薬剤師の有効求人倍率はどれくらい?都道府県別の傾向や推移を徹底解説

薬剤師の有効求人倍率はどれくらい?都道府県別の傾向や推移を徹底解説

「医療系の資格を持っていれば就職には困らない」「薬剤師は需要のある職業だ」と思っている方は多いかもしれません。しかし、ここ数年で医療業界を取り巻く状況は変化してきており、今後も需給バランスの推移には注意が必要です。

今回は、現在の薬剤師の需要の状況や、今後予測される変化などについて解説します。今後転職を考えている方は、薬剤師としての存在価値を高め、選ばれる人材になるための参考にしてみてください。

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薬剤師は人手不足に陥っている?

薬剤師は人手不足に陥っている?

厚生労働省の令和4年の統計によると、令和2年と比較して薬剤師の総数は0.5%増加して323,690人、中でも薬局は0.9%増加、医療施設(病院及び診療所)は1.4%増加という結果でした。

そして、処方箋枚数は、コロナ禍で一時的に減少が見られましたが、令和6年には約8.9億枚と過去最高の水準となりました。
薬剤師数、処方箋枚数のいずれも増加傾向ではありますが、薬剤師一人あたりの処方箋枚数は平成13年ごろをピークに緩やかに減少傾向です。

平成24年平成26年平成28年平成30年令和2年度令和4年度
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※出典元より作成

この結果は、薬学部の新設などにより薬剤師数が増加してきたことを反映していると考えられます。ですが、この結果だけを持って薬剤師の需要が減っているとはいえません。

病院薬剤師に関しては、政府は2027年までに11万床の病床削減を掲げていますが、薬剤師業務の拡大も見込まれることから、一概に需要が減るとは言い難い状況です。

実際、令和5年に厚生労働省が発表した薬剤師偏在指標でも、病院薬剤師が充足している都道府県はないという結果でした。薬局薬剤師も、19の都道府県では充足していましたが、それ以外の地域では薬剤師不足となっています。

全体としては薬剤師の数は増加していますが、病院や地方では依然として人手不足が続いており、地域・職域による偏りが課題となっています。

出典元:
e-Stat「医師・歯科医師・薬剤師統計/令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計 統計表」

厚生労働省「薬剤師偏在指標の算定について」

薬剤師の有効求人倍率や需要傾向の推移

薬剤師の有効求人倍率や需要傾向の推移

近年、薬剤師を取り巻く雇用環境は変化しています。薬剤師数の増加により有効求人倍率は低下し、全国的には需給が均衡しつつありますが、地域によっては依然として人材不足が課題です。

推移の状況について詳しくご紹介します。

有効求人倍率は減少傾向

有効求人倍率が高いほど、求職者の選択肢が多い「売り手市場」といえます。

日本全体の有効求人倍率は、平成26年から1.0倍以上となり、令和1年には1.6倍と上昇を続けていましたが、コロナ禍で落ち込み、その後はやや改善が見られます。令和6年で1.25倍であり、年々わずかながら減少傾向です。

医師・歯科医師・獣医師・薬剤師をまとめた令和6年の有効求人倍率は1.98倍で、ほかの職種と比較すると比較的高い水準といえますが、こちらも減少傾向となっています。

出典元:e-Stat「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」

医師・薬剤師等の有効求人倍率について

平均よりは高い水準で推移しているとはいえ、年次推移を見てみると、医師や薬剤師の有効求人倍率は大きく減少しています。

平成25年(2013年)には10.05倍でしたが、有効求人倍率は年々減少を続け、令和1年には5.18倍、令和3年には2.24倍、令和6年は1.25倍となりました。

H25年H27年H29年R1年R3年R5年R6年
6.916.155.573.771.912.152.21

出典元:
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
e-Stat「医師・歯科医師・薬剤師統計/令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計 統計表」

人口10万人あたりの薬剤師数と需要傾向の関係

厚生労働省によると、令和4年の人口10万対薬剤師数 (薬局・医療施設)は202.6人であり、令和3年と比較して4.0人の増加が見られました。薬剤師数は年々増加傾向にあり、全国的には医療提供体制の整備や薬局機能の拡充に伴って、一定の充足が進んでいるといえます。

都道府県別にみると、徳島県(244.0人)、兵庫県(236.6人)、東京都(235.7人)が多く、沖縄県(149.4人)や福井県(163.6人)、青森県(167.2人)は少ないという結果でした。

北海道・東北・中部地方などでは平均を下回っている都道府県が多く、地方での薬剤師不足、地域偏在は引き続きの課題となっています。

日本全体では需要と供給はマッチしつつあり、令和2年の厚生労働省の推計でも10年後を目安に薬剤師が過剰になると考えられています。現在のところ、地域偏在のほか、病院を中心とした薬剤師不足は続いているため、求められる環境を選ぶことが重要です。

