抗菌化学療法認定薬剤師とは?求められる役割と取得方法などを解説

「抗菌化学療法認定薬剤師って?」「抗菌化学療法認定薬剤師に求められる役割や取得方法を知りたいな」と考えている薬剤師の方もいるかもしれません。

感染領域の認定資格はいくつかありますが、「抗菌化学療法認定薬剤師」は、抗菌化学療法認定医や抗菌化学療法認定歯科医師と同じく、日本化学療法学会により創設された認定資格です。抗菌化学療法認定薬剤師の役割は、抗菌薬の取り扱いについて医師へ助言するだけでなく、抗菌薬の選択や使用などに及び、より実践的で重要です。

この記事では、抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得までの流れ、抗菌化学療法認定薬剤師の役割と資格取得のメリットについて、ドラッグストア勤務経験のある元病院薬剤師が解説します。この記事を読めば、抗菌化学療法認定薬剤師の詳細が分かります。

抗菌化学療法認定薬剤師とは

公益社団法人日本化学療法学会によって認定される認定薬剤師資格のひとつで、抗菌化学療法に関する十分な知識・技能を有する薬剤師を認定する制度です。

ウイルス薬、抗真菌薬を含むに薬剤に関して、十分な知識と技能を有する認定薬剤師を養成して、至適な抗菌化学療法を通じて、国民の健康に貢献することを目的に2008年創設されました。

現在、感染防止対策加算の施設基準では、専従は医師と看護師のみで、薬剤師は専任のみですが、抗菌薬適正使用の推進のためには、専従が望ましいところです。抗菌化学療法認定薬剤師は抗菌薬使用のスペシャリストなので、感染対策チームの中でも活躍できるでしょう。

認定取得のためには、所定の研修会受講および症例一覧の提出を行った後に、受験を申請し、認定試験を受験する必要があります。

抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得までの流れ

ここでは、抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得までの流れおよび試験の範囲、参考図書などを紹介します。

抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得条件

抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得するためには、認定試験を受験し、合格しなければなりません。抗菌化学療法認定薬剤師制度規則第9条の条件を満たし、第10条に定められた必要書類を提出して認定試験の受験資格が認められれば、試験を受けられます。

抗菌化学療法認定薬剤師制度規則第9条、10条は以下のとおりです。

第九条(申請基準)
抗菌化学療法認定薬剤師の申請は下記の各項を満たす者とする。
1)本邦における薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格及び抗菌化学療法の見識を備えている。
2)申請時に、薬剤師として抗菌化学療法に5年以上かかわっていることを示す所属する施設長又は感染対策委員長の証明が得られる。
3)申請時において、日本化学療法学会の正会員である。
4)医療機関において、病棟薬剤業務・TDM(治療薬物モニタリング)・DI(医薬品情報)などの業務を通じて感染症患者の治療(処方設計支援を含む)に自ら参加した15症例を報告できる。
5)日本化学療法学会の抗菌薬適正使用生涯教育セミナー・認定委員会が指定する研修プログラムなどにおいて、別に定める単位数を取得している。
第十条(申請)
抗菌化学療法認定薬剤師の認定を希望する者は、以下に掲げる書類を添えて日本化学療法学会事務局に申請する。
1)抗菌化学療法認定薬剤師認定申請書(申請書式-1)
2)薬剤師免許の写し(裏書のある場合は、裏書も含む)
3)規定の単位取得証明書(施行細則3参照)(申請書式-2)
4)症例一覧(申請書式-3)
5)推薦状(施設長または日本化学療法学会評議員)(申請書式-4)
6)抗菌化学療法に5年以上かかわっていることの施設証明書(申請書式-5)
7)申請料振込み控えの写し

出典:抗菌化学療法認定薬剤師制度規則

新規申請の申請料は11,000円(税抜10,000円、消費税10% 1,000円)です。受付期間は毎年4月1日~9月30日、締め切り後に書類審査が行われ、受験資格の有無が分かるのは、12月中旬頃です。

