ドラッグストアは業績好調で給料が比較的高い職場のため、薬剤師に人気の就職先です。しかし、「ドラッグストアから転職したい」と考える薬剤師も実は少なくありません。
薬剤師が転職することは珍しくないのですが、転職理由を明確にしないまま次の職場を選んでしまうと、失敗するリスクが高まります。
そこで今回は、薬剤師がドラッグストアから転職したいと思う理由を深掘りしながら、どこに転職すればどのような悩みを解決できるのかについて詳しく見ていきましょう。
薬剤師がドラッグストアから転職したいと考える理由
ドラッグストアで働く薬剤師は、なぜ転職をしたいと考えるようになるのでしょうか。主な理由をここでは7つ紹介します。
残業が多い
正社員として働いていると、残業の多さに悩まされることもあるでしょう。残業ありきでシフトが組まれていることがあり、毎日のように何時間も残って仕事をしていると、プライベートの時間を確保することはできません。
大手のドラッグストアではママ薬剤師向けに時短勤務を充実させているところが多いですが、その一方で別の薬剤師に負担がのしかかりやすいという側面もあります。
休みが思うように取れない
ドラッグストアは基本的に年中無休のため、土日でも祝日でも関係なく出勤になります。平日が休みになることが多く、家族と休日のタイミングが合わずにすれ違ったり、友人となかなか会えなかったりすることに悩む薬剤師も多いものです。
とくに調剤併設店で一人薬剤師をしている場合は、店舗を任されている責任が重いうえ、休みの融通がききづらい傾向にあります。
シフトが不規則
ドラッグストアのシフトは基本的に不規則です。近頃では早朝から夜遅くまで営業している店舗が増えており、早番と遅番とで勤務時間が大きく異なります。たとえば、早番だと8時から出勤、遅番だと14時から出勤ということもあるのです。
遅番の翌日に早番を組まれ、睡眠時間を十分に確保できないこともあります。勤務時間が不規則なため、生活リズムが乱れて体調を崩してしまう薬剤師もいるでしょう。
キャリアに対する不安
調剤専門で勤務している場合は薬剤師の知識や技術を磨くことができますが、OTC専門店で働いている場合は、薬剤師の職能とは関係のない業務が一日のほとんどを占めます。なかでもよくあるのが、レジ業務や品出しです。
薬剤師の職能を発揮する機会が少ないと、将来に対して不安になったり業務への物足りなさを感じたりすることがあります。
売上や利益を意識しなくてはならない
ドラッグストアは小売業のため、売上や利益を意識して業務を行わなければなりません。
「患者のためではなく、売上や利益のために働くのがツラい」と感じ、転職を考えることもあるでしょう。薬剤師としての知識やスキルよりも、店舗の売上や利益をいかに確保するのかを求められることが多いのです。
体力的にツラい
「体力的にツラい」「こんなきつい仕事を定年まで続けられる気がしない」と思ってしまうことが、ドラッグストアではよくあります。立ち仕事なので、休憩時間以外は座る時間がほとんどありません。
ペットボトルのケースや、重い医薬品がいくつも入った折りたたみコンテナを運ぶときに、腰を痛めてしまうこともあります。品出しなど力仕事もあるため、ドラッグストアの仕事は想像以上に体力面でツラいのです。
人間関係のストレス
調剤併設店やOTC専門店には、薬剤師以外にもパートや学生アルバイト、店長などさまざまな立場のスタッフがいます。年齢層も幅広く、10代の方もいれば定年間際の方もいるため、人間関係でストレスを感じることもあるでしょう。
薬剤師同士でコミュニケーションを取る場合とは、異なる配慮が求められます。薬剤師としての意見を伝えても理解してもらえないことがあり、自分の思いが伝わらないことにモヤモヤしてしまう場合もあります。
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ドラッグストア薬剤師におすすめの転職先:調剤薬局
それでは、ドラッグストア薬剤師におすすめの転職先を紹介します。まずは多くの方に人気のある調剤薬局について詳しく見ていきましょう。
業務内容
調剤薬局の主な業務内容は、次のとおりです。
・調剤
・服薬指導
・薬歴管理
・在宅業務
医師が発行した処方箋に疑義がないかを確認し、調剤を行います。薬の準備ができたら服薬指導です。患者の悩みや症状を聞き出しながら行います。薬歴は次回の服薬指導を行う際の重要な資料となるため、誰が読んでも内容がわかるように書く必要があります。