参照元:
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会(とりまとめ(今後の検討課題))」

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薬剤師における今後の有効求人倍率に関する予測

薬剤師における今後の有効求人倍率に関する予測

薬剤師の業務範囲の拡大、高齢化による投薬対象者の増加などにより、今後10年程度は薬剤師の需要と供給数とが均衡した状態で推移すると予想されています。

現状では薬剤師の偏在や病院での人員不足もあり、未だ薬剤師は「不足している」という認識を持っている方が多いかもしれません。しかし、人口減少や少子化により、いずれは需要が減少していき、薬剤師の供給が需要を上回るという状況が予測されます。

需要が減少したときに必要とされる薬剤師であるためには、対物業務をこなすだけでなく、薬剤師一人ひとりが質の向上を目指し、AI等に代替されない人材になっていく必要があるでしょう。

薬剤師の需要に影響を与える要因

薬剤師の需要には、さまざまな社会的・技術的要因が影響しています。

近年注目されるのが、調剤補助を行う「薬剤師テクニシャン制度(調剤助手制度)」の検討や、対物業務の機械化です。これにより、単純作業に従事する薬剤師の必要数は将来的に減少する可能性があります。

また、コロナ禍を契機にオンライン服薬指導やリフィル処方の普及が進み、患者の受診・服薬に関わる行動が変化したことも、薬剤師の需要に影響を与えています。

①テクニシャン制度

「テクニシャン制度」とは、薬剤師以外の者が、薬剤師の指示・監督の下で機械的・定型的な調剤関連業務を担うことで、薬剤師に「対人業務(服薬指導・在宅医療・チーム医療等)」へ注力させるための制度です。

国によりその業務範囲はやや異なりますが、海外では国や州に認められた資格職であり、調剤だけでなく、在庫管理・患者へのカウンセリング補助などを幅広く担っています。

一方、国内においては、 薬生総発0402第1号「調剤業務のあり方について」(通称「0402通知」)が2019年に発出され、薬剤師ではないスタッフが以下のような業務をおこなっても差し支えないと示されました。

● PTPシートまたはこれに準ずる包装された医薬品のピッキング
● 納品された医薬品を調剤室内の棚に納める
● 調剤ずみの薬剤を患者のお薬カレンダーなどへ入れる

テクニシャンを導入することで、単純な調剤などをおこなうための薬剤師の必要数は減るため、需要の減少につながる場合があります。

参照元:厚生労働省. 薬生総発0402第1号「調剤業務のあり方について」

対物業務の機械化

ピッキング、一包化、混注など、あらゆる対物業務の機械化が進んできています。すでに鑑査もAIが担えるようになってきており、薬剤師がおこなわなければならない対物業務は今後も減っていくと考えられます。

それに伴い、業務をこなす上で必要な薬剤師の人数が減り、スキルのある薬剤師のニーズは高まる一方で、機械を使いこなせない・スキルのない薬剤師の需要は低くなるでしょう。

③新型コロナウイルスの感染拡大に伴う患者行動の変化

新型コロナウイルス感染症の流行期には、緊急事態宣言の発令などの影響で外出自粛がおこなわれたこともあり、令和2年には受診控えによる処方箋枚数の減少、長期処方の増加といった変化がありました。それにより、処方箋調剤をおこなう薬剤師のニーズは一時的に減少したといえます。

その後、処方箋枚数は回復して令和6年には過去最大枚数となり、一定の薬剤師の需要は保たれています。

処方箋枚数(万枚)

令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度
84,28476,49780,20583,76288,75989,859

一方で、医療費抑制や患者の利便性向上などの目的で、リフィル処方箋や電子処方箋の導入、オンライン診療の普及など、制度も変化しました。

オンラインで服薬指導をおこない、医薬品を郵送するというスタイルの薬局も出てきており、薬剤師の需要減少につながり得るでしょう。単に医療機関や自宅に近いというだけでは、利用者から選ばれない時代が来ているといえます。

参照元:厚生労働省「令和6年度 調剤医療費(電産処理分)の動向」

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今後の薬剤師市場では、地域や職場によって「不足」と「過剰」が混在する時代に入ると予測されます。ご自身の希望やスキルに合った職場を見つけるには、専門的な情報とサポートが欠かせません。

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まとめ

薬剤師の数は増加傾向にあり、全国的には需給の均衡が進みつつあります。一方で、病院や地方では依然として人手不足が続き、依然として薬剤師の偏在は大きな課題です。

今後は人口減少やAIの導入、対物業務のさらなる機械化などにより、薬剤師の役割は大きく変化していくと予測されています。こうした環境の中で求められるのは、調剤技術にとどまらず、専門的な知識を持って患者や他職種と関わる「対人業務」のスキルを磨くことです。薬剤師としての専門性を高め、時代の変化に対応できる人材が、今後ますます重視されていくでしょう。

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