薬剤師の施設業態でみる働き方調剤薬局ではたらく

調剤薬局ではたらく

調剤薬局で働く薬剤師は、処方箋の絶対的プロフェッショナルです。薬剤師が活躍するフィールドの主流で魅力もさまざまですが、調剤に特化し存分にスキルを磨ける点が最大のメリット。一期一会のふれあいから、地域医療の実情を肌で感じられるのが魅力です。

調剤薬局ではたらく

医療機関である調剤薬局は、時代のニーズに合わせて常に変化を求められています。

対応する医療機関によって特徴が分かれてくるほか、運営方針・形態によってもさまざまな特色が見られます。例えば現代日本においては、急速に進む高齢化によって高齢者の在宅医療・施設介護のニーズが高まっており、それに合わせて薬局側も在宅訪問・施設調剤に力を入れるケースが徐々に増えてきています。

さまざまな要因が組み合わさって店舗ごとの個性を作り出していますが、傾向を大きく分類することは可能です。ここでは薬局の傾向を「運営形態によるタイプ別」「応需する医療機関によるタイプ別」でご紹介します。

今後、新たなスタイルの薬局もさらに増えていくかもしれません。薬剤師としてどのような薬局で勤務したいか、ぜひ改めてご検討ください。

調剤薬局の定義

「薬局」とはどのようなものかというと、原則として次のように定義されています。

  • ・薬剤師が常駐している
  • ・必要な施設基準を満たしている
  • ・医師の処方に基づいた調剤を行える

上記の基準を満たした上で、薬局がある地域を管轄する各都道府県(または市)の保健福祉局などから認可を受けた事業所、店舗が「薬局」と認められるのです。

なかでも処方箋による調剤を中心に行っているのが調剤薬局と呼ばれ、ほとんどの場合、保険薬局でもあります。保険薬局とは厚生労働省の地方部局である「地方厚生局」から保険指定を受けた薬局です。保険薬局は、保険診療を行っている病院やクリニックの保険医が交付する処方箋に基づいて調剤を行います。保険薬局の報酬請求は、公的な健康保険の調剤報酬規定に従って行われます。保険が適用されるのが保険薬局であり、それ以外では保険が適用されず高額な請求となってしまいます。
保険薬局で公的な医療保険の適用を受ける調剤を行うためには、『保険薬剤師』の登録が必要となります。

保険薬剤師の登録方法へ

1993年の厚生労働省による「薬局業務運営ガイドライン」により医薬分業が進み、2017年には59,000店以上、医薬分業率も70%を超えてきました。応需する医療機関に応じてさまざまなタイプの調剤薬局があります。運営形態別・応需する医療機関別と2つのタイプにわけてご紹介いたします。

1. 調剤薬局のタイプ

現在の調剤薬局は多様化してきており、ニーズに合わせて変化しています。ここでは、大きく3つに分類して、具体的に見ていきましょう。

門前薬局
一番オーソドックスなタイプ。医薬分業が始まってから急速に広まりました。病院やクリニックの目の前にあり、扱う処方箋の大半が近隣の医療機関になります。しかし最近では、国の施策が地域医療、かかりつけ薬局の推進へと変わってきたため、今後は今までのように門前薬局が主流にはならないかもしれません。
調剤併設型ドラッグストア
近年、ドラッグストアの店舗は急速に増え、OTC医薬品をメインに扱ってきましたが、ドラッグストア内に調剤店を併設する店舗も増えています。患者さんにとっては、日々の買い物ついでに立ち寄れる、あまり混んでいない、近所なので後で薬を取りにいくのも楽であるといったメリットがあります。近隣にクリニックや病院があればそこから処方箋が来るケースが多いですが、住宅地に立地している場合は面でさまざまな処方箋を応需することが多くなります。ドラッグストアによっては、在宅医療や施設医療に力を入れているところもあり、調剤併設型といってもあまり調剤専門薬局との違いがなくなりつつあります。
在宅・施設調剤型薬局
在宅・施設への調剤をメインにしているタイプの薬局です。個人宅向けの在宅医療は地域医療の促進から今後一層増えていくものと思われ、また施設(介護老人保健施設)調剤も高齢化が進む中で需要は伸びていくと考えられます。施設に入所している患者さま向けにまとめて1週間分や2週間分の薬を調剤して届けます。そこで投薬も行います。施設も複数箇所を掛け持ちしているケースが多く、薬のお届けもあるので、運転免許があると何かと便利です。通常の調剤薬局で外来処方箋と一緒に対応している薬局もありますが、現在は医療機関からの外来処方箋を受けない、在宅・施設調剤専門の調剤薬局も増えてきています。

2. 医療機関別のタイプ

現在の調剤薬局では、対応する医療機関に応じてさまざまな特色があり、応需する科目や内容も異なってきます。ここでは、4つのタイプをご紹介いたします。

総合病院門前薬局

総合病院や大学病院など、比較的大規模な病院の前に開設された薬局です。病院の診療科目が多岐にわたるため、応需する処方箋も幅広いのが特徴です。
応需する病院によっては特殊な処方箋なども受けるケースがあり、深い知識を必要とするケースがあります。さらには、外来の受付時間が早いことが多く、営業時間が18:00までで、土日休みが多いことなども魅力の1つです。

反面、処方箋枚数が多い店舗も多く、営業時間内は常に忙しくなります。薬剤師人数も多いので、スタッフ同士の連携も重要になってきます。

マンツーマン薬局

地域の診療所やクリニックの近くに開設している薬局で、現在の調剤薬局の中では一番多いタイプです。少数の医療機関からの応需になるので、少ない診療科目に特化して専門知識を深めることができます。継続的に通院されている患者さまもいるので、長期に渡り接する機会もありますし、応需する医療機関のドクターとのコミュニケーションも重要です。

反面、医療機関にもよりますが、遅くまで診療していることがあったり、診察時間が不規則だったりするので、就業時間は近隣のクリニックによって変わってきます。

医療ビル・医療モール型薬局

ここ数年で増えてきており、同一の敷地内もしくはビル内などに複数の医療機関があり、そこに薬局を開設するタイプです。複数の医療機関が入っていることで、マンツーマン薬局より多くの診療科目を経験する機会があります。さらに、患者さまもその医療ビル・医療モール内で複数の受診を済ませることが多く、薬局としては、服用薬の把握・管理がしやすくなります。

反面、予定していたように医療機関が開設されなかったり、医療機関によって休診日や診察時間が異なるため、不規則な勤務になるケースもあります。

面応需型薬局

医療機関に隣接する形ではなく、駅前や住宅地など立地に応じて開設するタイプです。特定の医療機関が近隣にないため、幅広い処方箋を応需します。そのため、品目数を比較的多く取り扱っているケースが多くなりますので、さまざまな処方箋に触れる機会が多いのが特徴です。

しかし、在庫管理が大変だったり、どういった処方箋でも対応できるよう、薬剤師としてのスキルや知識が広範囲で必要になったりします。