薬剤師の転職時期はいつがベスト?時期ごとのメリット・デメリット、希望をかなえやすいオススメ転職時期を紹介

「薬剤師の転職時期はいつがベスト?」「今の職場に迷惑をかけないように辞めたい…」「未経験の業界に転職したいけど、タイミングが分からない」と悩んでいる薬剤師の方もいるかもしれません。

薬剤師などの医療職は求人が多く、いつでも転職できると思われがちです。しかし、実際のところ、薬剤師の有効求人倍率には多少の波があり、転職には適切な時期があります。それを知っているかどうかが転職の成否を大きく変えるのです。

この記事では、時期別薬剤師の求人傾向とメリット・デメリット、希望別転職のオススメ時期とメリット・デメリット、薬剤師の転職は「タイミング」も重要、希望の時期に転職するために注意すべきことについて、ドラッグストア勤務経験のある元病院薬剤師が解説します。この記事を読めば、いつ転職すれば良いかが分かります。

時期別|薬剤師の求人傾向とメリット・デメリット

ここでは、時期ごとの薬剤師の求人の傾向と、その時期に転職活動をするメリット・デメリットについて解説します。

求人数が多いのは1~3月

薬剤師の求人数が最も多いのは、1~3月です。新規採用に加えて度末退職者の補充のために求人数が増えるのが理由です。
そのような1~3月に転職活動をするメリット・デメリットは、次のようになります。

メリットデメリット
・選択肢が多い
・未経験だと、時期によっては新卒者と一緒に研修を受けられる可能性がある
・人気求人は倍率が高い
・1、2月は繁忙期なので、未経験でも十分な指導が受けられないおそれがある

製薬企業勤務者などで未経験の職場へ転職するような場合は、新卒者と一緒に研修を受けられる可能性もあるこの時期の転職活動は、入社後に安心して業務に取り組めるので魅力です。

求人が多いということは、自分に合った会社に就職できる可能性も高く、選択肢が増えるので良いことですが、1~2月は季節的に忙しい時期なので、未経験でも十分な指導を受けられない可能性もあります。十分に注意してください。

また、転職が初めてでいくつか求人を見比べて検討したい場合は、1~3月に転職活動をするのが良いでしょう。

4月は穴場求人が出ることも!

4月は国家試験不合格や「予想外の異動を理由に退職者が出た」など人事再編成直後の退職による欠員で、どうしても人材を確保したい企業や病院が求人を出す時期です。普段はお目にかかれないようなレア求人や高待遇の求人が出ることもあるでしょう。このような4月に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・年収アップやキャリアアップにつながる求人に出会える可能性がある
・時期によっては新卒者と一緒に研修を受けられる可能性がある
 ・業務によっては即戦力を求められることもある

未経験であることが理由で転職に不安やためらいを感じている方は、4月入社を目指すのが良いでしょう。4月入社であれば、新卒と同時に研修を受けられる可能性が高くなります。ただし、必ず一緒に受けられるとは限りません。面接や内定の時期に確認してみましょう。

調剤経験者は即戦力で勤務可能なことを武器に4月に転職活動を開始するのも良いでしょう。

5~6月は求人数が少なめ

5~6月は新卒採用や中途採用がひと段落する時期で、求人は少なめになり、転職活動が厳しくなる時期です。この時期に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・穴場求人が出る可能性もある・競争率が低い
・選択肢が少ない
・3月に退職した薬剤師が仕事を探し始める時期と重なるため、ライバルが多い

5~6月は、意外な求人が出てくる時期でもあります。大手病院では人員がいないと、病棟薬剤業務実施加算やNSTなどのような、チーム医療の施設基準を満たせなくなってしまいます。病院経営に影響があるので、「なんとしてでも人材確保を」と穴場的求人を出す場合があります。

年収やキャリアで上を目指している方は、思ってもいない求人に出会える可能性があるので、この時期の案件には目を通しておきましょう。

ボーナス後の1月・7月は求人が多め

一般的に企業のボーナスの支給時期は6月と12月なので、ボーナスを受け取ってから退職する人が多い1月・7月の求人数は多くなっています。この時期に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・ボーナスを受け取ってから転職できる
・優良求人が出ることもある
・社内規定でボーナスの支給対象外になることもある
・退職者が多い時期なので、ライバルは多い

求人数は増えますが、同じ時期に転職活動をする人も多いので、ライバルが多くなる可能性が高くなります。また退職を告げるタイミングにも要注意です。

時期が早いと、ボーナス額の減額やほぼもらえないということもあるでしょう。したがって、しっかりボーナスをもらってから辞めることを考えている場合、退職の意思を伝えるのは「支給後」にしましょう。さらに、周囲への印象を考えるのであれば、もらった直後ではなく、少し時間が経ってから退職を伝えることをおすすめします。

8~10月は求人が少ないが職場に慣れやすい

8~10月の求人は多くありませんが、病院や薬局は処方箋枚数が落ち着いていることが多いため教育に時間を割いてもらえる可能性が高いのが特徴です。この時期に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
・転職者の少ない時期なので競争率は低い
・繁忙期に備えた計画的な求人の場合、時間をかけて指導を受けられる
・今の職場にも迷惑をかけにくい
・選択肢が少ない

