薬剤師として働く中で、どの職種がいいのか悩む方は多いです。皆さんは、働く上で重要視する条件をしっかりと決めているでしょうか?
今回は、新卒薬剤師に人気の高い「調剤薬局」の薬剤師の給与事情について着目し、データと共にご紹介します。
勤務先を選ぶ上で、給与条件を優先的に考えたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の平均年収はどれくらい?
そもそも、薬剤師全体としての平均年収はどのくらいなのでしょうか。性別や年齢、職種、雇用形態などに分け、細かくご紹介します。
女性・男性・年代別の平均年収
まずは、男女別、そして年代別の平均年収についてデータをお示しします。こちらのデータは、「令和5年賃金構造基本統計調査」の報告結果から算出したものです。
■性別
平均年収 | 平均年齢 | |
男女合計 | 577.9万円 | 40.3歳 |
男性 | 622.6万円 | 41.0歳 |
女性 | 542.8万円 | 39.7歳 |
■年代別
平均年収 | 男性 | 女性 | |
1年目 | 423.6万円 | 465.5万円 | 398.3万円 |
2〜5年目 | 4901.5万円 | 529.0万円 | 463.4万円 |
6〜10年目 | 512.5万円 | 527.91万円 | 498.0万円 |
11〜15年目 | 588.3万円 | 618.4万円 | 559.8万円 |
16年目以上 | 621.0万円 | 679.9万円 | 577.3万円 |
男女別では、男性薬剤師の方が女性薬剤師よりも、約80万円年収が高いという結果でした。女性薬剤師の方が、産休・育休によるキャリアの中断があったり、それに伴うパートや時短勤務といった雇用形態の方が多く含まれたりする影響もあるでしょう。
年代別にみていくと、1年目は平均年収が423.6万円であったのに比べ、16年目以上では平均年収が621万円と大きく上がっているという結果でした。薬剤師としての経験年数を積むにつれ、給与は着実に上がっていくことがわかります。長く働くことで、着実に給与が上がっていく見込みがあるという点は、ポジティブな要素です。
一方で、年代別の男女の平均年収差は大きくなっていました。これはキャリアの中断や雇用形態の違い、役職についているかどうかなどによる差だと考えられます。
【ランキング形式で紹介】都道府県別
続いて、都道府県別に平均年収を比較してみましょう。こちらも、「令和5年賃金構造基本統計調査」の報告結果から算出しました。
薬剤師の平均年収が最も高かったのは広島県で、662万円でした。上位25県までは平均年収が550万円を超えており、後述する日本全体の平均年収と比較しても安定した収入が得られると言えるでしょう。
一方、下位11県では平均年収が500万円を下回っており、日本の平均よりは高いとはいえ、給与面を重視したい方には物足りない結果かもしれません。
順位 | 都道府県 | 平均年収 |
1 | 広島県 | 662.0万円 |
2 | 秋田県 | 649.0万円 |
3 | 宮城県 | 629.1万円 |
4 | 鹿児島県 | 617.7万円 |
5 | 山梨県 | 613.0万円 |
6 | 島根県 | 607.0万円 |
7 | 神奈川県 | 598.8万円 |
8 | 愛知県 | 597.8万円 |
9 | 福岡県 | 587.4万円 |
10 | 兵庫県 | 583.0万円 |
11 | 和歌山県 | 582.5万円 |
12 | 東京都 | 579.0万円 |
13 | 三重県 | 577.4万円 |
14 | 長崎県 | 576.6万円 |
15 | 千葉県 | 573.8万円 |
16 | 山形県 | 572.9万円 |
17 | 香川県 | 567.2万円 |
18 | 栃木県 | 565.9万円 |
19 | 愛媛県 | 562.9万円 |
20 | 山口県 | 560.8万円 |
21 | 石川県 | 560.2万円 |
22 | 静岡県 | 556.3万円 |
