薬剤師の施設業態でみる働き方病院・クリニックではたらく

病院・クリニックではたらく

さまざまな分野のスペシャリストが集うフィールドで、チーム医療に携われることが病院薬剤師の最も大きな魅力です。医師や看護師などの他職種の方と一丸となり、切磋琢磨しながら同じゴールを目指す中で、薬剤師の存在意義をフルに実感できることでしょう。

病院・クリニックではたらく

医療法において、

病院とは病床数が20床以上を有する医療機関、診療所は19床以下の医療機関と定められています。ただ病院といっても、構造設備・人員配置基準などによって提供している医療や分類も異なってきます。さまざまな機能と病床を組み合わせながら地域のニーズに合わせた診療体制をとっています。

ここでは、提供する医療の内容や病院分類についてご紹介いたします。

1. 医療の種類

病院や診療所・クリニックは、提供する医療の内容によって大きく3つに分類されます。

急性期医療

病気・けがの症状が急激に現れる、病気を発症して間もない時期の治療を担う医療です。発症後およそ14日程度が急性期の目安といわれています。状態が変わりやすく、症状に応じて検査・入院・手術などが必要となります。

救急救命センターをはじめ、症状が安定するまでの短期入院に対応する一般病院・大学病院・総合病院などが主に急性期医療を提供しています。

回復期医療

急性期をすぎ、症状が落ち着いた状態の患者さまに対して、身体機能の回復を図るための医療です。もとの病気や手術などが原因となって引き起こされる二次疾患(合併症)を防ぎながら、良質なリハビリテーションを提供していくことで社会生活への復帰をアシストします。

回復期リハビリテーション病棟や、2014年に新設された「地域包括ケア病棟」を持つ病院が主に回復期医療を提供しています。

慢性期医療
症状が安定しており、再発防止や体力維持のために長期的な治療・療養を必要とする患者さまへの医療です。高齢者を中心とした長期的な入院治療をはじめ、生活習慣病による定期通院治療なども慢性期医療にあたります。地域のクリニックや療養型病床を持つ病院、2018年4月に新設された「介護医療院」などが慢性期医療の担い手と言えます。

2. 病院の種類

病院は、医療法によって3つに分類されています。その中でも更に、提供する医療の内容や患者層によって細かな定義が設けられています。

特定機能病院

高度先端医療行為を必要とする患者に対応できる病院として、厚生労働大臣から承認を受けた病院です。
病床数400床以上を持ち、16以上の診療科を標榜していて、来院患者のうち30%以上が他の病院・クリニックから紹介された患者であることが条件となります。また、一般的な病院設備に加えて、ICU(集中治療室)・無菌病室・医薬品情報管理室を備えている必要があります。

大学病院が主となっており、2019年4月現在、日本全国で86施設が存在しています。入院患者30名に対し薬剤師1名の配置が定められています。

地域医療支援病院

地域の病院・診療所を後方支援する役割を担う医療機関として、都道府県知事の承認を得ている病院です。
病床数200床以上を持ち、救急医療を提供できる病院で、「来院患者のうち80%以上が他の医療機関から紹介された患者であること」もしくは「紹介率40%以上、かつ逆紹介率60%以上」であることが条件となります。他の医療機関に対して医療機器の貸し出しや病床の提供(共同利用)を行うほか、医療従事者への研修を実施することも必要とされます。

国や自治体が開設する病院が中心となっており、2019年4月現在、全国で500施設以上が指定されています。

一般病院

上記①②に該当しない病院を大分類として「一般病院」と称します。標榜診療科・病床数ともに少ない地域病院から、特定の科目に特化した専門的な病院、多くの診療科目に対応する総合病院まで、さまざまな病院がここに該当します。

入院病床にはさらに5つの種別が定められており、薬剤師の人員配置基準もそれぞれ異なります。

  • (1)一般病床主として急性期の入院治療を行う病床です。入院患者70名に対して薬剤師1名の配置が定められています。
  • (2)療養病床主として長期にわたる療養を必要とする患者が入院するための病床です。入院患者150名に対し薬剤師1名の配置が定められています。
  • (3)精神病床精神疾患をもつ患者が入院するための病床です。
    内科・外科・産婦人科・眼科および耳鼻咽喉科を持つ100床以上の病院および大学病院では、入院患者70名に対して薬剤師1名を配置する必要があります。
    その他の病院では、入院患者150名に対して薬剤師1名を配置するよう定められています。
  • (4)感染症病床感染症法に規定する一類・二類感染症、および新感染症の患者が入院するための病床です。(ただし結核の患者を除きます)
    入院患者70名に対して薬剤師1名の配置が定められています。
  • (5)結核病床結核の患者が入院するための病床です。
    こちらも入院患者70名に対して、薬剤師1名の配置が必要です。

3. 就業先を選ぶポイント

病院で働く場合、まずはその専門性の高さと高度な業務内容が魅力のひとつと言えます。医療の現場の最前線に立ち、自らの専門知識を活かして治療にあたれる病院は非常にやりがいのある職場です。当然ながら最新の知識を身につけることもでき、診療科目によっては専門薬剤師の資格を取得することもできます。

ただ、病院の形態によっては、就業時間や休日・身に付けられる知識も異なってきます。例えば、急性期病院の場合、より専門性の高い業務や知識を身につけることができますが、夜勤や休日当番などが発生してきます。反面、療養型病院の場合、時間も17:00まで、残業なしといった場合がありますが、新しい症例や知識に触れる機会は少なくなります。

どういったことを身につけたいかに応じて、就業先の病院を選ぶことが重要です。