新薬が開発され、世の中に出るまでの流れはご存じでしょうか?医療現場での薬剤師業務とは関わりが薄いこともあり「学生時代に勉強した気がするけど忘れてしまった」という人もいるかもしれません。
ひとつの医薬品が完成するまでには、合計9~17年の長い期間と多額の研究開発費用がかかります。成功率も低く、大変厳しい道のりなのが現状ですが、成功すれば病気で苦しむ患者の希望の光となることができます。これは、医薬品開発に関わる仕事ならではのやりがいといえるでしょう。
本記事では、医薬品開発の流れや開発にかかる期間、そのプロセスについて解説します。医薬品開発に関わる仕事が気になっている薬剤師の方は、ぜひ参考にしてみてください。
医薬品開発の流れ
医薬品開発は、以下の流れで進みます。
1. 創薬研究
2.開発研究(非臨床試験)
3.臨床試験
4.審査・承認
それぞれのプロセスの概要や所要期間について、詳しく見てみましょう。
創薬研究
医薬品開発の最初のプロセスは「創薬研究」です。創薬研究のプロセスでは2~3年の期間がかかるのが一般的で、大学などの研究機関と共同研究が行われる場合もあります。
創薬研究のプロセスでは、医薬品の候補となりうるさまざまな成分から、有効性を持つ成分を選定します。医薬品の候補成分は、化学合成で人工的に創り出すだけでなく、植物や鉱物、動物といった自然由来の成分から抽出した成分を対象にする場合や、酵素やホルモン、抗体といった生物によって作られる成分をベースに医薬品を開発する「バイオ創薬」の技術を活用する場合もあります。
また最近では、病気の原因となっている遺伝情報を元に、より効果の高い医薬品の効率的な開発を目指す「ゲノム創薬」も活発に行われています。
開発研究(非臨床試験)
創薬研究によって選定された候補成分は「開発研究(非臨床試験)」のプロセスへと進みます。このプロセスでは、3~5年の期間がかかるのが一般的です。
開発研究のプロセスでは、動物や細胞を対象に薬効薬理や毒性、薬物動態といった基本的な項目を試験します。この試験は、人を対象に試験を行う臨床試験に対して「非臨床試験」とも呼ばれています。
また、非臨床試験と並行して、有効成分の安定性や品質に関する試験も行われます。
臨床試験
非臨床試験によって有効性と安全性が確認された候補成分は「臨床試験」のプロセスへと進みます。このプロセスでは、3~7年の期間がかかるのが一般的です。
臨床試験はさらに「第1相試験」「第2相試験」「第3相試験」に分かれています。
第1相試験では、少人数の健康な成人に対して、安全性や薬物動態に関する試験を行います。第1相試験で問題がない場合は第2相試験へと進み、少人数の患者に対して、有効性や安全性の試験を行います。第2相試験でも問題がなければ、さらに第3相試験へと進み、多数の患者さんに対して同様の試験を行います。候補成分の有効性や安全性を既存の治療法とも比較され、医薬品としての有用性が総合的に判断されます。
審査・承認
臨床試験によって医薬品としての有用性が確認できたら、厚生労働省の承認を取得するための最後のプロセスである「審査・承認」へと進みます。このプロセスでは、1~2年の期間がかかるのが一般的です。
承認のための審査業務は、「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」を通じて行います。PMDAの審査を通過した後は、学識経験者などで構成される「薬事・食品衛生審議会」の審議に移り、審議の結果、厚生労働大臣の許可がおりれば、薬価基準に収載され、医薬品として製造や販売が可能となります。
医薬品開発の仕事とは?
続いては、医薬開発に関わる職種の仕事内容やキャリアパスについて見てみましょう。
医薬品開発の流れのうち、臨床試験(治験)に関する業務や、厚生労働省への承認申請を担当するのが「医薬開発職」や「臨床開発職」と呼ばれる職種です。薬学、医学、統計学など、医薬品に関する幅広い知識が求められる医薬品開発の現場では、多くの薬剤師が活躍しています。
仕事内容
医薬品開発の仕事内容は、新薬を世に出すための最後のプロセスである「臨床試験」の計画や実施です。また、治験によって収集したデータは厚生労働省への承認申請で使用されますが、この承認申請業務も医薬開発職の重要な仕事のひとつです。
近年では、製薬会社で行う治験が医薬品開発業務受託機関(CRO)へ外部委託されるケースも多くあります。CROに所属する臨床開発モニター(CRA)は、製薬会社の依頼を受け、治験に関連するさまざまなデータを確認・収集する役割を担っています。
キャリアパス
医薬開発職として入社してから数年間は、先輩社員や上司から指導を受けつつ、試験データのモニタリングや担当医師・治験コーディネーターとの連絡業務などの幅広い実務を経験します。
実務経験を重ねて中堅社員となると、治験の実施計画や管理の中で重要な役割を果たすことが求められるようになります。たとえば、複数の試験施設を管理し、各施設での試験進行を円滑に進めるための計画立案や、試験の予算やスケジュール管理を担当します。
さらにキャリアが進んで管理職に昇進すると、年収は大幅に上がります。プロジェクトの初期段階での方針決定や、途中で発生する課題への対処、スタッフ間の調整を行いながら、プロジェクト全体の統括責任者として、治験プロジェクトを成功へと導く役割を果たします。
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これまでに医薬品開発に関わる仕事の経験がない方でも、医薬品開発業務受託機関(CRO)の臨床開発モニター(CRA)職や医療機関に所属する治験コーディネーター(CRC)職などの求人では、未経験者の応募を受け付けている場合もあります。
薬局や病院からのキャリアチェンジを検討している薬剤師の方も、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
医薬品の開発は「創薬研究」「開発研究(非臨床試験)」「臨床試験」「審査・承認」と言う4つのプロセスを経て進んでいきます。
新薬の開発はとても難しく、長い年月がかかる大変厳しい道のりです。新薬開発の成功率は約3万分の1とも言われており、研究対象となったほとんどの成分は途中で開発が断念されてしまいます。
しかし、最終的に画期的な新薬を世の中に出すことができれば、病気で苦しむ人々にとって希望の光となります。成功した際の社会貢献性の高さは、医薬品開発に関わる仕事に就く醍醐味と言えるかもしれません。