23 | 宮崎県 | 553.0万円 |
24 | 岐阜県 | 550.4万円 |
25 | 大阪府 | 550.2万円 |
26 | 鳥取県 | 547.1万円 |
27 | 佐賀県 | 544.2万円 |
28 | 福井県 | 543.0万円 |
29 | 群馬県 | 539.9万円 |
30 | 滋賀県 | 526.7万円 |
31 | 福島県 | 522.8万円 |
32 | 長野県 | 519.7万円 |
33 | 大分県 | 513.3万円 |
34 | 奈良県 | 509.9万円 |
35 | 沖縄県 | 509.6万円 |
36 | 富山県 | 504.3万円 |
37 | 岩手県 | 499.5万円 |
38 | 北海道 | 493.8万円 |
39 | 岡山県 | 486.9万円 |
40 | 茨城県 | 481.3万円 |
41 | 熊本県 | 477.9万円 |
42 | 高知県 | 473.3万円 |
43 | 京都府 | 468.5万円 |
44 | 埼玉県 | 464.5万円 |
45 | 新潟県 | 460.6万円 |
46 | 青森県 | 460.0万円 |
47 | 徳島県 | 451.7万円 |
平均年収は、都市部が高いとは限りません。実際には、需要と供給も関わります。そのため、薬剤師の不足している地域では高くなる傾向にあるようです。
給与を重視される方で、働く地域にこだわりのない場合は、平均年収の高い都道府県へと転職希望エリアを広げてみてはいかがでしょうか。
職業別平均年収は?
病院・薬局・ドラッグストアでの平均年収を比較してみましょう 。厚生労働省の「薬剤師の偏在への対応策」 という資料から抜粋して作成した表が以下です。
病院 | 薬局 | ドラッグストア | |
20代 | 380万円 | 420万円 | 450万円 |
30代 | 500万円 | 510万円 | 500万円 |
40代 | 600万円 | 600万円 | 600万円 |
50代 | 700万円 | 600万円 | 600万円 |
生涯累積 | 2億3280万円 | 2億2768万円 | 2億2433万円 |
若い年代では調剤薬局やドラッグストアの薬剤師の年収が高いですが、40代頃にはほとんど同じになり、50代では病院勤務の薬剤師が最も高くなるという結果でした。65歳まで働くと仮定した場合の、生涯年収はほとんど差がありません。
若い年代では、奨学金の返済がある方もいるでしょう。そのため、初任給が高い傾向にある薬局やドラッグストアの人気が高いのかもしれません。
働き方・雇用形態別平均年収は?
薬剤師の資格があれば、パートタイムでも働きやすいのが魅力です。
正職員として働く薬剤師の平均年収は、550〜580万円程度で推移しています。夜勤や休日勤務の多い職場では、高くなりやすいです。
一方、パートタイム薬剤師の平均的な時給は2,000円前後が多く、仮に週に24時間働くとすると、年収は約230万円になります。正職員薬剤師の約半分です。勤務時間が短いこともありますが、ボーナスがない、定期的な昇給がないという点も、年収の差として現れていると言えるでしょう。
過去5年間の平均年収推移を見てみよう
薬剤師の年収は、上がっているのでしょうか?過去5年間のデータをご紹介します。
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
平均年収 | 568万円 | 565万円 | 580万円 | 583万円 | 578万円 |
年によってやや減少する場合はあるものの、全体的には緩やかに増加傾向と言えるでしょう。現在、都道府県ごとの薬剤師の偏在を是正するために「薬剤師確保計画」 が進められており、そのための施策として給与面での支援がある可能性もあり、年収が大きく低下することは考えにくいです。
ただし、将来的には薬剤師数が飽和するとも言われており、年収の増加傾向がいつまでも続くかは不透明な状況と言えるでしょう。
その他職種と比較すると?
