薬剤師の就職・転職先は非常にバリエーションが多いです。薬剤師の資格を持っていることで、さまざまな道が開けます。
とはいえ、同じ「薬剤師資格保持者」であっても、職場によって求められるスキルは変わります。希望の職種につくためには、必要なスキルを身につけ、適切にアピールしなければなりません。
そこで、今回は、どの職種でも共通して求められるスキルと、各職種で求められるスキルに分けて紹介します。転職をしようとする場合の、参考にしてください。
どの職種でも共通して求められるスキル・能力
まずは、薬剤師の資格を持つ人材として、どの職種でも共通して求められるスキルについて3つお伝えします。
コミュニケーションスキル
薬剤師として働く上では、どんな職種であっても人とのコミュニケーションは必ずあります。基本的なコミュニケーションスキルは欠かせません。相手に合わせて情報を正しく伝える能力、会話から相手のニーズを把握する能力、自分の考え(処方提案、疑義照会など)を伝え議論する能力など、社会人として必要なスキルは身につけておきましょう。
管理職の場合は、部下との信頼関係づくりや部署内の円滑な運営のためのコミュニケーションスキルも必要になります。自身の立場に合わせて、必要なスキルを1つ1つ身につけていくことが大切です。
薬や疾患に関する知識
医療機関だけでなく企業の場合でも、薬剤師は薬のスペシャリストとして採用されていることが多いです。薬の知識は、あって当然のものとして扱われます。疾患に関する知識も、薬の知識とは切り離せないもの。総合的な知識を身につけなければなりません。
もちろん、医学・薬学の進歩に合わせ、新しい情報をキャッチし、アップデートしていく力も必要です。常に最新の情報を得るため、勉強会や学会に参加するなど、積極性・自主性があることもアピールポイントになるでしょう。
基本的なパソコンスキル
薬剤師資格の有無と直接的な関係はありませんが、社会人として、基本的なパソコンスキルは持っておく必要があります。薬歴の入力や在庫管理など、パソコンを使う作業は必ず発生するため、操作が苦手だと業務が滞ってしまいます。
どのような職場であっても、入力操作、簡単な資料作成の能力などは最低限身につけておきましょう。
その他持っていると役に立つスキル・能力
上記以外で、持っているとプラスアルファのアピールができるスキル・能力を3つご紹介します。
外国語スキル
外国語スキルは、最新の情報を入手するために論文やガイドラインを読むのに役立つだけでなく、患者とコミュニケーションをとる上でも非常に重要です。
コロナ禍では外国の方の来日が少なかったですが、最近は再び旅行客が増えてきています。特定の国の方が多く住んでいるという地域もあるでしょう。日本語を話せない患者は少なくありませんので、外国語を話せる薬剤師は重宝されます。
英語・中国語・韓国語・スペイン語・フランス語・ポルトガル語など、地域のニーズにあった外国語の習得を目指してみてはいかがでしょうか?
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経営スキル
経営のスキルは、調剤薬局やドラッグストアの店舗運営で役立ちそうだというのはイメージできると思います。それだけでなく、病院であっても、さまざまな加算や経営のことを意識した薬剤部運営は重要です。
将来的に管理職になりたい、スタッフや店舗(薬剤部)のオペレーションを担いたいという方は、経営のスキルを身につけると良いかもしれません。店舗運営に関わっていた方は、即戦力としてのアピール材料になります。実績を数値で示せると尚良いでしょう。
適応力
店舗異動や転職など、環境や業務内容が変わる機会はしばしば訪れます。
その度に適応に時間がかかって力を発揮できないようでは、能力を低く捉えられてしまい、もったいないです。
環境に慣れ、新しいルールを覚えて運用できる、新しい人間関係でも円滑なコミュニケーションが取れるといった能力は、チェーンの調剤薬局など異動の多い職場では重宝されます。
転職する場合でも、すぐに職場の環境や人間関係・ルール等に適応できる能力が高い人材は、即戦力として貢献度が高く、評価を得やすいです。ご自身がすぐに適応できるタイプなのかどうか、見極めておくと良いのではないでしょうか?