近頃では、在宅医療に力を入れる調剤薬局も増えてきました。患者の自宅や施設まで行き、服薬指導や残薬調整などを行います。
悩みの解決につながるポイント
調剤薬局は、ドラッグストアと比べると休日が固定のためシフトが安定していることが魅力です。薬剤師としての職能を発揮しやすく、やりがいも感じられます。納品業務はありますが、ドラッグストアほどの力仕事はほとんどありません。
売上や利益を大きく気にする必要がないため、患者本位の業務を行えます。また、コミュニケーションを取る相手は基本的に薬剤師や調剤薬局事務のため、思いや意見が伝わらないことに悩むケースも減るでしょう。
おすすめのタイプ
調剤薬局は、次のような方におすすめです。
- しっかり休みを取りたい方
- 家族や友人と過ごす時間を大切にしたい方
- 早朝や深夜の仕事を避けたい方
- 薬剤師としての職能を発揮しながら働きたい方
- キャリアアップをしたい方
- 売上や利益を気にせず患者のために働きたい方
とくに休日数を重視する方、家族や友人との時間を大切にしたい方に向いています。調剤薬局は休みの日が固定になることが多く、家族や友人と出かける予定も立てやすいでしょう。
ドラッグストア薬剤師におすすめの転職先:病院
病院は、薬剤師として成長していきたい方、職能を発揮したい方にぴったりの職場です。ドラッグストアから病院に転職する薬剤師も珍しくありません。
業務内容
病院での業務内容は、主に次のようなものがあります。
・調剤
・服薬指導
・薬歴管理
・病棟業務
・治験業務
調剤や服薬指導、薬歴管理などは調剤薬局で行うものと同じです。しかし、病院では外来患者だけでなく入院患者の対応も行う必要があります。カルテを見ながら服薬指導ができるため、より細やかなケアが可能です。
病棟業務では、入院患者の病室で服薬状況をヒアリングしたり、副作用が出ていないかをチェックしたりします。病院によっては、治験業務に関わることもできるでしょう。
悩みの解決につながるポイント
病院ではさまざまな医療スタッフと手を組みながら、チーム医療を行っていきます。そのため、薬剤師としての知識を十分に発揮できることが大きな魅力です。
また、働きながら最先端の医療に触れたり、ほかのスタッフと会話したりすることで知識をどんどん吸収できます。病院で売上や粗利を気にする必要はまずありません。患者のことだけを考えながら、薬剤師として大きく成長できる職場です。
おすすめのタイプ
病院は次のような方におすすめです。
- 薬剤師としての職能を十分に発揮したい方
- 知識を吸収しながら成長していきたい方
- キャリアアップを目指したい方
- 売上や粗利を気にせず患者のために働きたい方
- チーム医療の一員として医療に関わりたい方
薬剤師として成長したい、さまざまな知識を身につけたいという方に病院は向いています。チーム医療の一員として働けるため、最先端の医療に触れながら多職種の方と連携して仕事ができるのです。
ドラッグストア薬剤師におすすめの転職先:ほかのドラッグストア
ドラッグストアから、ほかのドラッグストアへと転職する方も少なくありません。同じドラッグストアでも、どこの企業に所属するのかによって働きやすさは大きく変わります。
業務内容
基本的な業務内容は、どのドラッグストアでも大きく変わることはありません。
・OTC医薬品の販売
・健康相談
・レジ打ち
・品出し
・POP作り
・棚替え
・調剤業務
・発注業務
これらの業務を行うことが一般的でしょう。調剤併設店の場合は、通常の薬局と変わらず調剤業務だけを行う店舗もあります。
どの業務にどれだけの比重を置くのかは、店舗によりけりです。一日のほとんどをレジ業務で終える店舗もあれば、満遍なくいろいろな業務を行う店舗もあります。
悩みの解決につながるポイント
新しいドラッグストアに転職することにより、人間関係を一新できるのがメリットです。一から人間関係を築いていくため、これまで感じていた煩わしさや不満などを解決できる可能性があります。
また、業務内容を覚え直す必要がないのもポイントです。これまでに培ってきた強化品の販売ノウハウや魅せる売り場の作り方、患者やスタッフとのコミュニケーションの取り方などのスキルも活かせます。
おすすめのタイプ
