かかりつけ薬剤師とは?主な業務内容やメリットなどを詳しく解説!-ヤクジョブ

かかりつけ薬剤師になる5つの条件は?求められる役割とメリットもチェック

かかりつけ薬剤師とは?主な業務内容やメリットなどを詳しく解説!-ヤクジョブ

患者から指名を受けて、専属で服薬状況を管理して継続的に健康をサポートする薬剤師のことを「かかりつけ薬剤師」と呼びます。2016年4月に診療報酬が改定されたことで、かかりつけ薬剤師制度がスタートしましたが、その背景や具体的な役割などの詳細が分からない人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、かかりつけ薬剤師の制度が始まった背景や、求められる役割などをご紹介します。

かかりつけ薬剤師とは

かかりつけ薬剤師は、患者の専属薬剤師として薬の服用状況を継続的・一元的に管理し、服薬指導や健康全般のアドバイスをする薬剤師です。地域への医薬品供給に必要な体制が整っている、かかりつけ薬局の中でも、条件を満たす薬剤師のみが業務に当たれます。

かかりつけ薬剤師は患者一人につき、一人の担当者が選ばれます。制度の説明を行い、患者からの同意を得た後は、サービスを提供するごとに「かかりつけ薬剤師指導料」や「かかりつけ薬剤師包括管理料」を算定する仕組みです。

なぜ必要?かかりつけ薬剤師の制度が始まった背景

高齢化が年々進むなか、政府は地域医療の連携により国民の健康保持・増進を図っています。その一環で2016年に導入されたのが、かかりつけ薬局・薬剤師制度です。地域における薬の専門家として薬物治療に携わり、健康管理のサポート役を担います。

厚生労働省は、後期高齢者人口が18%を超えるといわれる2025年を目標に、すべての薬局をかかりつけ薬局に再編する方針を打ち出しています。その背景には、高齢化の進展にともなう医療費の増大があります。

出典:「我が国の人口について」(厚生労働省)

かかりつけ薬剤師による適切な薬の管理は、医療費増加の一因である薬の飲み残しを減らし、医療費の削減に寄与します。服薬に対する患者の不安を軽減し、薬局利用の満足度を高められるのも利点です。

さらに、かかりつけ薬剤師は他機関との連携により、在宅医療など、薬局以外での活躍も期待されています。薬剤師の業務が「対物業務から対人業務へ」シフトするなか、今後かかりつけ薬剤師の重要性がますます高まると予想されます。

出典:「患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~」(厚生労働省)

かかりつけ薬剤師が果たす3つの役割

地域における健康サポートや医療連携のニーズに応えるため、かかりつけ薬剤師には、以下の3つの役割が求められます。

1.服薬情報の一元管理

服薬情報を一元的・継続的に把握し、患者の適正な薬の使用をサポートします。実際には、薬学的な観点から以下の点をチェックし、必要に応じて指導・アドバイスをします。

 薬の効果・副作用の確認
 薬の飲み合わせ
 食品・サプリメントと薬の相互作用

複数の医療機関を受診する高齢の患者には、重複・多剤服用や薬の飲み忘れなどの確認も必要です。このようなリスクに対し、かかりつけ薬剤師は、次のような方法で患者に働きかけます。

 お薬手帳を1冊に集約して活用を促す
 丁寧な説明で服薬を促し、飲み残し・飲み忘れを防止する
 主治医との連携や情報収集などにより、正確な薬歴管理と適切な服薬指導に努める

2.24時間対応・在宅対応

地域医療の一翼を担う存在として、かかりつけ薬剤師は開局時間外の対応も求められます。薬の副作用や飲み間違いなどのトラブルに24時間体制で応じる電話相談をはじめ、緊急時における夜間・休日の調剤などがその例です。

加えて、在宅医療への対応もかかりつけ薬剤師の重要な仕事です。来局が困難な患者の自宅に直接薬を届け、残薬管理や副作用の確認、服薬指導に当たります。

対応が困難な場合は、近隣の薬局や地区薬剤師会などと連携を図り、サービスの提供に努めます。

3.医療機関との連携

地域の医療機関や処方医と連携して患者の薬物治療に携わることも、かかりつけ薬剤師に期待される役割です。具体的には、医師の処方内容をチェックし、状況に応じて疑義照会や処方提案をします。

