病院薬剤師への転職を考えている人にとって、年収がどの程度になるのか、気になる ところではないでしょうか。
この記事では、病院薬剤師の年収について解説します。あわせて病院勤務のメリット・デメリットや収入を上げる方法についても触れましたので、ぜひ参考にしてください。
病院薬剤師の平均年収はいくら?
厚生労働省の「第23回医療経済実態調査」によると、病院に勤務する病院薬剤師の平均年収は約550万円でした。病院薬剤師と比べて、ドラッグストアや薬局の薬剤師の方が高い年収を得ている傾向にあります。
このような結果となった背景には、薬局で管理薬剤師などの役職に就く人の比率が大きいことがあります。薬局は少人数の薬剤師で運営していることが多く、管理職の割合が高いことから、結果として平均年収が押し上げられたのです。
とはいえ、キャリア次第では病院薬剤師の年収をアップさせることは可能です。
出典:「第23回医療経済実態調査-令和3年実施-」(厚生労働省)
国公立病院と民間病院で年収は変わるの?
病院の種類は、国や県などの自治体が運営する「国公立病院」と法人や個人が運営する「民間病院」に大きく分けられ、それぞれで年収が異なります。
国公立病院で勤務する場合は「公務員」として雇用されます。初任給は20万円程度で、年収を重視する人にとっては厳しいと感じるかもしれませんが、安定した定期昇給が特徴です。1年につき月6,000円〜7,000円ずつ給与が増額され、長く勤めるほど昇給額も上がり、年収アップが期待できます。ただし、給与規定は病院によって異なり、都市部に比べると地方の病院では年収が低い傾向にあります。
民間病院の場合、薬剤師の初任給は25万円程度と、国公立病院よりも高い傾向にあります。しかし、民間病院は国公立病院と比べ、業績によって給与やボーナスが左右される可能性があります。業績の安定している病院や薬剤師が不足している地域の病院などでは国公立病院より待遇が良い場合もありますが、経営が悪化した際には年収が変動するリスクも考慮しておく必要があります。また、病院によって福利厚生の内容などが大きく異なる場合もあるため、自分の希望に合った民間病院を探すことが重要となります。
病院薬剤師の年収が低い理由
病院薬剤師の年収が調剤薬局やドラッグストアなどほかの薬剤師職と比べて低いのはなぜかご存じでしょうか?
続いては、病院薬剤師の年収が低い理由を紹介します。
新卒に人気が高いため
病院薬剤師の給与が低い理由のひとつは、新卒の学生に人気の高い職場であるということです。
薬学生が経験する薬局実習と病院実習を比較すると、最先端の医療現場で医師や看護師など他職種と連携して働ける病院薬剤師の仕事に魅力を感じる学生が多くいます。とくに大学病院や地域の拠点病院などの大規模な病院では、初任給や昇給額が低く設定されているにも関わらず、志望する学生が多い傾向にあります。
年収は、仕事の需要と供給のバランスによって決まります。新卒の学生に人気の高い病院では、年収を上げなくても新卒の学生を毎年安定して採用できるのに加え、中途採用を行う必要性も低いため、必然的に年収が低めになっているという現状があります。
人件費が削減されやすい
高齢化が進み、医療費がかつてないほど増加している近年、病院は診療報酬の改定によって、より厳しいコスト削減を迫られています。しかし、患者の治療にかかるコストを下げることは難しく、人件費を下げることで対応するケースが増えています。
そんななか、とくにコストカットの対象とされやすいのが薬剤師の人件費です。医師や看護師がいなければ病院の経営が成り立たないのに対し、薬剤師の業務によって発生する診療報酬は、病院全体の収益の中でもごく一部にすぎません。また、病院薬剤師は新卒に人気が高い職種ということもあり、慢性的に人手不足の医師や看護師とは異なり、常に定員どおりの人数でシフトを回しやすい傾向にあります。
こういった理由から病院薬剤師の人件費は削減対象になりやすく、少なめの定員と低めの給与が基準となっている状況にあります。
病院薬剤師のメリットとは?
年収が低いといわれる病院薬剤師ですが、幅広い知識が得られる、最先端の医療が学べるといったさまざまなメリットも存在します。
幅広い知識が得られる
病院では、医師や看護師などさまざまな職種のスタッフと連携をとり、質の高い医療の提供を目指す「チーム医療」が実施されています。
薬剤師としてチーム医療の一員となることで、幅広い知識や経験が身につきます。例えば、医師からの質問や相談に答えたり、看護師がどのように患者に投薬しているのかを実際に見たりすることで、薬の知識が深まります。また、患者と継続的に接しながら薬の効果や副作用を直接確認できるのも、病院薬剤師の醍醐味です。
最先端の医療が学べる
最先端の医療を取り入れている急性期病院などでは、新薬など最新の治療法に関する情報がより入手しやすい傾向にあります。さまざまな勉強会や研究会が定期的に開催されることも多く、医師や看護師など他職種のスタッフと情報交換しながら最先端の医療を学びたい人にとっては、最適な環境だといえるでしょう。
また、専門薬剤師資格の取得や学会への参加など、個人的なスキルアップについても職場の理解が得やすく、最先端の医療を学びながら興味のある分野の専門性を追求できます。
病院薬剤師のデメリットは?
