専門医療機関連携薬局とは?概要・認定要件・期待される役割を解説

調剤薬局の意義を大きく変える可能性がある制度として注目されている「専門医療機関連携薬局」の認定制度をご存じでしょうか?まだ数は多くなく、専門医療機関連携薬局がない都道府県もありますが、今後増えていくことが期待されている制度です。

この記事では、専門医療機関連携薬局の概要や認定要件、期待される役割などを解説していきます。聞いたことがない方も、申請を検討中の方も、参考になれば幸いです。

専門医療機関連携薬局とは

まずは、専門医療機関連携薬局がどういった目的で作られたものなのかなど、その概要について詳しく解説します。

専門医療機関連携薬局の概要

2019年に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、2021年から「専門医療機関連携薬局」の認定制度が始まりました。2015年に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」の「高度薬学管理機能」に対応するもので、まだ新しい制度です。

2023年10月の段階では、東京都で17店舗、神奈川県で11店舗などまだ数は少ないですが、今後の発展が期待されています。

専門医療機関連携薬局は、専門的な薬学管理のために関係機関と連携して対応できる薬局のことで、現在は傷病区分として「がん領域」のみが定められています。一定の機能を有し、都道府県から認定を受けた薬局だけが専門医療機関関連薬局と表示できます。

現状では、がん治療を行う大病院の門前薬局が主に認定されていますが、将来的には専門医療機関連携薬局が各地域に存在し 、日常生活圏内でかかりつけ機能を果たしていくことも想定されているようです。

出典:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の一部を改正する法律」(厚生労働省)

「高度薬学管理機能」との違い

専門医療関連携薬局は、「高度薬学管理機能」に対応した認定制度です。両者はまったくの別物というわけではなく、「専門医療機関連携薬局には、高度薬学管理機能から一歩進んだ+αの機能・役割が求められている」ということになります。

高度薬学管理機能は「かかりつけ薬局・薬剤師」に求められる役割のひとつで、高度な薬学管理が必要な抗がん剤や抗HIV薬の選択、副作用の対応などの支援を行うことが求められています。

それに加え、専門医療機関連携薬局となるためには、以下のような要件が必要です。

・がんに関わる専門薬剤師等の認定を受けた、高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤師を配置すること。

・専門医療機関との間で、勉強会・研修会を共同で開催するなどの取組を継続的に実施すること。

・関係機関と連携して患者対応にあたるだけでなく、地域のほかの薬局への医薬品提供体制の整備・地域の他ほかの薬局に対する研修の定期的な実施・地域のほかの医療提供施設に対する医薬品の適正使用に関する情報の提供などを行うこと。

がん治療を受けている患者の療養に関して、積極的にリーダーシップを取っていくことが求められているということです。

専門医療機関連携薬局の認定要件

専門医療機関連携薬局の認定要件と、要件を満たすための取り組み例などをご紹介します。

傷病の区分

専門医療機関連携薬局は、厚生労働省が定める「傷病の区分」によって認定を受ける必要があります。2023年12月現在、新法第6条の3第1項において厚生労働省に定められている区分は「がん」のみです。

今後、がん以外にも傷病の区分が追加されるとみられ、区分が追加されれば、それぞれに対応する基準が定められると予想されます。

相談しやすい構造設備

患者が自身の状態について安心して相談できるよう、以下のような設備が求められています。設備については、申請の際に写真や図面などで示さなければなりません。

・個室などの設置
「がん」に関連して、体調や薬に関する相談を受けたり、指導を実施したりしますので、プライバシーに配慮した作りになっていることが重要です。生活圏内の薬局であれば、知り合いの方と鉢合わせすることもあるため、話し声が漏れない・聞こえにくい環境がなければ安心して通えません。待合室から離れた場所にブースを設置するか、個室のようになっていることが望ましいでしょう。

・高齢者や障がい者などの利用に適した構造設備
車椅子や杖を利用する方でも来局しやすいよう、スロープや手すりなどが備わっている必要があります。薬局の入り口だけでなく、投薬窓口やトイレなどの設備も重要です。

他の医療機関・薬局との情報連携体制

他の医療機関や薬局と、利用者の状況について連携を取れる体制を作らなければなりません。

強固な連携体制を整えるために、専門医療機関連携薬局に勤務する薬剤師は、がん治療を行う医療機関が開催する会議に継続して参加する必要があります。また、がん治療を行う医療機関に勤めている医療関係者に対し、服薬状況や副作用状況など、必要な情報を提供する体制を整えることも重要です。