患者との継続的な関わりを通じて、副作用や服薬状況などで気になる点は処方医にフィードバックします。必要だと判断した場合は、医療機関への受診勧奨も行います。

かかりつけ薬剤師(薬局)の主な5つの役割・業務内容

「かかりつけ薬剤師(薬局)」としての機能を発揮するために、業務内容を薬中心の対物業務から患者中心の対人業務へと重点を移す必要があります。

これまでは、「処方せんの受け取り」「薬袋の作成」「調剤」「監査」「報酬算定」「薬剤の交付」までが主な薬剤師の業務でした。処方せんと医薬品を中心に動き、対人業務と言えるのは、最後の「患者への服薬指導」が主なものでした。

「かかりつけ薬剤師(薬局)」になると、患者が受診しているすべての医療機関の処方内容をチェックし、重複や相互作用の問題があれば疑義照会や処方提案をおこない、より丁寧な服薬指導をする必要があります。さらに、薬学管理をするうえでは在宅訪問をおこなうこともあり、業務は患者最優先なものへと変化します。

かかりつけ薬剤師(薬局)の主な役割と業務内容は、以下の5つに集約されます。これらの役割を通じて、患者一人ひとりの生活背景や健康状態を理解し、適切な薬学的管理をします。また、地域の健康相談窓口として機能し、医療機関や他の医療従事者との連携を図りながら、患者の健康と生活の質の向上に貢献します。

1.継続的な服用状況の管理・把握

患者が受診している医療機関の情報を把握し、使用している薬剤などについて、継続的に服薬状況を管理します。

患者一人に対しお薬手帳を1冊とすることで、重複処方や多剤投与、相互作用のチェック、残薬調整ができ、副作用の発現などについても早期の発見が可能になります。複数のお薬手帳を持っている患者にはメリットを伝え、1冊に集約できるように促さなければなりません。

処方薬だけに限らず、市販薬やサプリメントなどについても情報を把握し、患者の健康をサポートします。患者に検査値の結果を提供してもらい、服薬指導や生活指導などにつなげることも業務の一つです。

2.かかりつけ薬剤師としての情報開示

担当患者のお薬手帳に薬剤師名や勤務する薬局名などを記載し、医療機関やほかの保険薬局に対し、「かかりつけ薬剤師であること」の情報を伝えます。また、患者にも、かかりつけ薬剤師がいることを医療機関やほかの保険薬局に伝えるように話しておきます。

このようにすることで、医療機関やほかの薬局との連携がスムーズにできるようになり、患者の薬歴や健康状態の一元管理が可能になります。また、患者自身も安心して相談できる薬剤師がいることを認識し、積極的に健康管理に参加するようになるでしょう。

3.在宅医療の対応

かかりつけ薬剤師は、外出が難しい高齢者など在宅医療を受けている患者宅へ処方せん薬を持って出向きます。服薬指導のほかにする大切な仕事は、副作用が出ていないか、残薬はないかなどなどのチェックです。副作用を発現した場合は必要に応じて処方医と連携し、より良い治療や処方に活かせるように動きます。適切な薬の保管方法や服薬管理を提案し、在宅患者の薬物治療の質と安全性の向上を目指します。

在宅医療では、患者の生活環境や介護状況を把握することも欠かせません。日常生活を快適に過ごすためのアドバイスなど、薬以外のことでも、患者をサポートします。

4.24時間体制での相談対応

かかりつけ薬剤師は、担当患者からの相談や問い合わせなどに対して、24時間体制で応じなければなりません。そのために、連絡先を伝えておく必要があります。ただし、患者の同意があれば、かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師でも対応は可能です。

出典:「厚生労働省/令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)

継続的な薬剤の管理業務では、患者の薬を自宅に訪問した際に整理したり、整理する方法を指導したりします。これは患者のアドヒアランス向上に役立つ業務です。かかりつけ薬剤師がいることで、患者の不安解消や緊急時の適切な対応が可能となり、安心感と信頼関係の構築につながります。

