メディカルライターは、専門的な知見を活かしてさまざまな文書作成をする仕事です。特に薬剤師の人は、これまでの経験や知識を発揮することができるでしょう。今回は、具体的な仕事内容と年収の目安を取り上げるとともに、必要なスキルやメディカルライターとして働くメリット・デメリットについて詳しく解説します。
メディカルライターとは
メディカルライターは、医薬品・医療分野の専門的なライティングを担う職種です。主な勤務先には製薬会社や医療系広告代理店があるほか、フリーランスで働く人もいます。
業務範囲は、薬事申請に必要な書類からプロモーション用のパンフレット、雑誌・WEB媒体の記事まで多岐にわたります。読み手も医療従事者をはじめとする専門家と、専門知識をもたない一般人に分かれます。
実務では、医薬品・医療分野の情報における正確性や論理性に加え、読み手の違いにも考慮したライティングが求められます。
メディカルライターの仕事内容
メディカルライターの仕事内容を職場別に見ていきましょう。製薬会社では、以下の医薬品・医療機器開発にともなう文書作成が主な仕事です。
・治験実施計画書・同意文書
・開発・承認に関する各種書類
・総括報告書
・照会事項への回答
・医学・薬学論文
これらの業務では、各種規制やガイドラインなどを理解した上で、関連部署と内容のすり合わせ・スケジュール調整をし、整合性を取りながら文書をまとめます。
医療系広告代理店に勤務するメディカルライターの仕事は、医薬品・医療機器の販売促進を目的とした広告・資料の作成です。具体的には、以下の販促ツールを扱います。
・パンフレット・リーフレット
・冊子
・MR用の資料
・WEBサイトの記事
・タブレット用コンテンツ
そのほか、医療従事者向けの雑誌に載せる記事や学会の発表レポートの執筆もメディカルライターの仕事です。 プロモーションの企画・立案、編集作業を担う場合もあります。
メディカルライターの年収はどれくらい?
メディカルライターの年収は、正社員で400万〜600万円程度が相場です。専門性の高い業務のため、給与所得者の平均給与443万円と比較しても高めに設定されています。
出典:「令和3年分 民間給与実態統計調査」(国税庁)
また、企業や業務内容、スキルなどによって収入差があるのも特徴です。メディカルライターの中には、800万〜1,000万円の年収を得ている人もいます。
メディカルライターとして働くのに必要なスキル
それでは、医薬品・医療情報のエキスパートであるメディカルライターには、どのような知識やスキルが求められるのでしょうか。
医療や薬品に関する基礎知識
メディカルライターになるにあたり、資格は必須ではないものの、薬剤師の資格を保有していると採用時に有利です。薬物の成分や人体への影響といった基礎的な知識は、新薬開発の申請業務や論文執筆などに欠かせません 。
特に読み手が専門家の場合、科学的なエビデンスに基づいた専門性の高いライティングが求められます。そうした場面でも、薬剤師の豊富な薬学・医療知識が役立ちます。
薬事規制に関する知識
医薬品・医療機器に関する薬機法の知識もメディカルライターには必須です。広告に薬機法に反した表現があれば、虚偽・誇大広告として措置命令や課徴金などのペナルティを科されるリスクがあります。
メディカルライターは、「医薬品等適正広告基準」をはじめとする関連のガイドラインに従い、不適切な表現を回避しながらPR、情報提供に努めなければなりません。
薬価基準や製品の情報管理などの知識が必要となる案件もあるため、日頃から薬事規制に関する情報収集・蓄積に努める姿勢も大切です。
英語の読解スキル
メディカルライターにとって、業務を遂行する上で医薬品・医療情報の収集は不可欠です。資料となる国内外の論文・出版物は英語の場合も多いことから、英語の読解力が必要となります。案件によっては、翻訳や英語で文書を作成しなければいけません。
ハイレベルな英語力が求められる求人は、年収も高い傾向があります。グローバルに活躍できるメディカルライターを目指すなら、読解力に加え、英会話を含めた総合的な英語力も必要です。
クライアントが求める内容を執筆する文章力