専門医療機関連携薬局では、がん治療など専門的な治療を行う医療機関で働く薬剤師に対し、「情報提供をした」という実績を提示しなければなりません。過去1年間で受け付けたがん患者の処方箋のうち、50%以上について情報提供をするという基準が定められています。情報提供が50%を切ると認定要件から外れてしまうため、注意が必要です。申請・更新の際に具体的な数値を提示しなければなりません。

さらに、他の医療機関や調剤薬局も利用しているような場合には、それぞれに対して薬の服用歴や残薬の有無、副作用の状況などについて共有する必要もあります。患者の情報をほかの薬局から求められたときは、患者本人から同意を得たうえで情報提供を行います。

このように、専門医療機関連携薬局では、医療機関や薬局などといつでも密な連携を取れるような体制を作り、必要に応じて速やかに情報提供ができるよう準備しておく必要があるのです。
連携の状況についても、申請・更新の際に提示が必要となります。

専門的な薬学的知見に基づく調剤・指導等の業務を行う体制

地域の他の医療提供施設との連携を行いつつ、適切に専門的な調剤や指導を実施できる体制として、次の項目を満たすことが求められています。

・開店時間外の相談応需体制の整備
・休日および夜間の調剤応需体制の整備
・地域の他の薬局への医薬品供給体制の整備
・麻薬の調剤応需体制の整備
・医療安全対策の実施
・継続して1年以上勤務している常勤薬剤師の半数以上の配置
・専門性を有する常勤薬剤師の配置
・薬事に関する実務に従事する全ての薬剤師に対する専門的な研修の計画的な実施
・地域のほかの薬局に対する研修の継続的な実施
・地域のほかの医療提供施設に対する医薬品の適正使用に関する情報の提供実績

患者からの時間外の相談に対応できる体制、店舗内だけでなくほかの薬局の薬剤師に対しても研修を実施するリーダーシップなど、地域全体で「患者のための医療」を提供する体制作りに貢献する必要があります。

専門医療機関連携薬局の認定申請手続き

専門医療機関連携薬局の新規申請および認定更新の申請で必要な資料についてご紹介します。

認定申請時に必要な資料

認定申請書、認定基準に適合していることが分かる各種添付書類、添付書類確認表およびチェックリストが必須です。必要に応じて、医師の診断書を添付します。

書類の詳細および提出先は、各都道府県の公式サイトで確認してください。都道府県によっては、申請の前に保健所等へ事前相談が必要な場合もあります。

認定更新申請時に必要な資料

更新の場合は、専門医療機関連携薬局の認定証、認定基準に適合していることが分かる各種添付書類、添付書類確認表およびチェックリストと、必要に応じて医師の診断書を準備します。こちらも、提出書類の詳細および提出先は各都道府県公式サイトで確認してください。

1年ごとの更新となりますので、期限に余裕を持って更新手続きを行いましょう。都道府県によって、認定期限の2か月〜1か月前までに手続きをしなければならないなど、定められている場合があります。

専門医療機関連携薬局に求められる役割

専門医療機関連携薬局では、定められた傷病区分に対して高い専門性を発揮して患者に対応することが求められています。

まず 、専門性の高い服薬指導や薬学的管理を行うことが基本です。その質を担保するために、がんに関連した認定資格を持つ薬剤師を配置しなければなりません。薬局としては、認定薬剤師を継続的に確保するために、資格取得のサポートなどをする必要があるでしょう。

患者に対する関わりだけでなく、他施設に対する医薬品の提供・専門性の高い情報の発信・研修などの実施も必要です。地域全体で患者の治療をサポートする仕組みを積極的に構築し、リーダーシップを発揮することが求められます。

まとめ

今回は、比較的新しい制度である「専門医療機関連携薬局」について、求められる業務や申請方法などをご紹介しました。まだ認定された薬局の数は少ないですが、患者のがん治療をしっかりサポートするために必要不可欠な制度です。今後、認定を受けた薬局が増えていくことで、患者が生活圏内で安心してがん治療を受けられる環境づくりに繋がると期待されます。

がん患者が多く来局される薬局は、申請を検討してみてはいかがでしょうか?患者の療養にとってメリットが大きいほか、所属する薬剤師のキャリアも広がるでしょう。

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