薬局を取り巻く環境が変化するなかで、「地域でどのような役割を果たす薬局であるか」がこれまで以上に問われるようになってきました。その1つの指標として位置づけられているのが、地域連携薬局の認定制度です。
しかし、制度の名称は聞いたことがあっても、具体的な役割やメリット、認定要件まで正しく把握できていない方も多いのではないでしょうか。
今回は、地域連携薬局の概要、認定を受けるメリット、認定条件、更新方法までを整理し、制度の全体像をわかりやすく解説します。
地域連携薬局とは?

地域連携薬局とは、入退院時や在宅医療への対応時に医療機関等と連携しながら、患者の薬物治療やそれに付随する情報を一元的・継続的に管理・対応する薬局のことで、2021年から認定が始まりました。
2015年に厚生労働省が提示した「患者のための薬局ビジョン」のうち、かかりつけ薬剤師・薬局機能の強化に紐づいた認定制度です。地域連携薬局は、地域包括ケアシステムの中で薬局が果たす役割を明確化する制度としても位置づけられています。
住み慣れた地域で患者が安心して療養できること、患者の健康上の課題を地域全体で解決していくことが目的であるため、薬局単体ではなく多職種連携を重視した体制整備が必要となる点が大きな特徴といえます。
専門医療機関連携薬局との違い
地域連携薬局は「地域全体の医療・介護との連携」を軸とするのに対し、専門医療機関連携薬局は「特定の専門医療機関との高度な連携」を重視する点が異なります。
専門医療機関連携薬局は、がん・HIV・難病などの専門的な治療に関して高度な薬学的支援を実施することが要件であり、専門領域の知識や薬学管理が強く求められます。
そのため、専門性を有する常勤薬剤師(外来がん治療専門薬剤師など)の配置が必須です。
地域連携薬局のメリット

地域連携薬局として認定されても、現時点では診療報酬上の直接的な加算が算定できるわけではありません。そのため、「認定を受けるメリットがわかりにくい」と感じる薬局も少なくないでしょう。
しかし、地域連携薬局は、地域の医療・介護を支える中核的な役割を担う薬局として位置づけられており、認定を受けることで薬局の機能や姿勢が対外的に評価・可視化されるという大きな意味があります。
ここでは、以下の2点のメリットについて、具体的にご紹介します。地域連携薬局の認定を受けるかどうか悩んでいる方は、参考にしてみてください。
● 所属する薬剤師の専門性や臨床力を高められる
他の医療・介護施設からの信頼を得られる
地域連携薬局として認定されることは、地域の医療機関や介護事業所に対して「連携体制が整備された薬局である」ことを公的に示す1つの手段です。
入退院時の情報共有や服薬情報の一元管理、在宅医療への対応などは、制度上の要件として一定水準が求められており、これを満たしている薬局であることが都道府県によって確認されている点は、対外的な信頼につながります。
その結果、病院からの退院時の情報提供や、診療所・ケアマネジャーからの相談・紹介が生じやすくなる、多職種連携の輪に入りやすくなるなど、スムーズな連携が可能になるでしょう。
地域連携薬局の認定は、単なる名称ではなく、「連携を前提とした薬局運営を実施している」という姿勢を可視化する役割を果たす点が、大きなメリットといえます。
所属する薬剤師の専門性や臨床力を高められる
地域連携薬局では、通常の調剤や服薬指導に加え、無菌調製、麻薬の取り扱い、訪問診療への関わりなど、多岐にわたる業務をおこなうことが求められます。
認定されていない薬局と比較して、多くの経験を積むことができ、専門性や臨床力を自然と高められる環境といえるでしょう。スキルアップを希望して転職を考える薬剤師にとっても、魅力の1つとなります。
また、医師・看護師・ケアマネジャーなど多職種とのやり取りを通じて、薬物療法を地域全体で支える役割を実感できる点も重要です。
認定の申請・更新のために記録や情報提供の質を高める必要があることから、結果的に薬剤師一人ひとりの専門性や説明力、問題解決力の底上げにつながります。
地域連携薬局は、薬剤師の成長を促す環境づくりという側面でも意義のある制度といえるでしょう。
地域連携薬局の認定条件について