提出書類のひとつ、症例報告にはさまざまな条件が付されているため、作成の際には注意が必要です。
症例一覧の作成上の注意事項は、以下のとおりです。

 同一症例を複数の申請者が使用しない。
 抗菌化学療法に関与する薬剤師としての介入内容が盛り込まれた症例を報告する。介入した箇所にアンダーラインを施す。
 症例報告とは別に考察を400字程度にまとめる。介入内容は、できるだけ文献やガイドラインを引用するなど根拠とともに示す。
 TDMによる投与設計の症例は3例まで、その他12例については処方変更など感染症治療へ介入した症例とする。
 院内の委員会報告や治験、調剤時の疑義解釈などは含まない。
 菌名は学名で記載(イタリック体表記・非イタリック体表記に注意)する。
 感染症治療薬は日本化学療法学会が指定する略号を使用する。
 検査値は単位も記す。

参考:抗菌化学療法認定薬剤師申請書の「15症例報告」について

15症例の書き方については、日本化学療法学会ホームページの「よくある質問」に公表されていますので、申請される場合は確認しましょう。

症例報告の記載内容が不十分なもの、根拠や理由、変更後の経過のわかりにくいものについては、書類審査で不合格とする場合があると明記されています。また、症例報告での「同一症例の複数の申請者使用禁止」の縛りは、違反した場合は失格で、以後5年間新たな申請は受け付けられないという厳しいものです。認定試験合格後、抗菌化学療法認定薬剤師として認定されます。

試験の出題範囲と参考図書

出題問題数は50題です。出題範囲は特に定められておらず、抗菌化学療法に関する領域から広く出題するとしています。参考図書としては、以下のものが掲げられています。

 抗菌化学療法認定薬剤師テキスト~薬剤師が知っておきたい感染症と抗菌化学療法~
 抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン

抗菌化学療法認定薬剤師講習会の内容などから出題される可能性もあります。

抗菌化学療法認定薬剤師の役割と資格取得のメリット

ここでは、抗菌化学療法認定薬剤師の役割と資格取得のメリットを紹介します。

抗菌化学療法認定薬剤師の役割

院内での抗菌薬採用に関して、専門的な視点から発言するのが抗菌化学療法認定薬剤師の役割です。「感染症の種類や病態に応じてどの抗菌薬を選択し、どう使ったら良いのか」など、抗菌薬の投与計画への積極的な参加や感染対策チーム(ICT)内における抗菌薬使用のスペシャリストとしての役割が期待されています。

院内における感染予防や現場職員への指導・教育、抗菌薬の適正使用についての指導なども担えるようになります。感染症対策へ関心が高まるきっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染症拡大です。昨今の情勢から、抗菌化学療法認定薬剤師の社会的ニーズは高く、資格取得がキャリアアップになる可能性は高いでしょう。

抗菌化学療法認定薬剤師の認定資格を取得するメリット

抗菌化学療法認定薬剤師の認定資格を取得するメリットは以下のとおりです。

 抗菌化学療法に関する十分な知識・技能を有する薬剤師であると評価される
 キャリアアップ・スキルアップにつながる
 病院が感染対策向上加算を取得する際に必要な人材として重宝される

院内感染予防や職員への教育や指導など業務の幅が広がります。また、抗菌化学療法認定薬剤師は、病院だけでなく、抗菌薬の適正使用は在宅医療や研究職、老人施設など、医療行為をするさまざまな現場で必要とされるでしょう。

勤務する施設が感染対策向上加算を取得していたり、または目指していたりする場合や感染対策チーム(ICT)で活動したい、臨床現場で抗菌薬適正使用に貢献したい薬剤師に取得をすすめたい資格です。

まとめ

この記事では、抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得までの流れ、抗菌化学療法認定薬剤師の役割と資格取得のメリットについて、解説してきました。

感染領域の認定資格はいくつかありますが、「抗菌化学療法認定薬剤師」は、抗菌化学療法認定医や抗菌化学療法認定歯科医師と同じく日本化学療法学会により創設された認定資格です。抗菌化学療法認定薬剤師になると、業務の幅が広がるだけでなく、キャリアアップ・スキルアップにつながり、病院が感染対策向上加算を取得する際に必要な人材として重宝されるでしょう。

勤務する施設で感染対策向上加算を取得していたり、または目指していたりする場合や感染対策チーム(ICT)で活動したい薬剤師の方は取得を検討してみるのもいいでしょう。

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