MSLは、医者や研究者などへの専門的な情報提供を担う職種です。製薬業界やCSO業界での需要が年々高まるなか、薬局やドラッグストアなどで働く薬剤師の転職先としても注目されています。
今回は、MSLに注目が集まっている背景や仕事内容、必要なスキルなどについて詳しく解説します。
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👉薬剤師の転職相談はこちら(無料)MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)とは
MSLは「メディカル・サイエンス・リエゾン」の略称で、製薬企業において医学・科学的なエビデンスや専門知識に基づく医薬品の高度な情報を提供する職種です。MSLは「患者中心の医療」を実現するために欠かせない存在となっています。
MSLと同じく医療従事者に情報提供を行う職種として「MR」がありますが、両者には以下のような明確な違いがあります。
項目 | MSL | MR |
業務内容 | ・医薬品の科学的情報提供 ・KOL(キーオピニオンリーダー)との連携 ・臨床研究や学会活動の支援 | ・医薬品の販売促進 ・医療従事者への営業活動 |
求められるスキル | ・専門的知識 ・科学的議論の能力 ・語学力(特に英語) ・プレゼンテーションスキル | ・営業スキル ・コミュニケーション能力 ・医薬品に関する基本的知識 |
キャリアパス | ・メディカルアフェアーズ部門での活躍 ・研究職・開発職への転向 ・グローバルな職務へのステップアップ | ・営業管理職 ・マーケティング職への転向 |
MSLの将来性と需要
近年、医療分野での規制強化や「患者中心の医療」を目指す動きにともない、MSLの重要性が高まっています。続いては、MSLの将来性や需要について詳しく見てみましょう。
MSLの定義と役割:医療と科学をつなぐ架け橋
MSLは、製薬企業内で医薬品の科学的な価値を高める専門職として位置付けられています。
その役割は多岐にわたり、医療分野で影響力を持つ専門家(KOL)と連携し、新しい知見や治療法の普及を支援することで、医療と科学をつなぐ架け橋となっています。MSLの活動により、患者にとって最適な治療が提供されるだけでなく、医薬品の信頼性向上にも貢献しています。
MSLが注目される3つの背景
近年、MSLが注目されている理由として「製薬業界の変化」「MRの訪問規制」「積極的な採用」という3つの背景があります。
国内でMSLの必要性が高まる契機となったのは、2011年に発生した臨床研究不正問題です。この事件以降、製薬企業は利益追求よりも「患者中心の医療」を重視する体制へとシフトしたため、中立的・科学的な立場で情報提供をするMSLの需要が増加しました。
また、昨今はセキュリティー強化やコロナ禍の長期化などを理由に、MRの訪問規制が強化されています。その一方で、販売促進を目的とせず、医療従事者と医学・科学的な交流をもてるMSLは面会が許される場合もあります。
MSLの積極的な採用は、2010年頃から外資系企業を中心に展開されるようになりました。近年は、外資系製薬企業だけではなく、内資系製薬企業も積極的に採用しています。
製薬業界におけるMSLの戦略的位置づけ
MSLは製薬企業の経営戦略における中核的な存在として、科学的な信頼性の構築や医薬品の付加価値創出に貢献しています。
具体的には、信頼性の高い情報提供や学術的なサポートによってKOLとの信頼関係を構築し、医療現場でまだ十分に解決されていない課題を明確にします。その情報を企業内で共有し、新たな戦略を立てることで、企業全体の医療貢献度を向上させます。
MSLは製薬企業と医療現場をつなぐ窓口として、今後もその重要性が高まると考えられています。
MSLとMRの違いはある?
