「居宅療養管理指導って何?」「薬局薬剤師の役割ってどんなこと?」と考えたり、悩んだりしている薬剤師の方もいらっしゃるかもしれません。
居宅療養管理指導は、薬局薬剤師が在宅医療に積極的に関われる場面のひとつです。居宅療養管理指導では薬局薬剤師に、有害事象の早期発見や対処、服薬状況の改善などの役割が期待されています。オンライン服薬指導についても今後ますますニーズが高まるでしょう。
この記事では、居宅療養管理指導での薬局薬剤師の役割や具体的な内容、単位と算定要件、オンライン服薬指導などについて、ドラッグストア勤務経験のある元病院薬剤師が紹介します。
「居宅療養管理指導」とは

居宅療養管理指導とは、要介護状態になっても、可能な限り居宅で能力に応じて自立した日常生活を営めるように、医師や歯科医師、薬剤師などが通院困難な患者の居宅を訪問して、心身の状況や環境などを把握して療養の管理や指導を行うことで、療養生活の質の向上を図るものです。
在宅医療は、介護保険の「居宅療養管理指導」と、医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」の2つに分けられます。薬剤師はこれらのいずれにも関わる機会があるので、違いだけでなく、対象者や保険毎の役割などをしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
ここでは、居宅療養管理指導の概要と対象者などを解説します。
居宅療養管理指導の概要
居宅療養管理指導では、医師や歯科医師、薬剤師、管理栄養士または歯科衛生士などの地域の医療従事者などが通院困難な患者の居宅を訪問して、療養上の管理および指導を行うことにより、その者の療養生活の質の向上を図ります。
介護保険を利用して行うもので、治療ではなく、あくまで管理や指導が目的です。
患者の「最後まで自宅で過ごしたい」という気持ちは尊重されるべきものなので、2000年の介護保険スタート当初から行われています。
居宅療養管理指導の対象者
居宅療養管理指導の対象者は、以下のとおりです。
● 40~64歳で、16種類の特定疾病のいずれかにより要介護認定を受けている方
16種類の特定疾病は、以下のとおりです。
2. 関節リウマチ
3. 筋萎縮性側索硬化症
4. 後縦靱帯骨化症
5. 骨折を伴う骨粗鬆症
6. 初老期における認知症
7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
8. 脊髄小脳変性症
9. 脊柱管狭窄症
10. 早老症
11. 多系統萎縮症
12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
13. 脳血管疾患
14. 閉塞性動脈硬化症
15. 慢性閉塞性肺疾患
16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
いずれも、心身の病的加齢現象と医学的に関係があると考えられている疾病です。
患者は、介護報酬単価の1~3割を自己負担しますが、介護保険の支給限度額の対象ではありません。つまり、他のサービスで介護保険を満額利用していても、訪問限度回数の範囲内であれば1~3割の自己負担で利用可能です。
要支援1~2の認定を受けている方は、「介護予防居宅療養管理指導」が適用されます。
40~64歳であっても、認知機能低下や歩行困難などがあれば介助が必要なので、「通院および来局が困難な方である」と医師が認めることでサービスが受けられます。
居宅療養管理指導は医療保険?介護保険?

薬剤師が患者の自宅を訪問する在宅サービスには、医療保険と介護保険の2種類があります。どちらのサービスが適用されるかを決めるのは、患者が要介護認定を受けているかどうかです。
原則として、要介護認定を受けている患者には、介護保険が優先して適用され、「居宅療養管理指導費」を算定することになります。医療保険と介護保険の併用はできず、介護保険が優先されるルールです。
一方で、医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」が適用されるのは、要介護認定を受けていない患者のみです。そのため、指導が必要になった場合に、要介護認定申請をする患者も多くなっています。
請求方法としては、薬局はまず患者が要介護認定を受けているかを確認し、ケアプランに基づき介護保険で算定します。
なお、医師による「訪問診療」は主に医療保険が適用される「治療」行為にあたりますが、薬剤師が行う「居宅療養管理指導」は介護保険が適用される療養上の「管理・指導」である点も異なります。
参照:日本医師会|介護保険制度の概要(15)医療保険と介護保険の区分け
これからは、薬剤師業務のなかでも「在宅」が重要になってくる…と耳にしたことはありませんか? 在宅とは「在宅訪問薬剤管理指導」の通称で、薬剤師が患者の自宅を訪問し、服薬状況の確認や薬剤の管理を行うサービスのことです。高齢化社会が進む中で[…]
居宅療養管理指導の自己負担割合
居宅療養管理指導は介護保険サービスのため、料金の一部は利用者の自己負担となります。
自己負担額は、点数で定められた介護報酬に基づいて計算された費用のうち、定められた割合分です。自己負担の割合は、利用者の所得に応じて1割、2割、または3割と定められています。多くの場合は1割負担ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割の負担となります。
ただし、居宅療養管理指導費は、他の介護サービス(デイサービスや訪問介護など)とは異なり、「区分支給限度基準額」の対象外です。そのため、他のサービスを上限まで利用している方でも、居宅療養管理指導は別途利用が可能です。
居宅療養管理指導における薬局薬剤師の役割

