームページを確認してください。

出典:「外来がん治療認定薬剤師制度(APACC)」(一般社団法人 日本臨床腫瘍薬学会)

認定を受けるまでの流れ

実際に認定を受けるまでの流れは、以下のようになっています。

(1)webサイトから申請者情報、及び、がん患者への薬学的介入実績の要約(10事例)を登録し、薬剤師免許証の写しなど必要書類は郵送で提出
(2)審査・試験料の振り込み
(3)書類審査
(4)筆記試験(全国のCBT会場で実施)
(5)事例審査及び筆記試験の結果発表
(6)面接試験
(7)面接試験の結果発表
(8)登録料の振り込み
(9)認定証交付手続き

さまざまある認定薬剤師資格の中でも、面接試験があるのは珍しく、特徴のひとつでもあります。

試験の内容

外来がん治療認定薬剤師は、書類審査・筆記試験・面接試験の3つに合格しなければ取得できません。

書類審査と筆記試験の合格率はいずれも60%台と、厳しく審査されていることがわかります。面接試験については後ほど詳しくご紹介しますが、自身が提出した介入症例についての質疑がおこなわれるためか、合格率は90%台後半となっているようです。

全体として合格率は40%台となっており、しっかり対策しなければ合格できないことがおわかりでしょう。続いて、筆記試験と面接試験について詳しく解説します。

筆記試験

筆記試験は、がん治療にまつわる情報を広く網羅しておかなければなりません。以下のような内容から、75問出題されます。

・各抗悪性腫瘍薬等における下記の文書等
(添付文書・インタビューフォーム・適正使用ガイド・緊急安全性情報及び安全性速報、副作用の予防や治療等に用いる薬に係る各種情報など)
・厚生労働省等により配信される抗悪性腫瘍薬等に係る各種情報(公知申請に関する情報等)
・各がん種及び制吐剤等のガイドライン

がん治療は進歩のスピードが早いため、書籍やテキストになる前の情報をしっかりキャッチしているかどうかも重要視されています。参考資料としてテキストや書籍がいくつか挙げられているので、それらにも目を通しておきましょう。

また、6〜8月には、外来がん治療認定薬剤師の認定者を輩出するための教育プログラム「Essential Seminar」がオンラインで開催されます。試験の対策になりますので、知識の定着を目指して受講してみてはいかがでしょうか。

そのほか、初学者向け・中級者向けのセミナーも用意されていますので、ご自身のレベルに合わせて段階的に受講するのがおすすめです。

面接試験

書類審査と筆記試験に合格したら、次はZoomを利用した15分程度のオンライン面接があります。面接についても合格率は100%ではありませんので、入念な準備が必要です。

提出した「がん患者への薬学的介入実績の要約・10事例」の中から、面接試験官がいくつか症例を選び、それに関連した質疑がおこなわれます。
ご自身で提出した症例について、介入の経緯や根拠、その後の経過などをよく確認しておきましょう。ほかの医療従事者とどのように連携したかなども重要なポイントです。

 

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更新手続き

外来がん治療認定薬剤師は、3年ごとの更新になります。試験はwebで、認定の申請のときと同様の内容です。

更新要件をしっかり確認し、3年の間に準備しておきましょう。

(1)認定期間中継続して日本臨床腫瘍薬学会の正会員であること。
(2)認定期間内に、外来がん治療認定薬剤師及び外来がん治療専門薬剤師の更新要件を満たす講習会の単位を60単位以上取得すること。
(3)認定期間内に、日本臨床腫瘍薬学会学術大会に1回以上参加していること。
(4)認定期間内に、日本臨床腫瘍薬学会が主催する次の講習会のいずれかに1回以上参加していること。
(5)日本臨床腫瘍薬学会が主催するインターネット更新試験システム(IBT)による試験(更新申請後、受験可能となる)に合格していること。

(1)〜(4)を満たすか、期間内に満たすことができる見込みがある状態であれば、更新の申請をおこない、(5)の試験を受けることが可能になります。更新の場合、面接試験はありません。認定薬剤師を取得したあとも、しっかり勉強を続けることが求められています。

外来がん治療認定薬剤師になるメリット

外来がん治療認定薬剤師になるメリットはいくつかあります。

まず、がん治療に一定の知識がある薬剤師として、キャリアアップに直結します。病院内での配置や、保険薬局での店舗異動などで希望が通りやすくなるかもしれません。がんに関連して、仕事の幅を広げることができるでしょう。

また、「がんに詳しい」ことのわかりやすい証明になるため、患者や他職種からも信頼が得られやすくなることもメリットのひとつです。「こんなこと聞いたら困らせてしまうかな」と遠慮してしまう患者も多いため、資格を公にすることで、相談しやすい関係を作るきっかけとなることが期待できます。

転職にも有利な材料となるでしょう。「◯◯認定薬剤師を募集」という求人も増えてきているので、ニーズのある認定資格を持っていれば、給与面など良い条件で転職することができます。認定取得や更新にかかる費用などを負担してくれる企業もあるため、転職活動の際は確認しておきましょう。

がん領域は、条件を満たせば「がん患者指導管理料」や「特定薬剤管理指導加算 2」などを加算できるため、力を入れたいと考えている病院や保険薬局は多く、ニーズの高い資格です。

まとめ

今回は、2014年から認定が始まった「外来がん治療認定薬剤師」について、認定要件や試験内容、取得するメリットなどをご紹介しました。

外来がん治療認定薬剤師には、日々進歩するがん治療についての知識を常にアップデートし、治療の質向上や、他職種との連携に寄与することが求められます。合格率が高くない厳しい試験ですが、ニーズが高く、今後重要になる資格といえるでしょう。

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