MSLとMRは、どちらも医療従事者と接点を持つ職種ですが、その業務内容や求められるスキルには明確な違いがあります。
続いては、両者の違いについて詳しく見ていきましょう。
業務内容の比較:5つの主要な相違点
MSLとMRの主な違いは、医薬品の販促活動が認められているかどうかです。
MRの場合は、自社で販売する医薬品のプロモーション活動の一環として、医薬品に関する情報提供を行います。それに対しMSLの場合は、特定の医薬品の使用を誘導するような情報提供活動は禁止されています。MRとは異なり売上目標は設定されず、医療現場と社内のほかの職種を橋渡しする存在としての活躍が求められます。
MSLとMRの業務内容の違いを、5つのポイントで比較してみました。
項目 | MSL | MR |
業務の目的 | 情報提供によって自社製品や自社の価値を高める | 自社医薬品の販売促進 |
医師に対する医薬品情報の提供 | 行う | 行う |
自社医薬品のプロモーション | 行わない | 行う |
処方を誘導するようなプロモーション活動 | 禁止 | 行う |
医師や研究職との関係 | 中立的な立場 | 営業的なアプローチ |
求められるスキルセットの違い:MSLとMRの専門性
MSLとMRでは、その専門性の違いから、求められるスキルにも違いがあります。
MSLは、医薬品の作用機序や臨床試験データなどに関する詳細な知識が求められます。一方、MRは幅広い医薬品の基本的な知識を持ち、それを分かりやすく伝える能力が重要です。
コミュニケーション能力の観点では、MSLは深い知識をもつKOLと議論を交わすため、科学的な論点を的確に伝えられる能力が重要です。MRは、多様な医療従事者と迅速に信頼関係を築くスキルが求められます。
また、グローバルに展開する製薬企業では、MSLに高い英語力が求められます。一方、MRでは語学力が重視されるケースは少なく、国内での活動が中心です。
キャリアパスの違い:長期的な展望
MSLとMRでは、キャリアパスにも違いがあります。
MSLには、社内の医薬品開発やメディカルアフェアーズ部門で専門性を活かすキャリアパスが存在します。また、研究開発や規制部門への転職も可能であり、グローバル市場での活躍も期待されます。
MRのキャリアパスとしては、営業部門での管理職へのキャリアアップやマーケティング部門への異動が一般的です。担当領域やスキルがマッチする場合、別の企業のMR職への転職も可能です。
MSLの仕事内容
医薬品の適正使用や患者へより良い医療を届けることを目的に、MSLは以下のような業務に従事しています。
担当疾患領域における最新情報の収集・提供
論文調査や学会参加、KOLとの情報交換を通じて、担当領域における最新の医学情報や有効性・安全性情報などを収集・精査します。ときには、KOLから要望を受けて収集した情報を提供する場合もあります。
さらに、MSLは以下の企画運営も行います。
● 学会のブース展示
● 販売を目的としない自社主催の講演会やセミナー
● 社外の有識者から意見を収集する「メディカルアドバイザリーボード会議」
● 最新の医学・科学的知見に関して議論を行う「メディカルエデュケーション会合」
効果的な情報収集の方法と重要
MSLが行う情報収集は、単に知識を集めるだけでなく、それを医療現場で役立つ形に加工していくことが重要です。効果的に情報を収集するためには、最新の研究論文を素早く調査し、科学的根拠を精査する能力が求められます。これにより、医療現場で必要な情報をタイムリーに提供できます。
また、文献による情報収集だけでなく、学会やセミナーへの参加によってKOLとのネットワークを構築し、信頼性の高い情報源を得ることも大切です。
医療従事者への情報提供:効果的テクニック
それぞれのMSLには担当が割り当てられ、エリアや領域ごとに分けられています。出張やミーティング以外の業務では、資料作成、自社製品の臨床試験支援、論文作成、学会発表などを行っています。
MSLが医療従事者に情報提供を行う際には、科学的根拠に基づいたプレゼンテーションや、双方向のコミュニケーション、個々のニーズに応じた情報のカスタマイズ、そして継続的なフォローアップといったテクニックが有効です。
KOLへの訪問・サポート:関係構築の秘訣
MSLは、対面訪問やオンラインでKOLとの面談を行います。最新情報の提供や議論を重ねることで良好な信頼関係を築き、自社および製品の価値向上を目指します。
また、KOLから得た情報を社内の関連部署と共有し、その情報を基に「アンメットメディカルニーズ」を導き出すことも重要です。アンメットメディカルニーズとは、まだ満たされていない医療ニーズのことで、具体的には、治療法が確立されていない疾患の治療薬や治療方法などを指します。
アンメットメディカルニーズを満たすために社内で分析や考察を重ねた結果をMSLがKOLにフィードバックすることで、医療現場で役立てられることもあります。
KOLとの信頼関係を築くポイント
MSLがKOLと信頼関係を築くためには、KOLの利益を重視する誠実な姿勢や、定期的なコミュニケーションが大切です。
科学的根拠に基づいた確かな情報を提供し、一貫性のある対応を心掛けることで、KOLとの信頼関係を築くことができます。KOLの関心やニーズを把握するためにも、定期的に対話を重ねることが重要です。
また、KOLが自身の研究や診療活動で得られる利益を重視し、MSLとして価値あるサポートを提供する姿勢も不可欠です。
KOLへの効果的なサポート方法:アプローチ
MSLがKOLをサポートする際には、KOLが関心を持つ疾患領域や治療法に関する最新の科学情報を提供することが重要です。
また、学会発表の準備や展示ブースの運営、臨床試験の計画や論文作成支援なども、効果的なサポート方法です。このようなアプローチを通じてKOLの活動を間接的に支援することで、MSLとKOLの協力体制を構築できます。
自社研究のサポート:MSLの重要な役割
MSLは、自社の医薬品研究開発を科学的な側面から支援する上でも重要な役割を担っています。具体的には、治験や臨床研究といった研究開発プロセスの支援や、KOLとの共同研究、エビデンス構築のための資料作成など、多岐にわたる活動を行います。
加えて、アンメットメディカルニーズを基に計画される「メディカル戦略」の策定や遂行もMSLの重要な仕事です。メディカル戦略は、医薬品の価値向上や最適な使用を目指すための計画であり、MSLの活動においても指針となる重要な内容です。
研究開発プロセスへのMSLの貢献方法
MSLは研究開発プロセスにおいて、治験の計画作成やプロトコルの立案に対して、科学的・臨床的視点からアドバイスを行います。また、治験結果をKOLや医療現場に伝える役割も担っています。
また、大学や研究機関と協力して共同研究を推進し、新しい治療法の開発や既存薬の新たな適応を探るのもMSLの重要な役割です。研究データを基にエビデンスを構築し、医薬品の安全性や有効性を証明する情報を医療従事者や規制当局に提供することで、研究開発プロセスに貢献します。
MSLの年収はどれくらい?