次に、薬剤師の年収が高いのか低いのか、日本人の平均年収やほかの医療従事者の年収とも比較してみましょう。どの程度、違いがあるのでしょうか。
日本の平均年収と比較
国税庁のデータによると、令和4年度の給与所得者の平均給与は458万円で、2年連続増となっているようです。また、雇用形態別では、正職員が523万円、正職員以外が201万円でした。男女別では、男性が563万円、女性が314万円と、差が目立つ結果となっています。
薬剤師は、女性でも安定した給与が得られる職業だと言えます。
医療従事者の平均年収と比較
医療や福祉に関連した仕事に従事している方全体の平均年収は、429.3万円です。この中には、歯科領域も含めた医療系の資格職だけでなく、事務職員や清掃職員なども含めた数値と考えられます。
職種別では、以下のようになっています。
放射線技師 | 499.5万円 |
臨床検査技師 | 467.9万円 |
栄養士 | 376.0万円 |
保健師 | 432.8万円 |
リハビリ職(PT、OT、ST) | 419.6万円 |
薬剤師は、医療従事者の中では比較的高い給与水準であるようです。
看護師の平均年収と比較
看護師の平均年収は、468.8万円です。また、看護師の中で「助産師」はやや平均年収が高く、516.6万円でした。
看護師は女性が多い職種ですが、女性だけで比較しても薬剤師の方が平均年収は高めということがわかります。給与面を重視して医療系職種を目指そうと考えている方には、薬剤師は良い選択肢となるでしょう。
医師の平均年収と比較
医師の平均年収は1267.6万円、1年目でも598.5万円と、高い水準です。やはり、医療をおこなう上で、医師の貢献度合いや責任の重さ、勤務の忙しさなどは他職種とは比べ物にならず、それが給与の差として表れていると言えるでしょう。
歯科医師は894.7万円、獣医師は582.3万円となっています。いずれも、薬剤師と比較すると高い水準です。
調剤薬局の仕事と魅力を知ろう!
調剤薬局で薬剤師として働く魅力は、患者さんの身近な存在として生活をサポートできることです。調剤や服薬指導、薬歴管理などももちろん重要な仕事ですが、最近では在宅医療を受ける方も増えてきており、一人ひとりに合わせたきめ細やかな薬剤管理が求められるようになってきました。
患者さんの生活と密接に関わりながら、薬剤師として責任ある仕事がしたいという方には、調剤薬局がおすすめです。
薬剤師が年収アップを目指す方法は4つ !
薬剤師として今よりも年収を上げていくには、どのような方法があるでしょうか?代表例をご紹介します。
①管理薬剤師になる
管理薬剤師は、各薬局店舗の責任者のことで、店舗の管理をおこなう薬剤師です。薬剤師としての経験を積んで管理薬剤師になるというのが、年収アップを目指すスタンダードな道と言えます。
管理薬剤師になるためには、基本的には「薬局での5年以上の実務経験」「認定薬剤師の資格」の2つの要件を満たさなければなりません。経験年数については、5年未満でも管理薬剤師となることはできますが、「十分な能力及び経験を有している」ということが必要です。
管理薬剤師になれば平均年収が大幅にアップします。マネジメント業務が得意な方、リーダーシップを取るのが苦でない方、クレームにも柔軟に対応できる方などは、目指してみるのがおすすめです。
②認定薬剤師などの資格を取得する
認定薬剤師・専門薬剤師など、プラスアルファの資格を取得することで、年収アップを目指すことができます。認定薬剤師が所属することで加算が取れるような場合は、手当がつくという調剤薬局は多いです。資格取得に力を入れている企業であれば、月に数万円〜5万円程度の手当がつく場合もあり、かなりの年収アップにつながります。
資格取得そのものにも助成が受けられる場合もありますので、就職先・転職先を探すときには確かめておくと良いでしょう。専門知識をつけてスキルアップを叶えつつ年収アップも見込めますので、どの職場でも自分にとって損はない方法です。