製品の販売促進に携わるメディカルライターの役割は、クライアントの要望に合った文章を書くことです。その際、クライアントのマーケティング戦略を汲み取り、読み手に応じて書き分ける文章力が求められます。
加えて、読み手の誤解を招くことなく、高度な医療知識や難解な専門用語をわかりやすく伝える記述力も重視される点です。
メディカルライターとして働くメリット
続いて、病院や調剤薬局などで勤務する薬剤師とは違ったメディカルライターならではのメリットを紹介します。
ワークライフバランスを重視して働ける
メディカルライターの魅力は、時間や場所を問わずに自由な働き方ができることです。スケジュール管理さえできていれば、比較的自分のペースで仕事を進められるため、育児や介護などと両立しながら在宅で働く人も少なくありません。
雇用形態としては、正社員やパートのほか、業務委託の求人もあります。フリーランスを目指す場合は、まずは企業で経験を積み、企画から提案できる実力が身に付けば、独立後の仕事の幅も広がります。
最新の医療情報に詳しくなれる
調剤薬局やドラッグストアでは触れる機会が少ない最新の医療情報に精通できる点も、メディカルライターのメリットです。医学の進歩に応じて、新しい医薬品・医療知識をアップデートし続ける環境に身を置き、自己の成長を実感できるでしょう。
治験や承認申請に関わる業務では、まだ世の中に出回る前の医薬品・医療情報に触れられます。申請が承認されれば、大きなやりがいにもつながります。
知識や経験を活かして働ける
業務の専門性が高いため、薬学・医療のハイレベルな知識や経験のある人が有利に働けるフィールドです。病院や調剤薬局勤務で培った得意分野をライティングに活かす人もいます。
学会発表や論文執筆の経験などがあると優遇され、活躍の幅が広がります。
メディカルライターにはデメリットもある?
メディカルライターを目指すにあたり、留意しておきたいデメリットもあります。
調剤業務に携われない
メディカルライターの業務では処方箋や医薬品を扱う機会がないため、調剤スキルの向上は望めません。患者との直接的な関わりもほぼなくなります。
メディカルライターとして長期的なキャリア形成を目指すのであれば、調剤スキルは不要です。ただし、病院や調剤薬局へ転職する可能性がある場合は、調剤業務に従事していない期間が転職活動で不利になるリスクがあることを覚えておきましょう。
難易度が高い
専門用語を扱い、論理性やエビデンスも要求される難易度の高い文章作成は、特に未経験だと敷居が高く感じられ、慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
メディカルライターを長く続けていくには、常に新しい情報を吸収し続ける姿勢が欠かせません。同時に、薬事規制を考慮しながら読み手に誤解を与えない正確な文章を執筆する力を地道に磨き続けることが求められます。
メディカルライターになるには
メディカルライターとして働くには、大きく3つの方法があります。
・製薬会社や研修機関への就職
・医療系広告代理店への就職
・フリーランスとして直接受注する
まずは、製薬会社や研究機関への就職です。メディカルライターとして治験や薬事申請に関する文書作成に従事します。
次に、医療系広告代理店に就職する道があげられます。医薬品・医療機器の販売促進に携わり、売り上げや認知度の向上を目指します。
もうひとつは、フリーランスとして案件を直接受注する方法です。仕事内容は発注元によってさまざまです。未経験から挑戦できる求人が少ないため、企業勤務で経験を積み、人脈を広げておくと独立後も軌道に乗りやすくなります。
まとめ
メディカルライターは、薬剤師としての知見や文章力・英語力を活かせる職種です。最新の医療情報に触れながらワークライフバランスの良い働き方ができることが、この仕事の大きな魅力です。
一方で、調剤業務のスキル向上にはつながらないため、将来的に病院や調剤薬局へ転職する際には不利になる可能性があるので注意が必要です。
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