地域連携薬局として認定を受けるためには、日常的に行っている調剤業務に加えて、地域医療・介護を支えるための体制が薬局全体として整備されていることが求められます。
書類上の形式的な要件ではなく、新規の申請・更新のいずれの場合でも、実際の業務実績や運用状況が重視される点が特徴です。地域連携薬局の認定要件は大きく4つに分類されます。
それぞれの内容と実務上のポイントについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
● 十分な情報共有・報告体制が整っているか
● 薬剤の提供体制が整っているか
● 在宅医療に必要な対応が可能な環境の整備
参考:厚生労働省|薬生発0129第6号 令和3年1月29日. 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係)
①利用者に配慮した十分な構造設備
利用者が座って服薬指導等を受けることができる、間仕切りなどで区切られた相談窓口、及び相談の内容が漏えいしないよう配慮した設備を設置することが求められます。
地域住民の方がプライバシーを守って指導を受けられるよう、待合スペースと窓口の距離を空け会話が聞こえないようにする、パーテーションで区切るなど、環境を整えましょう。
「座って服薬指導を受けられる」という項目については、やむを得ない場合は椅子を備え付ける必要はないですが、座って相談を受けることが可能という趣旨の掲示物・声かけ等の配慮が必要であるとされています。
また、高齢者、障害者等が円滑に利用できるような構造が必要です。入り口やトイレ等に手すり・スロープを設置する、車椅子のまま相談できるよう高さの低い窓口を設置するなど、利用者の心身の状態に配慮した構造となっているか、確認しましょう。
配慮した構造については、バリアフリー新法の基準が参考になります。
参考:国土交通省 警察庁 総務省|バリアフリー新法の解説 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 ユニバーサル社会の実現をめざして
②十分な情報共有・報告体制が整っているか
地域の医療機関・介護施設・調剤薬局など、さまざまな施設と密に情報共有ができるような体制づくり・実績が必要です。
具体的には、まず、地域包括ケアシステムの構築に資する以下のような会議への参加が求められています。頻度については定められていませんが、薬局として参加すべきものを検討し、継続的に関わっていくことが重要です。
● 介護支援専門員が主催するサービス担当者会議
● 地域の多職種が参加する退院時カンファレンス
また、地域の医療機関に勤務する薬剤師等への連絡体制を構築し、実施している実績も求められます。
入院前の服薬状況の提供、退院時カンファレンスへ参加するなどしての情報共有、自宅(在宅医療)での服薬状況や副作用状況についての報告など、適切なタイミングで実施しましょう。
申請の前月までの過去1年間において、月平均30回以上の報告・連絡実績の報告が必要となります。
③薬剤の提供体制 が整っているか
利用者に対して、安定的に薬剤を提供するための体制が整っていることも必要です。具体的に、いくつか抜粋してご紹介します。
電話相談等があった場合には、開店時間外でも相談を受けられる体制を整え、連絡先や注意事項について交付あるいは薬袋へ記載する必要があります。
● 休日及び夜間の調剤応需体制
地域での輪番制による対応でもかまいませんが、休日や夜間でも利用者に医薬品を供給できる体制を持ち、調剤応需体制を示しておく必要があります。
● 麻薬の調剤応需体制
麻薬の調剤の求めがあった場合に、薬局の事情等により当該麻薬の調剤を断ることは認められません。在庫する品目数や種類は薬局の判断でよいですが、速やかに必要な麻薬を入手できる体制を構築しておくことが求められます。
● 無菌製剤処理を実施できる体制
とくに居宅等で療養を受ける利用者に対して、無菌製剤処理の必要なケースが想定されるため、自局または共同利用により無菌製剤処理を実施できるようにしておくことが望ましいです。
● 継続して1年以上常勤として勤務する薬剤師の半数以上の配置
週に32時間以上の勤務で常勤とみなされます。
④在宅医療に必要な対応が可能な環境の整備
居宅や介護施設における調剤の業務や、訪問診療の利用者に対する情報提供や指導をおこなっている実績を提示する必要があります。申請の前月までの過去1年間において、月平均2回以上の実績が基準となっています。
ただし、地域の実情から居宅等での訪問診療を受ける利用者が限られている場合など、地域連携薬局の認定が進まないと都道府県知事が判断する場合に限り、基準となる回数は配慮される場合もあります。個別に確認・相談をしてください。
訪問診療の利用者は、高度管理医療機器や特定保守管理医療機器の使用、衛生材料の利用が想定されます。そのため、高度管理医療機器等の販売業の許可を受けることが求められます。
薬局で保管する医療機器・衛生材料の種類については薬局が必要と判断するものに限っても差し支えはありませんが、必要になった場合には速やかに入手できる体制を構築しておくことが重要です。
地域連携薬局の更新方法とは?

地域連携薬局の認定期間は1年です。
有効期限の1ヶ月前までに、以下のような書類を揃え、更新の申請をする必要があります。詳細については、所属する都道府県のホームページ等で確認してください。
更新をしない場合は、30日以内に認定証を返納することとなっています。
2. 診断書(申請者が精神機能の障害により業務を適切に⾏うことができないおそれがある場合に限り提出が必要。)
3. 認定証
4. 地域連携薬局 認定基準適合表
「認定基準適合表」では、17の項目について記載したり、資料を添付したりする必要があります。
地域包括ケアシステムの構築に資する会議への参加の状況、地域の他の医療提供施設に対する医薬品の適正使用に関する情報提供の回数、地域包括ケアシステムに関する内容の研修の受講の状況など、すぐに記載・用意ができない項目もありますので、前もっての準備が必要です。
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今回ご紹介した地域連携薬局では、無菌調製の体制も要件とされているなど、薬局薬剤師に求められる役割は、どんどん拡大しています。スキルを伸ばしたい、専門性を高めたいという薬剤師の皆さんにとって、転職はよいきっかけとなることも多いです。
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まとめ
地域連携薬局は、診療報酬上の直接的な加算はないものの、地域医療・介護を支える薬局としての役割を明確に示すことができる認定制度です。
入退院時の連携や在宅医療への対応、多職種との情報共有などを通じて、地域から信頼される薬局づくりにつながります。
制度要件に沿った業務を継続することで、所属する薬剤師の専門性や臨床力の向上も期待できます。自局の体制や将来像と照らし合わせながら、認定取得を検討してみてはいかがでしょうか。