一般的に、年齢が上がるにつれて転職は難しくなると言われています。しかし、薬剤師の場合は経験年数を武器に、転職が有利になることも少なくありません。今回は、年齢別の薬剤師の転職事情を解説します。
薬剤師の転職に年齢制限はあるのか
あQ
厚生労働省の令和2年雇用動向調査結果の概況(年齢別入職率)によると、全年齢に一定数の入職者が存在します。
区分/年齢 | 30〜34歳 | 35〜39歳 | 40〜44歳 | 45〜49歳 | 50〜54歳 | 55〜59歳 | 60〜64歳 | 65歳以上 |
男性 | 11.1 | 7.6 | 6.2 | 5.2 | 4.2 | 5.0 | 11.9 | 10.2 |
女性 | 10.0 | 10.6 | 11.0 | 9.0 | 8.5 | 7.8 | 7.0 | 4.5 |
企業や病院のほとんどが定年を設けていますが、薬剤師の定年は断定されていません。
いまや、ライフイベントやライフプランに合わせて転職するのは当たり前の時代になっています。ミドル以降の世代であっても、自分にあった職場を見つけられれば転職の可能性は高まります。
出典:「令和2年雇用動向調査結果の概況(年齢別入職率)」(厚生労働省)
薬剤師は年齢よりも経験が重視される?
一般的には、転職は若いほうが有利と言われています。その理由として、長期的なキャリア形成が見込めるためです。
しかし、薬剤師の転職においては、即戦力となる実務経験者が重宝されます。また、管理薬剤師や薬局長といったポジションの採用の場合は、年齢よりも経験値が重要視される傾向にあります。
さらにいま高齢化社会の影響により、薬剤師の需要は高まっています。『医薬品医療機器制度部会』のデータによると、薬局数の増加とともに薬剤師の数も増えているのが事実です。
特に在宅医療の現場でのニーズが高まっており、転職先の候補を増やしたいとお考えの方は、経験を積んでおくことをおすすめします。
出典:「薬局・薬剤師のあり方、医薬品の安全な入手」(医薬品医療機器制度部会)
【薬剤師転職】年齢別の難易度とおすすめの職場を紹介
薬剤師の転職では経験が重視される傾向がありますが、年齢を重ねると採用基準が厳しくなる企業もあるため、自分がどのような職場へ転職しやすいのか知っておくことが大切です。ここでは、薬剤師の年代別転職難易度と、おすすめの職場を紹介します。
30代の転職
ここでは30代の転職の難易度とおすすめの職場を紹介します。
難易度
30代の薬剤師は即戦力として重宝されます。一定の経験を重ね、体力的にも充実した年代であるため、採用難易度は低いといえるでしょう。基本的には病院、調剤薬局、企業など、幅広い選択肢のなかから職場を選べます。転職を機に、管理薬剤師へキャリアアップを目指す方も多くいます。
管理薬剤師になれば年収アップにも期待できます。ただし、30代後半になると製薬会社のような企業薬剤師への転職は難しくなるでしょう。
採用されやすい職場
30代であれば、基本的にどの職場でも転職可能です。急性期病院や臨床開発モニターなど、年齢が上がると転職が難しい職場にもチャレンジできます。年齢が若い30代のうちに、さまざまな経験を積むと良いでしょう。
40代の転職
ここでは40代の転職の難易度とおすすめの職場を紹介します。
難易度
40代になると、一般的な職種であれば転職はかなり難しくなります。特に未経験の業種への転職はかなり厳しい年代です。
しかし、薬剤師の場合は、そこまで転職の難易度は高くありません。30代よりも転職の難易度が高いのは間違いありませんが、豊富な経験や専門性をアピールできれば、高待遇での転職にも期待できます。
特に、管理薬剤師としての店舗運営能力やマネジメントスキルが高ければ有利に働きやすくなります。とはいえ、転職を考えている場合は、50代に近づく前に早めに行ったほうが良いでしょう。
採用されやすい業種
経験のある業種や人手不足の業種は転職しやすいでしょう。なかでも、ドラッグストアや調剤薬局、病院は転職しやすい業種です。ドラッグストアは出店数が多いわりに、薬剤師の数が追いついていません。さらに昨今では、地方の病院薬剤師不足も問題視されています。