居宅療養管理指導では、薬局薬剤師は患者の居宅へ訪問して、薬を適切に服用できるように管理や指導を行います。薬局薬剤師が関わることで、副作用など有害事象の早期発見、有害事象への対処、服薬状況の改善への効果が期待できます。
副作用など有害事象の早期発見
有害事象とは、薬剤服用後に起きたすべての健康上の問題のことで、薬剤との因果関係が明らかなものばかりでなく、関係が確立していないものや未知・不明なものも広く含みます。
居宅で療養生活を送る患者の多くは、高齢者です。高齢者は以下の理由のために、薬剤による副作用などの有害事象発生の危険が通常より多いでしょう。
● 記憶力や理解力の低下、視覚や聴覚機能の低下などで内服薬を適切に服用することが困難なことも多い
厚生労働科学研究「地域医療における薬剤師の積極的な関与の方策に関する研究」では、5,105人の患者を対象にした調査で、薬剤師は14.4%の患者に薬剤の有害事象を発見したと報告しています。
有害事象への対処
薬局薬剤師は患者や家族とコミュニケーションしながら、様子を観察して以下のことを行います。
● 受診している医療機関が複数の場合は、重複して処方はないか、飲み合わせに問題があるものが処方されていないか確認する
疑わしい症状や体調変化がある場合は、医師と情報を共有し、状態に合った薬の提案(剤型変更、用法用量変更、処方薬変更提案)も行います。
服薬状況の改善
在宅療養中の患者の中には、服薬状況に問題がある場合も多いようです。
居宅療養管理指導で薬剤師は患者に合わせて、以下のような、薬を飲みやすくする工夫や飲み忘れ、飲み間違いを防ぐ工夫をして支援します。
● 分包紙に用法を大きく印字したり、用法ごとに色分けしたりする
● 服薬補助ゼリーの使い方を指導する
飲みにくさが問題である場合は、患者の嚥下能力も考慮し、医師に適切な薬の形態を提案して、服薬状況の改善を図ります。
薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導の具体的な内容

居宅療養管理指導で薬局薬剤師が行う具体的どのような業務を行っているのでしょうか。具体的な業務はどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導の具体的な内容を3つ解説します。
服薬の管理・指導
居宅療養管理指導で、服薬の管理・指導は薬局薬剤師の主な仕事の1つです。
薬局薬剤師が行う、服薬の管理・指導は以下のとおりです。
● 副作用を含む体調変化の確認
● 多剤・重複投与のチェック
● 一般医薬品やサプリメント・食物との相互作用などのチェック
● 薬の保管方法や服用方法の指導
● お薬カレンダーなどのツールの利用
● 服薬補助ゼリーの利用方法の指導
● 飲み忘れや飲み間違いのフォロー
● 剤型変更、用法用量変更、処方薬変更などを医師へ提案
患者が自分で薬を管理できるように、お薬カレンダーを使用したり、医師に一包化の相談をしたりするなどの支援を行います。患者が服薬できない場合は、理由を確認して服薬支援を行うことも重要です。
薬の形状が理由の場合は、患者の状態に合わせ、粉砕や嚥下ゼリー、オブラートなどの使用を医師に提案して支援します。何の薬か分からない場合は効果を理解できるように説明します。
服薬中は、飲み間違いや飲み忘れがないかどうか確認し、フォローすることも薬局薬剤師の仕事です。
他職種への情報提供
居宅療養管理指導には薬剤師以外にも医師や歯科医師、管理栄養士、介護支援専門員など多職種が介入して、患者の療養生活をサポートしています。
薬剤師は訪問後に訪問薬剤管理指導報告書を作成し、医師や歯科医師、介護支援専門員に情報を提供するのも重要な業務の1つです。
訪問薬剤管理指導報告の様式の定めはありませんが、主に記すのは以下の内容です。
● 薬の変更による影響(特に副作用の初期症状など)
● 生活上の変化
服薬できていたかどうか、できていない場合は状況や考えられる原因も一緒に記載しておくと良いでしょう。薬剤の変更があった時は、副作用の初期症状などについても記載があると早期発見につながる可能性があります。
訪問時に気づいた患者の変化も記載しておきましょう。患者の病態や服薬している薬に合わせて、食事や排泄、睡眠、運動、認知機能について確認します。
家族や介護職員などへの情報提供
薬剤師は患者本人だけでなく、家族・訪問介護員など介護に関わる方にも、服用薬に関する情報を分かりやすい説明で提供します。
薬局薬剤師による居宅療養管理指導の単位と算定要件

