薬剤師は、比較的転職しやすい仕事だといわれています。とはいえ、すべての薬剤師がスムーズに転職できるとは限りません。転職できない理由を明らかにして、転職の成功を目指しましょう。
今回は、薬剤師がスムーズに転職できない理由や転職の成功率を高める方法、転職活動をするときの注意点をご紹介します。
薬剤師がスムーズに転職できない5つの原因は?
薬剤師は、比較的転職しやすいといわれていますが、自分に合う仕事が見つからず、応募しても内定につながらないこともあるため、対策が必要です。
まずは、薬剤師がスムーズに転職できない主な理由から見ていきましょう。
これまでの転職回数が多い
年齢の割に転職回数が多い薬剤師は、採用されにくい傾向にあります。特にひとつの求人に対する応募者が多いと、転職回数が少ない人の方が優先されがちです。
短期間で転職を繰り返している人は、採用担当者に対して「すぐに辞めてしまうのではないか」という印象を与えてしまいます。転職理由は面接で必ず聞かれるため、転職する目的をしっかりと説明したうえで、意欲をアピールしましょう。
年齢がネックになっている
年齢を重ねるほど、転職難易度は上がります。薬剤師だけでなく、どの業界においてもできるだけ長く働いてくれる若い人材の方がニーズは高いのです。
企業がベテラン層に期待するのは、年齢相応のスキルや経験です。スキルや経験が同じ場合、より若い人材が有利になるため、未経験・異業種への転職はハードルが高いと考えましょう。
高すぎる条件を設定している
転職先に求める条件が高すぎると、自分の希望に合う求人が見つからないことがあります。たとえば、新卒の薬剤師が管理薬剤師と同じ年収レベルを求めるのは難しいです。
自分の市場価値を正しく理解しなければ、転職活動が長引きやすくなります。内定がなかなかもらえない場合は、給料や勤務時間、残業の有無、福利厚生といった希望条件の基準を緩和できないか見直してみましょう。
応募する求人の人気度が高い
人気の高い求人にばかり応募しているのも、転職がうまくいかない理由のひとつかもしれません。人気の求人には多くの求職者が殺到するため、なかなか内定には至りません。
人材不足の業界といえども、人気の求人で内定を勝ち取るのは難しいものです。自分のもつ経験やスキルが他の応募者と比べて重宝されるものか、冷静に判断しましょう。
コミュニケーション力が乏しい
患者さんへの服薬指導や医師・看護師との連携など、薬剤師の業務にはコミュニケーション能力が不可欠です。
そのため、受け答えが上手にできなければ、面接時の評価が下がることがあります。面接では、話し方や態度など、コミュニケーション能力をチェックされているので注意しましょう。
薬剤師が転職で後悔した事例とは?
ここでは、薬剤師が転職で後悔した事例を紹介します。先輩の失敗談で学んでおくと、あらかじめ対策することができます。
転職してから労働条件が悪くなった
転職してから、労働条件が悪くなった事例としては、次のようなものがあります。
● 前職は給料が高くなかったが、残業時間が少なくてそこまで不満はなかった。 収入を上げたくて転職したが、事前に聞いていたより残業時間が多く自分の時間がほとんど取れなくなった。転職しない方が良かったと後悔している。
● 転職して年収は上がったが、残業が多すぎる。時給計算すると、前の職場のほうが高かった。給料だけでなく働き方とのバランスも考えればよかった。
● 前職では管理職として部下の教育などをしており、転職しても同じようなポジションで働けると思っていたが、転職先の平均年齢が予想より高かった。自分が現場では一番下になり、働き方が大きく変わってしまった。
条件が悪くなったという場合、収入のみを重視していた傾向が強いようです。 現状の条件よりも良い企業を求めた結果、条件が悪化した薬剤師も少なくありません。転職理由が条件面の場合、本当に今よりも良くなるのか再考した方が良いでしょう。
仕事内容がイメージと違った
仕事内容がイメージと違った事例としては、次のようなものがあります。
● 調剤薬局で勤務後、ドラッグストアに転職して、OTC知識を身につけ、健康管理のできる薬剤師を目指していた。しかし、転職したドラッグストアでは、OTC製品の研修がまったくなく、独学で学ぶ必要があった。さらに品出しなどの通常業務に追われて、結局OTCの勉強は今もできていない。
● 大学で勉強したことを活かしたいという思いから、調剤薬局から製薬会社のDI業務に転職した。入社前は自分の知識を活かせる仕事だと思っていたが、実際は主な仕事がマニュアル通りに問い合わせに対応することでした。最先端の薬の勉強ができると思って転職したが、クレーム対応なども多く、自分の想像とは違っていた。
事前に転職先の業務内容を把握していないと、入社した後で、仕事に楽しさややりがいを見いだせず後悔する場合も多いようです。転職先を検討する際は、 求人票や募集要項などを注意深く読んで、疑問点をはっきりさせてから入職するようにしましょう。
転職先を決める前に辞めてしまった
転職先を決める前に辞めてしまった事例としては、次のようなものがあります。
● 他の企業で薬剤師として働きたかったので、転職を検討し始めた。転職先は他にいくらでもあると考え、先に辞めてしまったが、なかなか良いところが見つからなくて、転職期間は数か月ほどに及んだ。
● 次の転職先を決めてから仕事を辞めるべきだった。すぐにでも今の仕事を離れたくて退職をしたが、なかなか決まらず、金銭的にも不安が大きかった。金銭面は失業手当でどうにかなったが、スケジュールは失敗だったと思っている。
転職先はすぐ見つかると思い退職したけれど、実際はなかなか見つからなかったという声も多くあがっています。
薬剤師資格は取得の難易度が高いので、ブランクがあっても再就職しやすく、転職しやすいといわれています。そんな薬剤師ですが、すぐに希望通りの求人に出会えるとは限りません。条件の良い職場は倍率が高いことも考慮し、内定をもらってから退職する方が得策でしょう。
薬剤師がうまく転職するために実践したい5つのポイント!