MSLの年収は、その人の経験や勤続年数によって変わってきます。新卒で入社した人については、その会社の給与テーブルに合わせた年収となるのが一般的です。
MSLには、MRや研究職などの他職種から転職した中途入社の人も多くいます 。高度な専門性が求められる職種であるため、中途入社の場合、MSLとして情報提供が求められる領域で論文投稿や学会発表といった実績を残している人は、高年収で採用されやすいのがメリットです。しかし反対に、MRなど他職種からの未経験転職の場合は年収が下がってしまう可能性が高いというデメリットも存在します。
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👉薬剤師の転職相談はこちら(無料)MSLに求められるスキル
MSLは、医療・科学分野における最先端の情報提供に携わり、専門家と対等な立場で関わることから、次のようなスキルが求められます。
専門知識
社内外の専門家と情報交換や議論をするMSLにとっては、疾患や医薬品についての高度な専門知識が欠かせません。担当する疾患領域での高い情報収集能力のほか、情報を分かりやすくまとめる力やプレゼンテーション能力も必要です。
要件は企業によって異なりますが、日本製薬工業協会では、医者や薬剤師などの医療系資格のほか、生命科学分野の博士号取得者などを推奨しています。がんや糖尿病といった専門性のある人材は需要が高い傾向にあるようです。
出典:「メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性」(日本製薬工業協会)
また、KOLから信頼されるMSLとなるには、担当分野の専門知識をアップデートし続けることに加え、各種法規制を遵守する倫理観も必要です。
英語力
医学・科学系の最新論文の多くは英語で書かれているため、英語での読解力が不可欠です。日常英語レベルでは、専門的な研究論文を読み解くことは難しいでしょう。
求められる英語力は、案件やポジションによっても異なります。海外の担当者と英語でミーティングや会議を行う仕事では、スムーズな会話や議論ができる総合的な英語力が必要です。
ビジネスで円滑なコミュニケーションを取れるレベルの英語力は、採用時のアピールポイントになるでしょう。
コミュニケーション能力
優れたコミュニケーション能力は、最先端の研究に携わる専門家や医者と頻繁に議論し、良きパートナーとして信頼を得るために必須です。
KOLとの信頼関係を築く土台となるビジネスマナーのほか、KOLの興味・関心や潜在的なニーズを察知する深い洞察力、的確な質問をする力も求められます。専門職ではない人々に医学・科学分野の高度な知識を分かりやすく説明できるスキルも必要です。
そのほか、営業部門や開発部門、海外の担当者といった異なる立場の人々と協業するために、調整力や交渉力、リーダーシップなどを発揮しなければならない場面もあります。
MSLのやりがいとは
最新情報の提供によって臨床現場の医者や看護師をはじめとしたKOLのニーズを満たし、影響を与えられる点はMSLの大きなやりがいといえるでしょう。プロモーション活動が目的ではないため、KOLの興味・関心や要望に応じた情報提供に注力できます。
また、日進月歩の医療・科学分野で最新の知識に触れる機会が多く、知的好奇心を刺激される環境です。新薬の治験や臨床研究へ関わることで、医療や患者への貢献も実感できるでしょう。
そして、MSLという職種自体がまだ新しい領域であるため、決まったキャリアパスが存在しない点も魅力のひとつです。自分の興味やスキルに合わせて、柔軟にキャリアを築くことができます。
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販売促進を目的とせず、高度な情報提供ができるMSLのニーズは年々高まっています。主な仕事は、医療・科学分野における最新情報の収集・提供をはじめ、KOLとの関係性構築を通じた自社製品の価値向上など、高い専門性が必要とされる内容です。
MSLには、担当領域の知識や英語力のほか、KOLと友好な関係を築くためのコミュニケーション能力も求められます。薬剤師の知見を活かし、長いスパンで患者や医療に貢献できる仕事をしたい人や、自分の興味やスキルに合わせて柔軟にキャリアを築いていきたい人におすすめの仕事です。