5.医療機関との密な連携

患者に薬を渡した後も状態を見守り、必要に応じて医師への問い合わせや提案、またはフィードバック、残薬の確認もします。薬に限らず、広く健康一般に関する相談にも応じ、状況によっては医療機関への受診を勧めることもあります。

また、地域の医療機関とも連携し、看護師などの他の医療職と一緒にチームで患者を支えられる信頼関係を常日ごろからつくっておくのも、かかりつけ薬剤師の役割です。この連携により、患者中心の安全で効果的な医療の実現と地域医療の質の向上に貢献できます。

かかりつけ薬剤師になるには?5つの条件!

かかりつけ薬剤師になるには、勤務経験や資格など、複数の条件を満たさなければなりません。以下で具体的な内容を見ていきましょう。

1.3年以上の薬局勤務経験がある

「保険調剤を取り扱う薬局で3年以上勤務」との条件があります。なお、病院で1年以上勤務していた場合は、最大で1年間分の勤務期間に換算されます。

2.1つの薬局に週32時間以上勤務している

「同じ薬局で1週間当たり32時間以上勤務」していることも条件のひとつです。次の理由で時短勤務をしている薬剤師は、週24時間以上かつ週4日以上の勤務に条件が緩和されます。

 育児休業
 介護休業
 家族の介護

ただし、この3つの緩和条件は同じ薬局内に、週32時間以上勤務しているかかりつけ薬剤師が在籍する場合に限られます。

出典:「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和元年度調査)の報告書案について 検-5-2 参考」(厚生労働省)

3.当該薬局で1年以上働いている

「週に32時間以上勤務する薬局で、連続して1年以上勤務」していることも条件に入っています。期間の算定は通算ではなく、直近の勤務期間が適用されます。

平成30年度調剤報酬改定により、患者との信頼関係の構築や維持に必要との考えから、以前は6ヶ月以上だった条件が1年以上に延長されました。

出典:「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和元年度調査)の報告書案について 検-5-2 参考」(厚生労働省)

4.認定薬剤師である

薬剤師としての継続的な自己研鑽の証明となる「認定薬剤師(研修認定薬剤師)の取得」も条件です。資格取得には、4年以内に40単位以上(最低でも毎年5単位以上)の研修単位が必要となります。

研修認定薬剤師資格は更新制です。3年ごとに30単位(最低でも毎年5単位以上)を取得し、単位を更新しなければいけません。

5.医療に関わる地域活動に参加している

かかりつけ薬剤師の条件には、地域包括ケアシステム構築への貢献や地域住民との交流などを目的とした活動への継続的・主体的な参加も含まれます。主な事例は以下のとおりです。

 行政や医療団体などの講演・研修会への参加
 地域ケア会議をはじめとする医療・介護関係の会議への参加
 学校薬剤師の活動
 休日夜間薬局としての対応・休日夜間診療所への派遣

ただし、企業主催の講演・説明会などは該当しません。

かかりつけ薬剤師になるメリット

専門性を活かし、患者や地域と深く関わるかかりつけ薬剤師には、次のようなメリットがあります。

収入アップが期待できる

かかりつけ薬剤師になることの最大のメリットは、薬局の収入が増えることです。そのことでかかりつけ薬剤師自身の評価が上がり、収入アップが期待できます。

改定前改定後
かかりつけ薬剤師指導料73点76点
かかりつけ薬剤師包括管理料281点291点
施設基準なし患者のプライバシーに配慮して、パーテーションなどで区切られた独立したカウンターを持つ。
残薬管理残薬状況と理由を把握。相当数ある場合には処方医へ連絡、投与日数などを確認する。残薬状況と理由を把握。一定程度の残薬が認められる場合は、患者の意向確認の上、お薬手帳へ状況および理由を相当数ある場合には処方医へ連絡、投与日数などを確認する。

出典:「厚生労働省/令和2年度診療報酬改定の概要(調剤)

