コーディネーターの転職レクチャー1-2 キャリアの棚卸しをする

1-2 キャリアの棚卸しをする

「これまでの仕事とスキル」を客観的に振り返る

「棚卸し」とは一般的に、月末などの区切りで店舗や倉庫の在庫を調べ、その現状(状態や数量など)を明らかにすることを指します。それと同様に転職時という区切りでも、「自分が何をできる人間か」を確認するキャリアの棚卸しが必要になります。

働きたい企業や医療機関が見つかった場合、いきなり職務経歴書を書いてしまいがちですが、まずは今までどんな仕事をしてきたのか、何を身につけてきたのかなど、自分のこれまでの仕事とスキルを客観的に洗い出すことが必要です。

この作業では応募書類の記載にそのまま使える資料ができ、また現状把握により、面接で自己アピールするポイントや志望動機までまとめることができます。
では、実際にキャリアの棚卸しはどのように形にしていけば良いのでしょうか。
以下に進め方の一例をご紹介しますので、参考にしてみてください。

1. 職務経歴を書き出す

社会に出てからこれまでのあなたの職務経歴を順番に書き出しましょう。事業内容から組織の規模、所属期間と所属年月数も書いていってください。

同じ企業の同じ調剤薬局に所属している場合においても、一般薬剤師から管理薬剤師になったなどの昇格で役職が変わった場合は、分けて書きましょう。同じ職場でも職務分掌には違いがあり、そのポジションの責任範囲で得られた経験・スキルは異なります。

職務経歴 例
  • 株式会社○○○○薬局(経験期間:20XX年12月〜20XX年5月(5年4ヶ月)
  • 事業内容:調剤薬局・ドラッグストアの経営(店舗数○○店舗)
  • 従業員数:○○○名
  • ○○○薬局○○○店(勤務先従業員数:○○名)
  • 一般薬剤師 20XX年12月〜20XX年3月(3年3ヶ月)
  • 管理薬剤師 20XX年4月〜20XX年5月(2年1ヶ月)

2. 職務経歴に業務内容を書き足す

続いて先ほどの職務経歴に、業務内容を書き足していきましょう。自分が具体的にどんなことができるのかを確認する、大事な作業になります。
「管理薬剤師業務」といった漠然とした書き方をするのではなく、できるだけ細かく書いていきましょう。

業務内容 例(管理薬剤師の場合)
  • 調剤
  • 営業時間外の問い合わせ応対
  • 服薬指導
  • 売上目標の達成計画づくりと実行
  • 薬歴管理
  • 従業員の教育指導
  • レセプト管理
  • 薬局内啓発ポップ制作
  • 医薬品の在庫管理
  • 従業員の出勤シフト管理
  • 薬局備品(機材)管理
  • 従業員の役割振り分け
  • 医薬品の有効性・安全性情報の管理
  • 店舗収支管理
  • 行政への提出書類作成
  • 医療機関との交渉
  • 調剤過誤対策のとりまとめ
  • 卸業者との医薬品納入価格の交渉

3. 職務経歴ごとに実績・工夫点・評価を書き足す

さらに、職務経歴ごとに実績を上げたこと・工夫した点・社内や患者さまなどの第三者から評価されたこと、簡単に言うと「あなたの頑張ったこと」「仕事をする中で誰かの役にたつことが出来たと思えたエピソード」を徹底的に洗い出し、職務経歴に書き足していきましょう。

店舗売上など何らかの数値で表せるものは、かならず数値ベースで書き出しましょう。
ですが薬剤師の場合、実績は必ずしも数値で表せるものだけではないと思います。「課題解決のためにどう取り組んだか」という過程も、医療業界・組織・社会の一員として立派な実績になります。採用担当者は「この方はどう創意工夫をし成功につなげたのだろう?」「仮に失敗したとしてもその時どうしたのだろう?」というストーリーを知りたいと考えています。

真剣に取り組んだ経験を出来る限り思い出しながら、具体的に書き出してみましょう。

実績・工夫点・評価 例(調剤薬局勤務:管理薬剤師の場合)

アンケートで小さなお子様をお持ちの方から「待ち時間が長い」という声が寄せられた。調剤室内に無駄な動きを生み出す原因となっている配置がないか徹底的にレイアウトを見直すとともに、待合室を再検討し、絵本とおもちゃを置いたキッズコーナーを設置した。その結果アンケートでお礼が寄せられた。

実績・工夫点・評価 例(ドラッグストア勤務:一般薬剤師の場合)

セルフメディケーションの啓発に貢献するため、「季節の予防コーナー」設置を提案し、自分が中心となって同僚とチームを組み実施した。例えば秋には、風邪薬から予防の手洗い石鹸までを総合的に網羅したコーナーを作り、イラストが得意なので啓発ポップもPCで自作した。立ち止まって読む方も多く、ポップの内容から商品質問を受けることが増えた。

4. 業務期間中に身についたスキルを書き込む

業務期間中に身についたスキルを加筆しましょう。資格で証明できるもの以外を客観的に判断するのは難しいかもしれませんが、目に見えるもの以外でも、身についたスキルはたくさんあるはずです。
難しく考えず「どんなスキルを得たか、何をできるようになったか」を書き出しましょう。

身についたスキル 例

管理薬剤師としての責任能力/かかりつけ薬剤師/電子薬歴操作/語学能力/PC操作能力/簿記/秘書検定/クレーム対応能力/プレゼン能力/プロジェクト進行能力/接客力/営業力/顧客ニーズの把握/戦略立案/目標設定能力/時間管理能力/マニュアル作成能力 など

5. 業務で実現できなかったことを書き出す

最後に業務ごとに、当時やりたいと思っていて実現できなかったことについて書き足しましょう。転職をするうえで希望条件にも含まれてくるので、振り返ってみてください。

実現できなかったこと 例
  • グループ店舗の運営ルールがかなり細かく決められており、店舗に自分のアイディアを反映させることができなかった
  • 忙しい店舗でワークライフバランスがとれなかった
  • 処方箋の種類が少ないことで充実感を得る事ができなかった

自分史をまとめると次のステップが見える

このように具体的に書き出して自分史をまとめると、自分がこんなに色々なことができた、頑張ってきた、成長していた、また既に何度か転職をされている方であれば転職ごとに仕事内容が進化していた、ということをあらためて実感できたのではないでしょうか。意外な自分のポテンシャルに気付いた方も多いのではないかと思います。

また同様に今後強化していきたい点も見えてくるものです。本当に転職した方がよいのか、今一度考えるきっかけにもなるでしょう。