薬剤師1年目で転職は無理?不利にならない転職理由と辞める前に考えるべきこと

薬剤師としてのキャリアを歩み始めた1年目。学生時代に思い描いていた仕事内容とのギャップや人間関係のトラブルなどが積み重なり、「転職したい」という考えが頭をよぎることがあるかもしれません。

薬剤師は資格職ですので、新卒1年目の転職が不可能なわけではありません。しかし、採用側のニーズは長期的に活躍できる即戦力の薬剤師です。そのため、経験やスキルが不十分かつ短期離職の懸念を与えてしまう1年目薬剤師は、通常よりも転職のハードルが高いとされています。

現在の職場では解決できない問題を抱えていたり、やむを得ない事情があったりする場合は、転職もひとつの選択肢です。しかし、ただ現状から逃げるための転職では失敗してしまう可能性もありますし、辞める前に考えるべきこともあります。

本記事では、1年目の薬剤師が転職を検討する際に知っておくべきポイントや転職活動成功への近道について解説します。

1年目の薬剤師が転職するのはアリ?

1年目薬剤師が転職するのは、アリかナシかといえば「ナシ」なのが現実です。

まずは、1年目薬剤師の転職活動の実態を把握しておきましょう。

就職してすぐに離職する医療・福祉職は少なくない!

たとえ1年目だとしても、職場に不満を持つことや転職を考えることは、決して珍しいことではありません。

厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、薬剤師を含む「医療・福祉」に該当する職場の離職率は13.5%で、1年間で10人に1人以上が離職しているということになります。また別の調査によると、新卒で医療・福祉職に就いた人のうち、3年以内に3割以上が離職しています。令和3年3月卒の人は1年以内に13.8%が、令和2年3月卒の人は2年以内に26.8%が離職しているとの調査結果も出ています。これらは医療・福祉職全体の統計ですので、薬剤師単独の数値ではありません。しかし、薬剤師単独でも概ね同様の傾向があると考えられています。

また、転職しない=職場に満足しているというわけではなく、転職を経験したことがない薬剤師の約7割が、現在の職場に不満を持ちながらも我慢して働いているという調査結果も出ています。

出典:「令和3年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)

新卒1年目の転職は避けるのがベター?

転職市場が活発で、転職は年収アップへの近道ともされる薬剤師ですが、新卒1年目の転職はうまくいかないことも多く、避けられるのであれば避けた方がよいとされています。

採用側が転職者に求めるのは、「長期的」な活躍が期待できる「即戦力」です。その点、1年目で転職を考える薬剤師は「どうせまたすぐ辞めるのでは?」と短期離職が懸念されてしまいますし、経験やスキルも採用側が求めるレベルには達していないのが一般的です。そのため、面接の際は厳しい目を向けられることが多く、現職よりもよい待遇や、働きやすい環境への転職は、よほどのアピールポイントがなければ厳しいかもしれません。

1年目の薬剤師が転職を考えるおもな理由

1年目薬剤師の転職は避けるべきとはされているものの、それでも転職したいと考える薬剤師はたくさんいます。

続いては、1年目の薬剤師が転職を考えるおもな理由を紹介します。

人間関係のトラブル

短期離職を考えるきっかけとなりやすいのが、職場の薬剤師や事務員との人間関係のトラブルです。

特に、小規模の病院や薬局では、狭い空間で固定されたメンバーと毎日を過ごす環境のことが多く、ちょっとした言動や態度をきっかけに人間関係が悪化してしまうこともあります。勤務する人の年代や性別に偏りがあって輪に入りづらかったり、理不尽ないじめがあったりする場合、転職して雰囲気の悪い職場から離れたいと感じることもあるかもしれません。

また、薬剤師にはサービス業としての側面もあるため、患者やその家族などとのトラブルも絶えません。強い口調で理不尽な主張をしてくる「クレーマー」を抱えている職場は非常にストレスのたまる環境のため、転職したいと考える人も少なくありません。

労働環境が厳し過ぎる

人間関係は良好でも、働く環境の厳しさから転職を考える人もいます。

国主導で行われている医療費削減の影響もあり、薬剤師業界は非常に不景気です。人件費を削減するため、今までと同じ仕事をより少ない人数でまわさなければいけない職場もあるかもしれません。また、残業が多い、サービス残業を強いられる、休憩時間がほとんどない、有休をとれないなど、労働環境の悪い職場も一部存在します。

ほかには、休日や夜間にも対応が求められる職場では、シフトが不規則になるため体力的な厳しさを感じる人もいます。とくに、大規模なチェーン薬局やドラッグストアでは異動が頻繁にあることが多く、通勤に時間がかかる遠方に配属されると、労働環境が一気に悪化してしまうこともあります。

給料に対する不満

薬剤師の仕事は、職種によって給料が大きく異なります。そのため、他職種に就職した同級生の話などから自分の給料の少なさに気づき、「転職して給料を上げたい」と考える人も出てきます。

また、薬局やドラッグストアでは昇給幅が小さく抑えられているため、初任給は高いものの、給料が上がりにくい傾向にあります。このような環境では、同じ会社の先輩の収入を聞いて、長く働き続けることに不安を感じてしまうケースもあります。

