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2017年08月07日

労災保険の複数職場分給付で兼業者のセーフティーネット強化に

労災保険の複数職場分給付で兼業者のセーフティーネット強化に

 厚生労働省は労働者が仕事中のケガや病気などに対する補償するための労災保険について、今後、複数の企業で得ている賃金に基づいて給付できるように制度を改める考えであることを示しました。改正後は、兼業、副業といった多様な働き方をする人のセーフティーネットがより強化される見込みです。

兼業者が安心して働ける仕組みに

 労災保険とは、労働者が仕事中や通勤途中にケガや病気、障害を負ったり、死亡したりした際に、本人や遺族に保険給付を行う制度です。原則として労働者を雇用するすべての事業所に加入が義務付けられ、保険料は全額を会社が負担します。
 労災保険には従業員の加入要件が設けられていませんので、正社員やパート、臨時雇用など雇用形態に関係なく、会社から賃金を受けるすべての人に労災保険が適用されます。したがって、雇用者として働くすべての人は、万一、働けなくなったときに必要な補償を受けられるのです。
 しかしながら、事故などが発生した時点の職場の賃金をもとに支給額が決まる現在の制度は、とくに複数の職場を掛け持ちして働く人にとって不十分であるとの指摘があります。
 たとえば、A社(月額給与20万円)とB社(同5万円)の2つの職場で働いている人が、B社の仕事中のケガで働けなくなった場合、B社での賃金をもとに労災の支給額が算定されます。実際には、A、B両社の仕事を休むことになるにもかかわらず、一ヵ所分の給付しか受けられないうえ、十分な収入が得られるとはいえないケースも出てくると考えられます。
 そうした事態を解消するために、複数の職場の賃金の合計額に基づいて労災保険の給付額を計算する方法に変更することを盛り込んだ改正は、仕事を掛け持ちしている人にとっては心強いものになりそうです。また、政府が進める『働き方改革』では、個人のスキルアップや人脈の拡大、多様な働き方を実現するためにも、正社員の副業や兼業の普及、拡大をめざす姿勢を示しており、今後、副業や兼業を検討している人を後押しする要素のひとつにもなっていきそうです。

労働者にとっても企業にとっても有用な改正を

 厚生労働省は今後の予定について、労働政策審議会で議論して関係法令を改正し、早ければ、来年度から新しい仕組みを始めるとしています。労災保険の積立金は約8兆円あり、給付額の増加による財政的な影響は小さい見通しとのことですが、改正にあたり、予算以外にも解決しなくてはならない問題が少なくありません。
 企業としては、自社での労災の発生と関係ない場合にも給付の負担をする必要が出てくるため、そうしたケースを処理できるよう、法的な整備が求められるでしょう。
また、新たな労災の算出方法を導入するにあたっては、複数の職場の賃金の合計額を知る必要がありますが、現状では複数の職場で働いていることを把握する仕組みは存在しないため、どのようにそれを解決するのかの取り決めも必要になってきます。
 労働者を保護するための仕組みが、労働者の不利益や働きにくさの原因になるようでは本末転倒です。また、企業に不必要な負担を強いる改悪となっては意味がありません。
 今後、施行に向けて、さまざまな角度からの検討がなされると予想されますが、労働者にとっても企業にとっても、よりよい改正になるよう期待したいところです。


 

【参考資料】
・日本経済新聞「労災保険、複数職場分を給付 厚労省、兼業の労働者保護(2017.5.2)」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H75_S7A500C1PP8000/

 

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