安全・安心な医療を提供するために、感染症対策は欠かせません。コロナ禍を経て、感染症対策の重要性を実感し、興味を持った方もいるのではないでしょうか?
医療機関における感染症の予防法や対策の立案に関しては、薬剤師の専門性が活かせる場面でもあります。今回は、感染領域の認定資格のひとつである「感染制御認定薬剤師」がどういった資格なのか解説するとともに、資格取得要件や資格取得のメリットなどを紹介します。
今後、何か資格を取得したい方 、感染症や感染対策に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
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👉資格取得サポートのある職場を探す感染制御認定薬剤師とは
まずは、感染制御認定薬剤師という資格の概要をご紹介します。
日本病院薬剤師会が認定を行う認定薬剤師資格のひとつで、感染制御に関する専門知識と技術を有する薬剤師を評価する資格制度です。
患者の感染症治療を支援し、薬学的な管理に携わるだけでなく、病院という場所における感染制御に必要な消毒薬、微生物、耐性菌などに関する幅広い基礎知識を十分に理解していることが求められます。患者の治療だけでなく、院内の感染対策のための環境整備などに関わる知識も必要である点が特徴です。
「感染制御認定薬剤師」の上位資格として「感染制御専門薬剤師」があります。
感染制御認定薬剤師の資格を取得するまでの流れ
感染制御認定薬剤師の資格取得までの流れ、および試験の範囲、参考図書などを紹介します。目指そうと考えている方は、参考にしてください。
感染制御認定薬剤師の資格取得条件
資格取得の申請をするには、まず以下の9つの全てを満たす必要があります。
(1)日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。
(2)薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。
(3)別に定める学会のいずれかの会員であること。
(4)日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。
(5)申請時において、病院または診療所に勤務し、施設内において、感染制御活動(院内感染防止対策委員会、院内感染対策チーム、抗菌薬適正使用支援チームの一員、委員会・チームと連携した活動、あるいは他施設の委員会・チームと連携した活動など) に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること(所属長の証明が必要)。
(6)施設内において、感染制御に貢献した業務内容及び薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を20例以上報告できること。
(7)日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会、及び別に定める学会が主催する感染制御領域の講習会などを所定の単位(20時間、10単位)以上履修していること。ただし、日本病院薬剤師会主催の感染制御に関する講習会を1回以上受講していること。
(8)病院長あるいは施設長等の推薦があること。
(9)日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師認定試験に合格していること。
取得したいと思っても、すぐに試験を受けられるわけではありません。取得に向けて必要な活動、必要な単位を計画的に準備しましょう。要件の(6)で必要な20例の対策については審査がありますので、できるだけ質の高いものを選べるよう、日頃から介入の記録をとっておく必要があります。
なお、要件を満たす前であっても、次年度に満たす見込みがあれば、試験自体は1年早く受けることが可能です。
引用:「感染制御認定薬剤師認定申請資格」一般社団法人 日本病院薬剤師会
試験の出題範囲と参考図書
出題範囲は、微生物や感染症、抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬、耐性菌の基礎知識、ワクチン、臨床検査、抗菌薬の適正使用や留意点、感染症の予防とその治療、エビデンスに基づいた感染対策、感染制御とガイドライン、サーベイランスとアウトブレイクへの対応、洗浄・滅菌の実際、消毒薬の適正使用など、非常に多岐にわたります。
新興感染症・再興感染症についても範囲となっているため、新型コロナウイルス感染症など、最新の情報もリサーチしておくことが大切です。
通常の薬剤師業務を行っているだけでは、とくに感染対策に関しての知識を網羅しきれないのが現状でしょう。以下のような参考図書を使って、知識を底上げする必要があります。(2024年2月現在)
● 薬剤師のための感染制御マニュアル第5版(日本病院薬剤師会編)
● 抗菌薬使用のガイドライン(日本感染症学会・日本化学療法学会編)
● 抗菌薬適正使用生涯教育テキスト(日本化学療法学会編)
● 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022(日本化学療法学会等編)
● 添付文書、インタビューフォーム
● CDCカイドライン
「薬剤師のための感染制御マニュアル第5版」は日本病院薬剤師会が発行しているもので、試験範囲が網羅されています。試験前には必ず目を通し、理解を深めておくようにしてください。
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👉資格取得サポートのある職場を探す感染制御認定薬剤師の役割と資格を取得するメリット
感染制御認定薬剤師の役割と、資格取得のメリットを紹介します。取得した後にどのような活動をするのか、イメージしてみてください。
感染制御認定薬剤師の役割
感染制御認定薬剤師は、薬剤部内だけでなく、感染対策チームの一員として院内全体の感染防止対策に取り組むことが求められます。
たとえば、感染予防および対策マニュアルの作成・改訂をするのが重要な仕事のひとつです。院内の環境・状況に合わせて作成することで、より実際的なマニュアルになります。医療スタッフに対し、感染予防や適切な消毒方法などに関する研修を実施するなど、院内の感染制御に関する啓発活動も重要です。
また、院内だけでなく、地域の他の施設と連携して感染症や耐性菌の動向を調査し、対策に活かすことも、専門性を発揮できる活動のひとつです。具体的には、地域ごとのアンチバイオグラムを作成して、抗菌薬選択に活かしてもらえるよう周知するといった活動が考えられます。
そして、薬剤師として、感染症患者への適切かつ安全な薬物治療の提供のために、抗菌薬の選択や用量に関して積極的に介入していくことももちろん大切です。「感染制御認定薬剤師」という資格を取得することで、医師からの信頼も得やすくなるでしょう。
感染制御認定薬剤師の認定資格を取得するメリット
まず、チーム医療のなかで存在感を発揮できるのがメリットといえるでしょう。感染に関する資格を有していることで、院内・地域で質の高いICT活動をすることができるうえ、転職の際にも役立ちます。
資格を取得するために活動実績や症例が必要で、比較的難易度の高い資格であることから、一定の知識やスキルがあると証明することが可能です。また、自主的・継続的に学び続ける人材であることもアピールできるでしょう。
「感染制御認定薬剤師」を募集する求人もあるため、知識やスキルを現場でしっかり活かせる職場を選ぶことができ、満足のいく転職に繋がります。
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👉資格取得サポートのある職場を探すまとめ
今回は、日本病院薬剤師会が認定を行う「感染制御認定薬剤師」という資格について、概要や申請要件、取得のメリットなどをお伝えしました。
コロナ禍を経て、院内の感染対策ができる人材のニーズは高まっています。興味を持った方も多いでしょう。取得のためには単位や介入例が必要ですので、計画的に準備する必要があります。
感染制御に関する知識を深めたい、満足のいく転職がしたいという方は、今回ご紹介した内容を参考に、感染制御認定薬剤師を目指してみてはいかがでしょうか?