病院薬剤師に求められるスキル・能力
次に、「病院薬剤師」に特に求められるスキル・能力を解説します。
薬や疾患に関する知識
病院では、ほかの職種と比較して、求められる知識が幅広い傾向にあります。
勤務先の病院にはない診療科の治療にもある程度精通していなくては、入院患者に安心・安全な医療を提供できません。
内服薬だけでなく、注射薬や院内製剤などを扱っている点も特徴的です。
幅広く、専門的な知識が求められます。
コミュニケーションスキル
ほかの医療従事者とコミュニケーションを取り、薬剤師としての意見を伝え、必要に応じて議論するスキルが重要です。
病院では、さまざまな職種がチームとなって治療を進めています。薬剤師としての意見を強く押し出しすぎても、遠慮して何も言えなくても、良い治療を提供することはできません。医療従事者と円滑なコミュニケーションをとるスキルは、必須です。
また、入院する患者の中には、薬の服用ができておらず状態が悪化した方も少なくありません。患者と信頼関係を作りながら、服薬状況や治療への気持ちを聞き出し、治療がうまくいくよう導く必要があります。
患者の理解度もさまざまですから、一人ひとりに合わせた伝え方で服薬指導をすることも必要です。
医療従事者・患者それぞれに合わせて柔軟なコミュニケーションがとれるスキルを身につけましょう。
認定薬剤師・専門薬剤師の資格
認定資格・専門薬剤師などプラスアルファの資格を持つ薬剤師は、ニーズが非常に高いです。「◯◯認定薬剤師を募集」というような求人もあり、給与交渉に繋げることもできます。
プラスアルファの資格があるというだけで、知識や経験があること以外にも、さまざまなことをアピール可能です。知識をアップデートし続ける積極性や、医療に貢献したいという意欲も伝わります。資格取得者を採用することで、その病院における医療の質向上・後輩の育成なども期待でき、病院にとってもメリットが大きいです。
薬局薬剤師に求められるスキル・能力
次に、「薬局薬剤師」に特に求められるスキル・能力を解説します。
薬や疾患、健康食品などに関する知識
薬局薬剤師は、相互作用や重複投与など、さまざまな医療機関からの処方薬を見逃しなくチェックしなければなりません。また、健康食品やサプリメントとの飲み合わせに関する相談もあるため、素早く調べて情報提供する機会もあります。
そういった状況にしっかり対応するために、薬だけでなく、疾患や健康食品などに関して、幅広い知識が必要です。
コミュニケーションスキル
入院患者さんを相手にするのとは異なり、薬局の中で、限られた時間の中で素早く状況を把握し、適切な指導をおこなうためのコミュニケーションスキルが必要不可欠です。患者さんの性格や理解度を会話の中で見極め、話し方・話す内容を瞬時に変えるなど、柔軟に対応しなければなりません。
コミュニケーションスキルに加え、ちょっとした会話から患者の体調変化やニーズなどを読み取るなど、観察力があると業務がよりスムーズに進められます。
もちろん、薬局スタッフと協力して業務をすすめていくためにも、コミュニケーションスキルは重要です。
認定薬剤師・専門薬剤師の資格
近年は、薬局薬剤師の方が取得できる資格もどんどん増えてきています。「外来がん治療専門薬剤師」「在宅療養支援認定薬剤師」などの資格はニーズが高く、持っていると役に立ちます。
認定薬剤師資格の取得は、かかりつけ薬剤師になるための要件でもあります。ぜひ、興味のある分野を見つけ、積極的に取得を目指していきましょう。
ドラッグストア薬剤師に求められるスキル・能力
ドラッグストア薬剤師に求められるスキル・能力を解説します。
薬や疾患、健康食品などに関する知識
ドラッグストアの薬剤師は、薬局薬剤師と同様に、飲み合わせの確認が必要になる場合が多々あります。そのため、市販薬だけでなく医療用医薬品、健康食品などに関する広範な知識が必要です。製品の情報を幅広く知っておかなければ、適切に提案することができず、次に述べる提案力にも関わります。
また、市販薬やサプリメント等を販売するにあたって、ただ飲み合わせを確認するのではなく、症状によっては医療機関の受診を促さなければなりません。疾患に関する知識も、常にアップデートしていく必要があります。
コミュニケーションスキル及び提案力
限られた時間や情報の中で相手のニーズを正確に把握し、症状や悩みに応じて適切な製品を提案する能力が求められます。また、市販薬を提案する際には、ご家族構成・それぞれの持つ疾患なども踏まえて安全に使用できるようにすることが望ましく、状況を伺うにはコミュニケーションのスキルも欠かせません。
健康やサプリメントに関する資格
「公認スポーツファーマシスト」や「NR・サプリメントアドバイザー」など、健康や健康食品に関する資格があると、相談を受けたときに自信を持って提案ができるでしょう。
スポーツファーマシストはまだ多くないですが、選手の人生がかかる問題ですから、ニーズは高いです。転職をお考えの方は、こういった資格を取得するのも良いかもしれません。
企業薬剤師に求められるスキル・能力
最後に、企業薬剤師に求められるスキル・能力を解説します。
企業の薬剤師は、医薬品や医療に関する知識が広く必要です。そして、その職種に応じてプラスアルファのスキル・能力が求められます。
たとえば、MRであれば医療従事者とのコミュニケーションスキル、提案力、プレゼン力が必須です。そのためには、関わる領域での深い専門知識も身につける必要があります。
CRC(治験コーディネーター)は、治験をスケジュール通りに進めるためのマネジメント能力が必須です。細かいところまでチェックするのが苦にならない性格の方に向いているといえるでしょう。
そのほか、管理薬剤師にはマネジメント能力、学術職には情報処理能力など、それぞれに特徴的なスキルが求められます。
職種によっては、情報を集めるために語学力も必要です。外資系企業では英語力が必須で、採用にあたって英語力の証明が課せられる場合もあります。
まとめ
今回は、薬剤師が転職するにあたり役立つスキルを職種別にご紹介しました。
同じ「薬剤師資格保持者」としての転職であっても、職種によって求められることはさまざまです。ただ薬剤師資格があるというだけでは、ほかの求職者と差別化ができず、思いのほか転職活動で苦戦してしまうということもあります。
転職をお考えの方は、それに向けて必要なスキルを身につけたり、アピールにつながる資格を取得したりと、準備をしておくと良いのではないでしょうか?
今回の記事を参考に、スキルを身につけ、理想の職場への転職を叶えましょう。