③昇進条件を確認する
「給与を上げるために残業をする」という手段もありますが、持続することを考えればあまり現実的ではありません。基本的には、昇進によって基本給を上げることが大切になります。現在の職場で、昇給によりどの程度給与がアップするのか、確かめてみましょう。昇給率や手当が良くない場合には、いくら努力しても思うようには給与が上がりません。
日本の平均的な昇給率は年に2%前後ですので、目安にしてみてください。昇進の条件が良い場合には、1つの職場で長く努力を続けるのが良いでしょう。一方で、昇給率が良くない、将来的にあまり給与が良くないという見込みの場合には、思い切って転職するのも方法の一つです。
④転職してみる
転職をして年収アップを目指すのも、王道の方法です。
たとえば、病院薬剤師として働き認定資格を取得したあと、その認定資格に高い手当の出る調剤薬局へ転職するという方は少なくありません。調剤薬局で在宅医療に関わった経験を、これから在宅医療を始めたいという調剤薬局へ転職して活かすといったように、経験者としリーダーシップが求められるような転職も、年収の交渉がしやすいです。
正職員にこだわらないのであれば、派遣薬剤師も時給が高く、ご自身のライフスタイルに合わせた働き方もできるため、おすすめできます。薬剤師不足の地域や、アクセスの良くない店舗などでは時給が高いため、働くエリアを柔軟に変えられる方は検討してみましょう。
転職成功事例3選
薬剤師の転職には様々なパターンがありますが、転職を成功させるコツの1つは転職エージェントを活用することです。活用した成功事例を3つご紹介します。
①希望通りの条件で転職できた!
以前の職場は、やりがいはあったのですが、休みが取りにくく、結婚を機に家族との時間も取れるようにと考え転職活動を始めました。
コーディネーターに相談したところ、その時の状況や希望をしっかり理解した上で、条件に合う会社をスピーディーに探してもらえたのがありがたかったです。
候補の中から決めようとした時、失敗したくないという気持ちから不安になってしまい、ほかにも候補を調べてもらいました。ですが結局、はじめに提示してもらった候補が1番条件に合うなと納得がいき、今は満足のいく職場でキャリアを積んでいるところです。
②個人薬局から「企業」へ
調剤薬局で長く勤めていたのですが、次は企業に挑戦したいと考えていました。コーディネーターと面談する中で、自分で想定していなかった希望まで引き出してくれ、条件面を固めることができたのが良かったです。
事前に自分で調べていた求人よりも、コーディネーターが探してくれた求人の方がより自分の希望に合っていたことで、信頼感がグッと増しました。
登録して2週間で1次面接というスピーディーさも良かったです。自分の希望やビジョンを先方へしっかり伝えていてくれたので、新しい挑戦も安心できました。
③様々な薬局で働きキャリアアップ
ドラッグストアや調剤薬局で働いたのち、職場ごとの業務の進め方・環境の違いなど実際に多くの経験を積みたいと考え、派遣薬剤師になることを考えました。その時の職場に、派遣薬剤師がいたのがきっかけです。
コーディネーターは、自分の経歴や将来的なビジョンなどをしっかり聞いた上で、派遣薬剤師のメリットだけでなくデメリットも正直に伝えてくれたので、信頼できると感じました。
好条件の求人を紹介してもらい、3つの異なる土地で働いてたくさんの経験を積むことができ、良かったと思っています。
ヤクジョブでは、様々な業種の求人を多数扱っています。転職体験談はこちらをご覧ください。
まとめ
今回は、薬剤師の勤務先として人気の高い「調剤薬局」の年収事情に着目し、様々なデータをご紹介しました。奨学金の返済や、結婚・子育てといったライフイベントのため、給与面の条件を重視する方は多いです。
希望が叶う理想の職場を探したい方は、薬剤師専門の転職エージェント「ヤクジョブ」にご相談ください。多数の求人を用意してお待ちしています。