病院薬剤師のデメリットは、プライベートの時間が取りづらいことです。
特に夜勤や当直がある病院に勤務すると、カレンダーどおりに休みをとることが難しくなります。土日祝日や大型連休でも、シフトが入る可能性があります。
また、夜勤や当直があると、生活リズムを整えることが難しい場合もあります。
さらに、病院での勤務は多忙です。薬局などと比べてひとりの薬剤師が担当する作業の範囲が広く、さまざまな業務に対応できるよう幅広い知識を身につける必要があります。入院患者や急変患者への対応があると、残業が発生することもしばしばです。
病院薬剤師の年収をアップさせる方法はある?
病院薬剤師になると、年収アップのチャンスは多く発生します。しかし、ただ転職するだけでは年収は上がりません。年収を上げるためには、薬剤師としてのスキルを上げていくことが大切です。
ここでは、具体的にどのように行動すれば年収を上げられるのか解説します。病院薬剤師として年収を上げる方法は、主に以下の4つです。
● 資格を取得する
● 管理職になる
● 地方の病院に勤める
● 国公立病院への就職を目指す
1:資格を取得する
病院薬剤師として年収を上げるには、専門性のある資格を取得することが欠かせません。
薬剤師には、「認定薬剤師」や「専門薬剤師」などの資格が存在します。これらは専門性が高く、知識と技術を十分に身につけた薬剤師だけが取得できる資格です。病院によっては、資格取得者に資格手当を出し、有資格者のみが就任できるポストを用意することもあります。
特に、臨床領域に特化した資格は、仕事に生かしやすいでしょう。例えば、がん領域や感染領域、緩和領域に関連した認定・専門資格がおすすめです。
2:管理職になる
病院薬剤師が年収を上げるもうひとつの方法は、管理職になることです。
病院では管理薬剤師の配置義務がないものの、「主任薬剤師」や「薬剤部長」として、医薬品の管理や一般薬剤師をまとめる役割を担います。このような院内の薬事責任者になれば役職手当がつくことが多く、大幅な収入アップを狙えます。具体的には主任薬剤師で2〜3万円、薬剤部長で1万〜6万円ほどの役職手当をもらえる可能性があります。
キャリアアップとしても重要な意味を持つので、興味のある人はぜひ目指してみましょう。
3:地方の病院に勤める
都市部ではなく地方の病院に勤めることで、年収をアップできる可能性があります。
近年、薬剤師として働く人の数は増加傾向にあり、とくに人気の高い都市部の病院では薬剤師が飽和しつつあります。しかし、地方ではまだまだ薬剤師が不足しているのが現状です。高齢化が進み薬剤師の需要が高いこともあり、人員不足から高年収を提示して募集を続ける病院も少なくありません。
ただし、国公立病院の場合は都市部の方が年収の高いケースが多いのに加え、民間病院の年収も病院によってさまざまです。また、地方には経営状態が悪い病院も多いため、条件面だけでなく将来的な安定性も考慮した病院選びが重要です。
4:国公立病院への就職を目指す
病院薬剤師として安定的に高収入を得たい人は、国公立病院への就職を目指すのがおすすめです。とくに、病院薬剤師として長く勤めたいという希望がある場合は、毎年の定期昇給が月額6,000~7,000円と充実している国公立病院が有力な選択肢となります。
国公立病院に勤務する薬剤師の平均年収は600万円以上、役職次第では800万円を超えることも可能といわれており、薬剤師業界の中でも比較的高い水準です。
また、国公立病院では公務員として雇用されるため、安定性も大きなメリットのひとつです。原則として病院側の都合で解雇されることがなく、福利厚生や各種手当、残業代なども充実しています。
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まとめ
病院薬剤師の平均年収は約550万円で、収入面だけに着目すると決して待遇の良い職場とはいえません。しかし、薬剤師としてやりがいや充実感のある仕事ができるという面では、メリットの大きい職種ともいえます。
専門性の高い資格の取得や管理職への昇進を果たせば、薬剤師の一般的な年収を上回ることができる場合もあります。現在の収入が低くてお悩みの人は、できるだけ良い条件で働くことができるよう、転職活動の準備を始めてみてはいかがでしょうか?