教育体制が整っていない

とくに中小の薬局や病院では、きちんとした教育体制が整っていないこともあります。

教育担当者がいない場合、先輩から必要な教育やフォローが受けられず、疑問や失敗を1人で抱え込み、悩んでしまうケースも少なくありません。また、人手不足の会社では入社後すぐに1人薬剤師として勤務させられてしまうこともあるかもしれません。なじみのない環境でマニュアルだけを渡され、いきなり重い責任を負わされるといった環境では、不安が強いだけではなく、薬剤師としてのスキルアップにも限界があります。

このような環境を問題視し、転職を決意する薬剤師もいます。

ライフスタイルの変化

ライフスタイルの変化に合わせて勤務地や勤務形態を柔軟に変更できるのが、資格職である薬剤師の大きなメリットとされています。

とくに女性の場合、結婚や妊娠、パートナーの転勤など、不可抗力で転職しなければならない状況も多々あります。そういったシチュエーションに置かれた場合、たとえ1年目だとしても、転職を決意せざるを得ない状況もがあるかもしれません。

1年目の薬剤師の転職で採用側の理解を得られやすいケース

採用側から厳しい目を向けられることが多い1年目薬剤師の転職ですが、転職理由によっては理解が得られやすいケースもあります。

就職先企業に原因がある場合

業績の悪化にともなう事業縮小が行われると、リストラが宣告されたり、勤務条件が著しく悪化したりすることがあります。また、とくに薬局やドラッグストア業界では、M&Aによる業界再編が活発化しています。M&Aによる経営方針や昇給システムの変更、引っ越しをともなう異動などが原因で転職を検討している場合、薬剤師には何の落ち度もないのは明らかです。

このようなケースでは、就職先企業に原因があるとして、選考の際に配慮されることがあります。

パートナーの転勤や親の介護

パートナーの転勤や親の介護も、自分ではコントロールできないやむを得ない事情として受け入れてもらいやすい傾向にあります。ただ、短期間で次の転勤が控えており長期的な勤務が見込めない場合などは、採用を敬遠されてしまうこともあります。転職活動の際には、働ける期間や時間、条件などをしっかりと説明することが大切です。

健康上の問題

体調不良や病気による休職や退職からの転職についても、理解を得やすい傾向にあります。

ただし、体調が万全でないにもかかわらず無理して転職し、転職先でも体調を崩してしまっては本末転倒です。ゆっくり休んで体調が十分に回復し、業務に支障がない状態になってから転職活動をするのが大前提となります。

ハラスメントによる離職

いじめやハラスメントが原因で転職を考えている場合は、薬剤師個人ではなく職場の方に問題があると判断され、配慮してもらいやすい傾向にあります。例えば、転職活動の際に職場の過去の離職率を示すと、「個人に問題があるわけではない」ということをより理解してもらいやすいかもしれません。

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1年目の薬剤師が転職前に考えるべきこと

1年目の転職は、失敗のリスクと隣り合わせです。現状から逃げるためだけにやみくもに転職活動をするのではなく、自分の置かれている状況について改めて振り返り、最善策を見つけ出すことが重要です。

ここからは、1年目の薬剤師が転職前に考えるべきことについて確認しておきましょう。

転職せずに問題を解決できないのか

若手薬剤師の転職活動では、1年目より2年目、2年目よりも3年目と、経験を積むに従って成功率が上がるのが一般的です。そのため、転職せずに問題を解決できる方法があるのであれば、いまの職場でもう少し頑張ってみるのがベストです。

たとえば、人間関係や勤務地などが問題の場合は、異動を打診することで解決できる場合があります。いじめやハラスメントなど自分に非がない問題については、上司や担当部署に訴える、教育担当者と合わない場合は担当の変更を希望するのもひとつの方法です。また、雑用が多い、覚えることが多すぎるといった「新卒ならではの悩み」については、次年度以降徐々に解消される可能性もあります。

転職が問題解決につながるのか

人間関係のトラブルやスキル不足など、職場ではなく自分自身に問題が生じているようなケースでは、たとえ転職したとしても再度同じことで悩んでしまう可能性があります。このような場合、いま抱えている問題が転職によって本当に解決できるかどうかを見極めなければ、短期間で転職を繰り返すことにもなりかねません。

自分の将来にプラスになる選択か

「スキルアップを叶えたい」「給与アップを目指したい」など、逃げではなく前向きな目的がある転職なら、将来にプラスになる可能性が大きいとされます。

また、「OTCより調剤が向いているのに気づいた」「M&Aで経営体制が変わってしまった」など、職場とのミスマッチが原因で将来的にマイナスになると思われるケースでは、早めに転職して軌道修正するほうが良いかもしれません。

「自分の将来にプラスになる選択か」という考え方で、転職すべきかを検討しましょう。

まとめ

たとえ新卒1年目だとしても、職場に不満を持つことや転職を考えることは決して珍しいことではありません。

経験やスキルが不十分かつ採用側に対して短期離職の懸念を与えてしまう1年目の薬剤師は、通常よりも転職のハードルが高いとされています。しかし、現職ではどうやっても改善できない問題を抱えていたり、やむを得ない事情があったりする場合は転職もひとつの選択肢となります。

1年目の薬剤師が転職する場合、短期離職せざるを得ない事情をどのように採用側に伝えるかによって、転職の成功率が大きく変わってきます。1人で転職活動を進めるのが不安なときは、マイナスイメージを払拭させるための知識と経験を持った転職エージェントのサポートを受けてみるのもよいかもしれません。

 

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