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2018年12月21日

【薬剤師関連ニュース】◆フォーミュラリーの運用開始‐PPIなど8薬効群に拡大、公的病院の役割を強く意識◆横浜市立大学病院薬剤部◆(薬事日報 2018年12月21日)

 横浜市立大学病院薬剤部は、今年3月から院内の医薬品使用指針としてフォーミュラリーを導入した。これまで同院は、後発品やバイオシミラーへの切り替えを先駆的に進めてきたが、高額な新薬が相次ぎ登場し、新たな経営改善策としてフォーミュラリーの導入を決断した。約1年かけて院内の合意を取り付け、プロトンポンプ阻害剤(PPI)の注射剤から開始。既に8薬効群で運用を進めているところで、特に経口剤のビスホスホネート製剤は地域フォーミュラリーへの展開を視野に入れた実績作りと位置づける。小池博文副薬剤部長は、「安価な薬を市民に提供していくのは公的病院の役割。価格を意識して、薬剤費の削減額が大きい生活習慣病治療薬にも取り組んでいきたい」と話している。


 同院は、横浜市の公的大学病院として、これまでも薬剤費の削減に積極的に取り組み、後発品やバイオシミラーへの切り替えも先駆的に進めてきた。しかし、高額な新薬の登場やDPC制度の係数見直しにより、新たな経営改善策の一環として使用薬剤の優先順位を設けるフォーミュラリー導入の検討をスタート。最終的に病院執行部のトップ会議で承認を得た。昨年から先行事例を参考に薬剤部で準備を進め、フォーミュラリー作成部会を設置。第1弾としてPPI注射剤を選定し、薬事委員会の承認を得て、今年3月から運用を開始した。
 

 第1弾に選択したPPI注射剤は、既に院内で適切な使い分けが行われていたが、「大幅な処方制限につながるような薬剤では診療科医師の抵抗が大きい」(小池氏)と判断。PPI注射剤のフォーミュラリーとして、第一選択薬に後発品の「オメプラゾール注射用20mg」、第二選択薬に「タケプロン静注用30mg」を選定し、円滑に運用していくきっかけと位置づけた。


 小池氏は「同じような治療効果であれば安価な薬を優先して提供していくのが公的病院の役割だと思う」と強調する。


 5月には、第2弾として超速効型インスリン注射剤のフォーミュラリーを導入。第一選択薬に「ヒューマログ注ミリオペン」を選定した。医薬品情報管理室の川邉桂氏は「4月の薬価改定により、ヒューマログと他の薬剤で1本500円以上の価格差になった。効果に明らかな差があるという論文もなく、デバイス以外に使い分けはないと考えた」と説明する。


 G-CSF製剤にも導入し、第一選択薬にバイオシミラーの「フィルグラスチムBS注シリンジ」、第二選択薬に先発品の「ノイトロジン注」を選定した。小池氏は、「抗癌剤の副作用治療でノイトロジンを使っている整形外科の医師にフォーミュラリーの説明をしたところ、バイオシミラーを採用していることを知らなかった。医師にはMRからの情報が伝わっているので、病院薬剤部から情報提供することが重要」と話す。薬剤師からの説明により、現在は第一選択薬のフィルグラスチムに切り替えが進んでいるという。


 7月にはビスホスホネート製剤の経口剤で開始し、第一選択薬に後発品の「アレンドロン酸錠35mg」を選定した。薬剤費の削減額は大きくないが、ほとんどが院外処方のため、「今後フォーミュラリーを地域に広げていくため内服薬の実績を作っておきたかった」(小池氏)。


 そして10月には、処方量が圧倒的に多いPPI経口剤にフォーミュラリーを導入した。第一選択薬に後発品の「ランソプラゾールOD錠15mg」と「ラベプラゾールNa塩錠10mg」を選定。「オメプラゾール腸溶錠20mg」は併用注意薬剤が多いことから第二選択薬とし、高価な先発品の「タケキャブ錠10mg」「ネキシウムカプセル20mg」も第二選択薬とした。先発品は大学病院として臨床研究に用いることを考慮して選んだが、難治性の逆流性食道炎患者などを除き、第一選択薬の後発品を使うよう推奨している。


 その結果、PPI経口剤は先発品の使用量が2割近く減少しており、少しずつ効果が出てきている。第二選択薬を処方オーダーすると、オーダリング画面で注意喚起が薬価と共に表示されるが、薬価が画面に表示されることによって初めて価格の高さを認識する医師も多いようだ。


 フォーミュラリーの開始以来、約9カ月で8薬効群とハイペースで導入が進んでいるが、小池氏は「PPI経口剤は、順調に第二選択薬の処方量が減っており、このまま維持できれば金額的にもインパクトのある薬剤費削減につながるのではないか」と実感を話す。古川大輔係長も「他の医療スタッフの理解を含めて問題なく取り組めている」と手応えを語る。


 フォーミュラリー導入に当たって最も重要なポイントは何か。小池氏は「医師との合意形成だと思う。処方するのは医師であり、薬剤師が論文を調べて理論だけで押しつけるのではなく、先生方の意見も踏まえて無理のない形で進めていくのが良いのではないか」との考えを示している。


 今後の最大のターゲットは、高血圧、糖尿病、高脂血症の生活習慣病治療薬だ。「公的病院として、幅広く一般的な疾患で処方量が多い薬剤に導入できれば地域へのインパクトも大きい」として、院内で検討を進めているところだ。


 小池氏は「開業医はMRから入ってくる新薬の情報が多く、既存薬との効果や価格の比較はできない。そうした情報提供ができるのは薬剤師だけ」と役割を強調。「院内でも薬剤部から診療科に適切な情報が届いていなかったと思う。メーカーの情報提供は自社製品のことがほとんどであり、そのことも含めて病院薬剤師が頑張らないといけない」とした。


写真:右から小池副薬剤部長、川邉氏、古川氏

 

(薬事日報 2018年12月21日) 薬事日報

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