それでは、薬剤師の転職を成功させるポイントを具体的に見ていきましょう。
薬剤師は転職しやすいとされていますが、繰り返し職を変えるとキャリアに傷がつく可能性は否定できません。自分に合った、やりがいのある仕事を探しましょう。
1.希望条件を明確にして優先順位をつける
転職先選びでは、現状の課題を解決するために希望条件を厳選する必要があります。給料、雇用形態、勤務地など考慮すべき条件は多くあります。優先順位をつけて考えましょう。
まず、転職の目的を考えたうえで、どうしても譲れない条件を明確にします。自分軸をもてば複数の求人があっても迷うことなく、希望に合う職場を選びやすくなります。
2.ライフプランを見据えて転職先を選ぶ
仕事は生活に直結します。自分のライフプランを見据えて、長く働ける転職先を選びましょう。
長い人生では、結婚や出産、子どもの独立、両親の介護といったさまざまなライフステージの変化があります。たとえば、子どもが小さいうちはフルタイムで働くのが難しいため、働き方を変える必要も出てきます。
それぞれのライフステージでの生活を考慮したうえで、雇用形態、勤務時間、給与額といった求人情報を吟味しましょう。
3.十分に情報収集する
焦って転職先を決めるとミスマッチが起きやすいため、企業研究や情報収集は大切です。具体的な仕事内容、有給休暇の取得状況、教育体制など、できるだけ多くの情報を集めて検討しましょう。
特に前の職場に不満があって転職を目指す場合は、新しい職場でも同じ問題が起きないか、チェックする必要があります。
4.職場見学をする
職場の雰囲気や人間関係は求人票ではわからないため、職場見学をしておくと良いでしょう。職場の雰囲気が合うかどうかは、働きやすさに直結する重要なポイントです。
実際の仕事内容や働いているスタッフの様子をチェックして、自分との相性を見極めましょう。職場見学が難しい場合は、患者として訪れてみるのもおすすめです。
転職できない薬剤師は市場価値を高めよう!スキルアップの方法は?
転職がうまくいかない場合は、自分の市場価値を高めることが大切です。スキルアップにはいくつかの方法があるため、希望する職場で役立てるよう取り組みましょう。
資格を取得する
薬剤師としてスキルアップをするなら、資格の取得が必要不可欠です。より高度な資格を取得すれば、自分自身の市場価値を高められるでしょう。おすすめの資格は以下のとおりです。
● 外来がん治療専門薬剤師
2021年5月に新設された、専門薬剤師資格です。外来がん治療専門薬剤師は、外来や在宅で治療を受けるがん患者の方や、ご家族に対して、ほかの医療機関と連携しながら治療に関する指導やカウンセリングを提供することができます。外来がん治療における専門性が求められるため、取得後は勤務先の選択肢が広がります。
● ケアマネジャー
正式には、「介護支援専門員」と呼ばれる国家資格です。ケアプランの作成、要介護認定、給付管理業務といった、介護保険制度に基づくケアマネジメント業務に欠かせない資格です。
ケアマネジャーの資格は介護に関連する施設や事業所で幅広く必要とされます。在宅医療の経験にプラスできると、自分の付加価値を高められます。
● 認定実務実習指導薬剤師
指導公益社団法人日本薬剤師研修センター(JPEC)による認定資格です。資格を取得すると、薬学生が医療現場で実務実習をする際の指導者として活躍できます。
薬学部の実習生を受け入れる職場では欠かせない資格なので、転職活動で強みになるでしょう。資格の取得条件は以下のとおりです。
● 基本的素養を有している
● 認定実務実習指導薬剤師養成研修を修了している
● 直近1年以上、継続的に病院または薬局で実務に従事している(勤務時間数が1週間当たり3日以上かつ20時間以上)
● 緩和薬物治療認定薬剤師
薬物医療による緩和ケアの専門的な知識を有するという認定が受けられます。がん治療の薬物療法を採用している医療機関でのニーズが高い資格です。在宅医療を受ける患者さんが増えるなか、緩和ケアに精通した薬剤師は今後も需要が高まっていくでしょう。
管理職を経験する
管理職を積極的に経験するのも、薬剤師としてのスキルアップに効果的です。管理薬剤師など現場経験があれば、企業が必要とするマネジメント力が身につくため、転職でも有利に働くでしょう。
たとえ資格を取得していなくても、部下の指導などの経験を通して自分自身の市場価値を高めることができ、おすすめです。
まとめ
薬剤師は、地域によっては人材不足が続いているので、転職に成功するチャンスは十分にあります。転職ができないと悩む前に、スキルを高めて自分の強みを増やしましょう。薬膳講座の受講もおすすめです。
転職の成功には情報収集をしっかりと行い、自分に合った仕事を見つけることも重要です。転職エージェントへの相談をきっかけにして、スムーズな転職を目指しましょう。