ただし、薬局での調剤経験や在宅医療の経験が評価されることも多く、病院経験がない方にもチャンスがあるのが特徴です。
50代の転職
ここでは50代の転職の難易度とおすすめの職場を紹介します。
難易度
50代になると、薬剤師の転職難易度も一気に上がります。未経験の職場となると、採用される可能性が大幅に低くなります。
薬剤師としてのこれまでの経験が活かせる職場を探すのがポイントです。時間が経つごとに転職の難易度は高くなるため、転職を考えている場合は早めに行動しましょう。
採用されやすい職場
ドラッグストアや調剤薬局であれば、50代以降であっても採用しているケースがあります。しかし、都市部のような薬剤師の数が充足しているところでは、転職が難しい可能性もあるため注意が必要です。
ドラッグストアや調剤薬局であっても、人件費を抑えられる若手世代が優先的に採用されやすいため、根気よく転職活動を進める必要があります。
60代の転職
ここでは60代の転職難易度とおすすめの職場を紹介します。
難易度
60歳を超えると、一般的には定年退職となる世代のため、転職のハードルは極めて高くなります。薬剤師であっても、定年後の再就職は狭き門となるでしょう。
そもそも60歳を超えた世代を採用している企業は少なく、正社員での入社は極めて困難です。ただ地域差が激しいため、薬剤師不足が課題となっているエリアも視野に入れてみると可能性は広がります。
採用されやすい職場
地方の中小企業であれば、60代でも採用される確率はゼロではありません。ただ、正社員として雇用される可能性は低く、パートタイムや嘱託職員としての転職も検討する必要があります。
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ベテラン世代の薬剤師でも、ポイントを押さえて転職活動すれば転職は有利になります。ここで、紹介する3つのアピールポイントをチェックしておきましょう。
豊富な知識と経験
年齢を重ねると体力は衰えてきます。しかし、これまでのキャリアによる豊富な知識と経験を面接でアピールできれば、即戦力として採用される可能性があります。
在宅医療や管理薬剤師の経験のほか、認定・専門薬剤師といった資格があれば、積極的にアピールしましょう。そしてこれまで薬剤師として働いた職場でどのように活躍してきたか、何を意識して働いたかも伝えることが大切です。
また最新機器やPCでの作業のほか、未経験の業務にも積極的に取り組む姿勢があることを伝えると、さらに好印象になるでしょう。
誰に対しても謙虚な姿勢
薬剤師はひとりで仕事をこなすだけではなく、チームで協力する仕事もあります。また職場によっては患者だけでなく、医師など他職種のスタッフと接する機会もあるでしょう。そのため、協調性やコミュニケーション能力が求められます。
調剤薬局の場合、早くて20代後半で管理薬剤師を任されるケースもあります。企業は協調性や現場スタッフとのバランスを重視するため、誰に対しても謙虚で学ぶ姿勢があることが求められるでしょう。採用面接では、チームで協力して仕事を行えることをアピールすることが大切です。
教育を積極的に行う姿勢
若手世代の薬剤師は、採用薬以外の薬の知識やマニュアルにない服薬指導など、経験していないことが多くあります。自身の専門性やこれまでの経験を活かし、若手育成の力になれることを伝えるのもひとつの手です。
これまでの指導経験やかかりつけ薬剤師経験のほか、実務実習指導薬剤師の資格があればアピールしましょう。また企業側がイメージしやすいよう、前職で若手を育成したエピソードを具体的に伝えることが大切です。
転職するタイミングでお悩みの方は、薬剤師専門の転職エージェントを利用しましょう。ヤクジョブは業界最多級の求人を扱う転職サポートサービスです。業界に精通したコーディネーターによる転職のサポートが受けられるため、ぜひご利用ください。
まとめ
薬剤師の定年は定まっていないものの、年齢を重ねると転職は難しくなります。特に、50代以降になると転職のハードルが一気に上がるため、転職を考えている方はできる限り早めに行動することをおすすめします。この記事で紹介したポイントを押さえ、転職活動をしてみてください。