転職は「できたら成功」というわけではなく、実際に働いて「本当にここで良かった」と思えたときにはじめて、成功と言えます。

転職先でうまくとけ込めるかどうかを決めるのは、「忙しさ」と「研修制度」です。みんなに余裕があるこの時期は、必要なサポートが受けられるのでとけ込みやすい条件が整っていると言えるでしょう。分からないことを質問しやすく、雑談ができるのは、職場全体が慌ただしくないからです。転職後にそのような雰囲気を期待する場合は、この時期も良いでしょう。

希望別|転職のオススメ時期とメリット・デメリット

薬剤師の転職は時期によって、求人数の傾向が違います。自分の転職目的と薬剤師採用動向の両方に合わせて、転職活動時期を選びましょう。

未経験やブランクがある場合の転職

未経験やブランクがある場合の転職のオススメ時期は、4月または8~10月です。この時期に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・4月は新卒者と一緒に研修を受けられる可能性がある
・8~10月は、繁忙期に向けてしっかり指導を受けられる可能性がある
・4月は新卒採用が優先される可能性がある
・診療科によって繁忙期は異なるため、転職先によっては十分な指導が受けられないおそれがある

この期間は薬剤師の転職希望者が少なく、競争率は低くなる傾向があります。しかし、競争率が低いのは必ずしも有利とは言えません。競争率が低い時期は求人数も少ないからです。求人の選択肢は少なく、希望に合う求人も限られてくる可能性があります。

ボーナスをもらってからの退職・転職

ボーナスをもらってからの退職・転職を考えている場合のオススメ時期は、6月・12月で退職、7月・1月から転職先で就業です。この時期に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
・比較的求人が多い・ライバルが多い
・退職のタイミングによってはボーナスが支払われないこともある

勤務先によってボーナス支給条件は違います。ボーナスの支給日前後の退職だと支給条件外で、ボーナスを受け取れない可能性もあります。退職を伝える前に、勤務先のボーナス支給条件などを確認し、自分が条件をクリアしていることをハッキリさせてから退職しましょう。

同じ考えの人が多いので、求人数は一時的に増加しますが、転職活動をする薬剤師も多くなるので、注意が必要です。良い条件の求人の競争率は高く、希望する転職ができない可能性もあることも考えにいれておきましょう。

円満退職したい場合の転職

円満退職したい場合の転職のオススメ時期は、3月末か職場の閑散期です。この時期に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
・3月末だと後任のめどが立ちやすい
・閑散期だと職場に迷惑をかけにくい
・後任が見つからなかったり引き継ぎができなかったりすると、退職を引き留められる可能性がある

勤務先の繁忙期と閑散期をしっかり知ったうえで、閑散期に退職するように転職活動を進めましょう。繁忙期や閑散期は業界や業態などによってさまざまです。医療機関なら診療科目で繁忙期や閑散期は違っています。たとえば内科なら風邪が流行する時期、耳鼻咽喉科であれば花粉が飛散する時期が繁忙期という具合です。

後任が見つからない場合は引き留められる可能性もありますが、その場合は「2ヵ月間は待ちます」「3月までには退職します」など自分の退職の意向をしっかりと伝えましょう。そのうえで引き継ぎや調整に前向きな姿勢を示し、退職に向けた具体的な内容の相談をすることをおすすめします。

年収を増やしたい場合の転職

年収を増やしたい場合の転職のオススメ時期は、特にありません。時期よりも求人が出たタイミングで応募することが重要です。あえて狙うのであれば、レア求人が出やすい4月やボーナス後の1月・7月でしょう。年収を増やしたいことを目的に転職活動をするメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリットデメリット
・求人によっては、大幅な年収アップが狙える・求人数が少ない
・転職時の年収がアップしても、昇給率が悪いと生涯年収が低くなるおそれがある

薬剤師は初任給がある程度高いことが多いですが、管理職のポストが限られているので、昇進による年収アップが少ないとされています。

転職を考えるほど年収が低いのであれば、現職で増やすために、認定・専門資格を取得することや賃上げ交渉をすることを考えてみても良いでしょう。確実に上がるとは言えませんが、掛け合えば検討してもらえることもあります。賃上げ交渉の場合は、以下の点を意識しましょう。

 薬剤師給与の相場を知る
 自分のスキルと組織への貢献度をアピールする
 時期を選ぶ

賃上げ交渉がうまくいかなくても、そのことがモチベーションになって、転職活動にプラスに働くことも考えられます。

薬剤師の転職は「タイミング」も重要

薬剤師の転職はタイミングも重要です。ここでは、薬剤師の転職に適しているタイミングを紹介します。

ひととおりの業務を経験している「第二新卒」のタイミング

調剤や服薬指導などのひととおりの薬剤師業務を経験している「第二新卒」は転職には良いタイミングでしょう。同じ職場で2年以上働いていれば、転職先に悪い印象を与えることは少なく、むしろ3年目くらいなら、実務経験を期待されて採用される可能性もあります。