介護報酬は3年毎に改定されるので、最新は2021年改定です。
ここでは、2021年の薬局薬剤師による居宅療養管理指導の基本報酬の単位と算定要件を解説します。
居宅療養管理指導の単位
薬局薬剤師の居宅療養管理指導の基本報酬は、患者の居住状況に応じて異なり、以下のとおりになっています。
● 単一の建物の居住者2~9人に対して行う場合:378単位
● 単一の建物の居住者10人以上に対して行う場合:341単位
いずれも月4回まで算定可能で、がん末期患者や中心静脈栄養を使用している患者には、1週に2回かつ1か月に8回を限度として算定できます。
また、基本報酬にプラスして算定できるのが、介護報酬の加算項目です。
加算項目としては、以下のものがあります。
● 特別地域加算:所定単位数の15%
● 中山間地域などにおける小規模事業所加算:所定単位数の10%
● 中山間地域などに居住する者へのサービス提供加算:所定単位数の5%
これらは要件を満たせば加算できます。
参考:
厚生労働省|令和3年度介護報酬改定における改定事項について
厚生労働省|指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準
居宅療養管理指導の算定要件
薬局薬剤師の居宅療養管理指導が算定できるのは、
● 薬剤師が作成した薬学的管理指導計画に基づいた患者居宅への訪問、薬学的な管理指導の実施
● 医師または歯科医師への訪問結果の文書での報告
● 介護支援専門員に対する居宅サービス計画の作成に必要な報告および情報提供
などの条件が揃った場合です。
ただ、薬剤師に居宅療養管理指導開始の権限はなく、本人や家族が希望・同意しても医師や歯科医師の指示がない場合は算定できません。また、薬局薬剤師が介護支援専門員などへ情報提供を行わなかった場合も算定できません。
ただし、介護支援専門員によるケアプラン作成が行われていない患者には、居宅療養管理指導費が算定可能です。
参考:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定における改定事項について
オンライン服薬指導について

2021年の介護報酬改定より、情報通信機器を用いたオンライン服薬指導の項目が新設されました。算定できるのは、1か月に1回に限り45単位です。
従前は薬剤師による服薬指導は対面でのみで可能でした。しかし遠隔診療へのニーズに対応するため2019年に成立した改正薬機法で実施可能となりました。
当初、改正薬機法では2020年9月施行の予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年4月からオンライン服薬指導が始まりました。
患者の状態が安定していることや患者の要望に沿うなどの要件はありますが、服薬状況や薬の管理が良好な患者の場合は、例えば、新型コロナやインフルエンザなどへの感染リスクの不安が解消され、メリットとなるでしょう。
オンライン服薬指導の場合も、服用指導計画の作成や薬剤服用歴の管理、服用指導の結果を処方医に情報提供することなどが必要です。
参考:
厚生労働省|令和3年度介護報酬改定における改定事項について
厚生労働省|指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準
【注意!】居宅療養管理指導を算定できないケース

2021年介護報酬改定で、居宅療養管理指導の算定対象者が明確化されました。そのため、要介護認定を受けていても対象外となる場合があります。また、医師の指示であっても算定できないケースもあります。
ここでは、居宅療養管理指導を算定できないケースを紹介します。
通院が可能なケース
居宅療養管理指導は定期的に訪問して管理・指導を行った場合の評価なので、継続的に管理や指導の必要のない患者や通院が可能な患者に対して安易に算定していけません。
例えば、自分で歩くことができ家族や介助者などの助けを借りなくても通院ができる患者などは簡単に通院できると考えられるので、居宅療養管理指導は算定できません。
参考:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定における改定事項について
発行された処方箋と関係のない指導
居宅療養管理指導は「当該保険薬局で調剤した薬剤」を服用している患者について、その服用期間中に対して算定するものです。そのため、医師の指示があっても、他薬局や院内調剤された薬剤に関する指導については居宅療養管理指導を算定することはできません。
しかし、居宅療養管理指導を算定する医療機関は、患者1名につき、一月に1施設だけです。そのため、居宅療養管理指導を行う薬局は、調剤した薬剤の他に、他薬局で交付されたり院内調剤されたりした薬剤を使用していないかを確認し、場合によっては、その他の薬剤についても管理・指導を行うことになります。
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まとめ
この記事では、居宅療養管理指導での薬局薬剤師の役割や具体的な内容、単位と算定要件、オンライン服薬指導などについて解説してきました。
居宅療養管理指導は、薬局薬剤師が在宅医療に積極的に関われる場面のひとつです。オンライン服薬指導についても今後ますますニーズが高まるでしょう。
しかし、通院が可能なケースや発行された処方箋と関係のない指導は医師の指示があっても算定できないことになっています。
「有害事象の早期発見」や「有害事象への対処」「服薬状況の改善」などの薬局薬剤師の役割を理解して、患者のより自立した生活支援ができるようにスキルアップを図りましょう。
