転職を検討している薬剤師の中には、「今の職場はどれくらいの退職金が支給される?」「次の職場で長く勤めたら 、退職金はいくらぐらいだろう?」と退職金に関して気になる人もいるのではないでしょうか。法的に退職金の支給が定められていないため、働く施設の方針によって有無や支給額は異なります。
そこで今回は、薬剤師の退職金の相場や退職金制度について解説します。
薬剤師の退職金の相場
薬剤師の退職金は、職場によって相場が異なります。 ここでは、職場ごとの相場を解説するので、自身が働く施設の退職金の目安や、転職先を探す際 の参考になさってください。
調剤薬局・ドラッグストア
調剤薬局やドラッグストアは経営状況に応じて退職金が変動しますが、一般的に調剤薬局の退職金は、勤続年数が30年の場合、給与の約40ヶ月分といわれています。
調剤薬局が中小企業退職金共済に加入している場合、退職金の支給額は、以下のとおりです。
勤続年数 | 10~49人 | 50~99人 | 100~299人 |
5年(27歳) | 407,000円 | 574,000円 | 492,000円 |
10年(32歳) | 1,036,000円 | 1,198,000円 | 1,237,000円 |
15年(37歳) | 1,915,000円 | 2,316,000円 | 2,426,000円 |
出典:「8-3-3.退職金の世間相場はどれくらいですか?| Q&A(よくあるご質問)」(中小企業退職金共済事業本部)
ドラッグストアだと、勤続年数30年で店長や管理薬剤師を担っている場合は約1,500万円、エリアマネージャーなら約2,000万円です。
民間病院・製薬会社
大学病院や国立病院を除く民間病院では、病院の規模や経営状態によって退職金が変動する傾向があります。民間病院の退職金は勤続年数30年で定年を迎えた場合 、800~1,200万円といわれています。
一方、製薬会社の退職金は勤続年数30年で700~800万円 です。製薬会社も会社の規模によって退職金額に差が生じます。
国立病院
国立病院(国立病院機構や国公立病院など)の退職金の相場は、勤続年数35年で1,000万円以上です。都道府県や市町村などの地方自治体が運営する国公立病院の場合は、地方公務員に準じた給与制度で、ほかの職場と比べて退職金額が高い傾向にあります。
薬剤師の退職金制度について【いつ受け取れる?】
退職金を受け取るタイミングは、施設が導入している退職金制度をチェックしましょう。ここでは退職金制度の種類を4つご紹介します。
・確定給付企業年金制度(DB)
・退職金共済制度
・拠出年金制度(企業型DC)
退職金制度は「退職一時金制度」と「退職年金制度」のふたつに分類されます。退職一時金制度は、退職時に退職金を一括支給される制度です。一方の退職年金制度は、退職金を分割して定期的に支給される制度のことを指します。
自身が勤める施設の退職金制度を知って、退職金が出る条件や金額を確認してみてください。
退職一時金制度
退職一時金制度とは、従業員の退職時に労働協約や就業規則の規定に準じて、企業から退職金を一括に支給する制度のことです。会社は外部積み立てせずに、資金源は内部保留になります。万が一、勤務先が倒産すると支給額はゼロになる可能性があります。
現在は多くの企業で設けられており、退職金制度として主流といえます。厚生労働省の調査では、退職一時金を設けている企業は、全体の88.6%です。
出典:「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(厚生労働省)
確定給付企業年金制度(DB)
確定給付企業年金とは「Defined Benefit Plan」の頭文字を取ってDBとも呼ばれ、企業が掛け金を拠出して運用することで、従業員の年金を準備します。あらかじめ、企業が退職金を積み立てするため、受け取りの条件がそろっていれば必ず支給されます。
中小企業退職金共済制度
退職金共済制度とは、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しており、中小企業のために国が設けた退職金制度のことです。毎月、企業が掛け金を支払い、退職金を積み立てます。加入企業の従業員が退職時に本部から直接退職金を支給されます。
掛け金は毎月5,000~30,000円の範囲で企業が選択して支払います。退職金の支給額は掛け金と在籍年数によっても変動するため、早期退職する場合は退職金が少額の可能性があります。
企業型確定拠出年金制度(企業型DC)
企業型確定拠出年金制度は、企業や施設が積み立てた掛け金を薬剤師が自身で運用する制度のことです。運用成績に応じて、退職金や年金の支給額は変わります。
資産配分などの運用方法を決めて、自身で運用しなければなりません。企業が掛け金を支払ってくれますが、よくも悪くも運用成績で退職金や年金が決まります。
退職金の計算方法
退職金の計算方法は、会社によってさまざまです。特に法律で定められているわけではないため、会社独自の計算方法を用いている場合もあります。
一般的な算出方法は「勤務年数」または「基本給」をベースにする2種類です。ここでは、それぞれの計算方法について詳しく解説していきます。
勤務年数ベース
勤務年数ベースとは、勤務年数に応じて「いくら支給する」というのを会社側が決めて、それにもとづいた退職金を給付するものです。勤続年数が長くなればなるほどに受け取れる退職金額も増えます。
例えば、勤続年数が10年の場合は100万円、勤続年数が20年なら300万円、とあらかじめ会社側が要している基準に対して、退職金が支給されます。具体的な支給額は勤務先の就業規則や退職金規定を確認すると明確になるでしょう。
基本給ベース
基本給ベースは、勤続年数とあわせて退職時の基本給を考慮して退職金を算出する方法のことです。一般に、退職時の基本給をベースにして、勤続年数や退職事由で支給係数を定めて計算します。
例えば、基本給25万円で勤続年数3年の従業員が自己都合にて退職した場合、勤務先のルールとして勤続年数3年の支給係数は3、自己都合は0.8としたときの計算方法は以下のとおりです。
(基本給)25×3(支給係数)×0.8(自己都合)=60万円(退職金)
支給係数は会社によって異なるため、同じ基本給や勤続年数でも、職場によって退職金額が異なります。
退職金の支給額は自己都合退職だと減額される?
退職金の支給額は、会社都合退職よりも自己都合退職の方が低くなるケースが多いです。
厚生労働省が行った「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、定年退職は18,72,9千円、会社都合11,972千円、自己都合は4,473千円という結果が出ています。
自己都合の退職金は、会社都合退職の場合と比べて受け取れる金額が6~8割ほど、定年退職と比較すると約7~8割減 です。このように、自己都合退職だと大幅に支給額が減ってしまいます。
出典:「令和3年賃金事情等総合調査(確報)-調査結果の概要」(厚生労働省)
退職する際の状況によっては、自己都合退職から会社都合退職に変更することも可能です。退職金の支給額に大きな差が出るため、会社に責任があると判断される場合はしっかりと交渉をしてみましょう。
まとめ
薬剤師の退職金の相場は、職場によって異なります。
退職金の制度には退職一時金制度や確定給付企業年金制度などいくつか種類があるため、確認しておくとよいでしょう。転職を考えているけど退職金について確認しづらいと感じる人は、ヤクジョブの利用がおすすめです。
転職エージェントが代わりに退職金について企業に確認を取ります。より退職金が高い職場や年収の高い職場を探している人は、一度ヤクジョブへ相談してみてはいかがでしょうか。