施設基準を満たした薬局でかかりつけ薬剤師としてのサービスを提供すると、「かかりつけ薬剤師指導料」や「かかりつけ薬剤師包括管理料」などが算定されます。

つまり、かかりつけ薬剤師の指名が増えるほど売り上げに貢献できるため、評価が高まり、収入アップの可能性が広がるのです。かかりつけ機能を備えた薬局の普及が進むなか、注目が集まるかかりつけ薬剤師はいまだ人材不足であることから年収も高い傾向にあります。

経験を積んでキャリアアップできる

かかりつけ薬剤師の魅力は、患者の健康サポートや地域医療に関わることで幅広い分野での成長が望める点です。薬の一元管理や24時間対応、病院と連携したサポート業務を通じて一般薬剤師のときにはなかった経験ができます。

がん治療やプライマリケア(日常的に発生する初期の病気や健康問題に対する一時的な処置)など、かかりつけ薬剤師として働きながら関心のある分野の専門性を磨いて活躍する人もいます。

地域に貢献できる

調剤業務だけではなく、在宅医療や地域活動にも参画し、地域住民との交流が増えるため、人とのつながりを感じながら働くことができます。
患者との信頼関係が深まるほどに、頼りにされる場面や感謝の言葉をもらえる機会が増えることも、やりがいにつながります。

かかりつけ薬剤師をもつ患者側のメリット

「かかりつけ薬剤師・薬局」を持つ患者のメリットは、かかりつけ薬剤師の3つの機能、まさにそのことです。ここでは、かかりつけ薬剤師をもつ患者側のメリットを3つ、説明します。

患者専任の薬剤師に服用している薬を管理してもらえる

一人の専任薬剤師が患者の使用する複数の処方薬やOTC薬をすべて把握した上で、重複や多剤投薬のチェック、飲み合わせの確認をし、効果と副作用のようすを継続して見るので、薬を安心して飲めます。

かかりつけ薬剤師は患者の生活習慣や既往歴、アレルギー歴などの個人的な背景も把握しているため、より適切な薬学的管理が可能です。これにより、薬物療法の効果を最大限に引き出し、副作用リスクを最小限に抑えられます。患者にとっては、一貫した服薬指導や相談対応を受けられるため、薬への理解が深まり、アドヒアランスの向上にもつながります。

24時間いつでも相談でき、自宅に訪問してもらえる

薬局が開いていない夜間や休日でも、24時間いつでも電話などで薬についての相談ができ、必要があれば処方せんによる薬の交付もしてもらえます。一人では医療機関や薬局へ出向けない患者には、自宅を訪問してくれて、服薬指導や残薬確認までしてくれます。

患者は急な体調変化や薬の疑問に対して迅速に対応してもらえるので、安心感が高まるでしょう。また、在宅医療サービスは、高齢者や障がいのある方の薬の管理を支援するばかりでなく、服薬アドヒアランスの向上につながり、引いてはQOLの向上にも寄与します。このようなきめ細やかなケアは、患者と薬剤師の信頼関係を深め、より効果的な薬物療法の実現に貢献します。

処方医に問い合わせや提案をしてくれる

かかりつけ薬剤師は、薬を処方した医師に問い合わせや提案をしてくれます。また医療機関と連携し情報を共有しているので患者に医療チームとしてサポートし、さらに地域包括ケアシステムのメンバーとして、介護や食事、運動などについての相談も受けます。つまり、患者に一番身近な医療者として、人ひとりの健康を見守る存在になるのです。

かかりつけ薬剤師の介入で、安全で効果的な薬物療法が実現します。患者の生活全般を考慮した総合的な健康管理が可能となり、疾病の予防や早期発見にも貢献します。患者の不安や疑問に丁寧に対応することで、治療に対する意欲が高まり、結果として治療効果の向上やQOLの改善も可能です。

まとめ

地域で薬の専門家としての役割を果たすかかりつけ薬剤師は、高齢化を背景に重要性が増している仕事です。現状としてかかりつけ薬剤師は人材不足の状況にあるため、収入アップが期待できます。また、幅広い経験を積むことができ、薬剤師としてステップアップしたい人にもおすすめです。

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