新しいドラッグストアへの転職は、次のような方におすすめです。
- ドラッグストアで働くこと自体が好きな方
- 現在の人間関係に悩んでいる方
- 今までのキャリアを無駄にしたくない方
ドラッグストアは企業によって、また店舗によって働きやすさが大きく変わります。働く環境を変えることで、今まで感じていた悩みを解決できることもあるでしょう。
そのため、「ドラッグストアで働くのは好きだけど、働き方や人間関係に不満がある」という方に向いています。今までのキャリアを無駄にせず活かしたい方にもぴったりです。
ドラッグストア薬剤師におすすめの転職先:OTCメーカーの学術職
ドラッグストアからの転職先として、OTCメーカーの学術職を選ぶ方法もあります。
業務内容
主な業務内容は、次のとおりです。
・自社製品の情報管理
・MRの営業サポート
・勉強会の開催
・パンフレットの作成
学術職では、自社製品だけでなく競合商品の情報も収集して管理し、わかりやすくまとめて管理を行います。MRに対して勉強会を開くこともあるため、製品知識をしっかり習得しておくことが大切です。
また、自身で勉強会を開くこともあります。医薬品の取り扱いや販売強化に関するパンフレット作成を行うため、文章力やわかりやすく伝える力が必要です。
悩みの解決につながるポイント
OTCメーカーの学術職は、休日が固定されているのでシフトが安定しています。また、長期休暇の取得も可能です。いつも決まった日に休めるため、家族や友人との時間も作りやすいでしょう。
勉強会を開いたり情報収集をしたりすることにより、薬剤師としての職能もしっかり発揮できます。力仕事は基本的にありません。何歳になっても無理せずに長く続けやすい仕事だと言えます。
おすすめのタイプ
OTCメーカーの学術職への転職は、次のような方におすすめです。
- 固定で休みを確保したい方
- 家族や友人との時間を大切にしたい方
- 早朝や深夜の仕事を避けたい方
- 薬剤師としての職能を活かしたい方
- キャリアアップをしたい方
- 体力仕事をできるだけ避けたい方
基本はカレンダー通りに休めるため、土日祝日は休みになります。そのため、家族や友人との時間も取りやすく、ワークライフバランスが整った日々を送ることができるでしょう。力仕事はなく、早朝や深夜の勤務もありません。
ドラッグストアから転職する際の注意点
転職が成功すれば充実した毎日を手に入れられますが、失敗すれば「前職のほうがよかった」と後悔するケースもあります。失敗しないためにも、次の注意点は押さえておきましょう。
収入が減る場合がある
ドラッグストアは、調剤薬局や病院などと比べると収入が高いことがほとんどです。そのため、転職によって収入が下がってしまう可能性があります。
収入が下がるのを避けたい方は、転職エージェントを利用して労働条件の交渉を行ってもらうとよいでしょう。転職エージェントを通すことで、より希望に沿った内容で契約できることがあります。
かえって休みが取りにくくなる場合がある
転職先を間違えると、かえって休みが取りにくくなるので要注意です。とくに一人薬剤師の店舗には気をつけましょう。休みが取りづらいのはもちろん、お昼休憩すらまともに取れないケースもあります。
転職していきなり一人薬剤師の店舗を任されることは基本的にありませんが、一人薬剤師の店舗が存在するのかどうかは転職前にぜひ確認しておきたいものです。
人間関係に悩む場合がある
人間関係の良し悪しは、転職して実際に働いてみないとなかなかわかりません。調剤薬局や病院は異動が少ないため、人間関係でいざこざがあっても逃げ道がないことが多いでしょう。
また、調剤薬局や病院は女性が占める割合が高いことから、男性だと馴染みにくいと感じる場合もあります。人間関係が不安な方は、何かあったときに異動希望を出せる大手のチェーン薬局を選ぶのがおすすめです。
まとめ
ドラッグストアから転職したい薬剤師には、調剤薬局や病院、OTCメーカーの学術職などが向いています。これまで働いてきた経験を活かしつつ人間関係を一から構築したい方は、ほかのドラッグストアに転職するのもよいでしょう。
転職後も今の収入を維持したい、どうせなら収入をアップさせたい、人間関係に悩まない職場に転職したいという方は、転職エージェントの利用をおすすめします。転職に関してお悩みがある方は、一度ヤクジョブへ相談してみてはいかがでしょうか。