逆に新卒入社して2年未満、転職して1年在籍していない場合は、どうしても「すぐに辞めてしまうのではないか」という印象を相手に与えてしまいます。特に新卒1年未満で転職を決意した場合は、本当に辞めるべきなのか、今一度考えてみるのも良いでしょう。スキルや実績が伴わないと、転職するにしてもなかなか採用に結び付かないケースが多くなります。

スキル・キャリアを積んだ30歳前後

30歳前後であれば、管理薬剤師業務を経験されている方もいるのではないでしょうか。薬剤師の転職では、管理薬剤師・一人薬剤師の経験があると重宝されます。管理薬剤師を育てるのは会社としても苦労する点です。そのため、経験者を中途で採用できるのは大きなメリットになります。

管理薬剤師だけでなく、エリアマネージャーなど管理職としての経験があれば、前面に出し、転職活動をしましょう。30歳前後まで薬剤師として働いて学んだことや経験も多いと思います。薬剤師としての経験の多さを武器にしましょう。

製薬会社勤務で調剤未経験のような場合は、まだまだチャレンジできる年齢です。今までの勤務経験を活かして、自分のアピールポイントにしましょう。

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資格取得後のタイミング

自分の強みを持ったうえでの転職はとても有利です。したがって、専門薬剤師などの資格取得後は転職活動を始めるのにオススメの時期です。しかも転職でキャリアが中断されると、専門資格の取得が難しくなる場合もあります。

薬剤師が取得できる資格の多くは、勤続年数や同店舗での経験を取得条件のひとつとしていることが多くなっています。転職後、勤続年数は再度ゼロから始まることになり、また慣れるまでは疲労もあり、資格取得には思いのほか時間がかかることでしょう。資格は転職前に取得して、転職活動に有利に使ってしまいましょう。

希望の時期に転職するために注意すべきこと

ここでは、希望の時期に滞りなく転職するために注意すべきことを解説します。

転職活動に必要な期間は最低でも1~2ヵ月

薬剤師の転職活動に必要な期間は一般的に1~2ヵ月です。早いと2週間くらいで決まることもありますが、長いと3ヵ月かかることもあります。期間が短すぎると、自分の希望と転職先のミスマッチが起きやすいので、注意しましょう。転職を希望する時期から逆算して、余裕を持って転職活動をすることをおすすめします。

現在の仕事を続けながら、求人案件をチェックし、リサーチし、問い合わせし、提出書類を作成する…転職活動を一人で行うのは大変です。転職活動は計画的に進めましょう。

1~3ヵ月かけて退職準備をする

薬剤師は1人当たりの処方箋枚数の制限があり、必要な人数を確保するためにはシフト調整も必要です。有資格者なので、代わりの人材がすぐに見つかるとは限りません。

できれば2~3ヵ月前、少なくとも1ヵ月以上前には退職の意向を会社や上司、周囲に伝え、必要に応じて引き継ぎも行いましょう。引き継ぎは自主的に行うのが大切です。後任者が決まらず、スムーズに引き継ぎできないなどの場合には、自分の行っていた業務のマニュアルを作成するという方法もあります。

退職準備期間が短いと、転職先の内定が出ても、退職させてもらえないなどのトラブルが生じる可能性もあります。くれぐれも準備には十分な時間をかけましょう。

退職に関する手続きは就業規則を確認

退職には所定の手続きが必要で、手続きの申請時期も決まっています。退職の意向を固めた段階で、会社の就業規則をしっかり確認しておきましょう。会社の就業規則は、総務課などの人事担当者に聞けば、教えてもらえます。「退職するのを誰にも知られたくない」場合は、「就業規則を見せてください」と伝えるだけで、見せてもらえます。ただ、民法では正社員の「退職届」について、以下のように定められています。

第六百二十七条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

従業員が願い出る「退職願」は退職が認められないこともありますが、退職届は2週間経過すれば、会社の可否を問わずに退職できます。しかし、円満退職するためには就業規則の退職に関するルールに則って手続きを進めましょう。いろいろな場合がありますが、就業規則で「1ヵ月前までに退職の申出をしなければならない」などと定められてことも少なくありません。

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まとめ

薬剤師の転職時期はいつが良いのか、時期ごとのメリット・デメリット、希望をかなえやすいオススメの転職時期、希望の時期に転職するために注意すべきことなどについて、解説してきました。

薬剤師などの医療職は求人が多く、いつでも転職できると思われがちです。しかし、実際のところは、有効求人倍率には多少の波があり、1年の中でも転職には適切な時期があります。それを知っているかどうかで転職の成否も大きく変わってきます。また、薬剤師の転職は「タイミング」も重要です。一般的には、ひととおりの業務を経験した「第二新卒」のタイミング、スキルやキャリアを積んだ30歳前後、資格取得後のタイミングとされています。

自分の転職目的と薬剤師採用動向の両方に合わせて、転職活動時期を選び、希望に合った働きやすい職場への転職を成功させましょう。

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