薬剤師が働く医療機関は多岐にわたります。日々処方箋に携わる薬剤師でも、勤務先によって業務内容が違うため、求められるスキルや役割も異なります。
転職活動中の方は、自分が歩みたいキャリアに合わせて勤務先を選ぶとよいでしょう。
今回は、病院の薬剤師に焦点を当てて、仕事内容を詳しく紹介します。
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👉希望に合う求人を紹介してもらう病院薬剤師と薬局薬剤師の違いとは?
病院薬剤師と薬局薬剤師では、業務内容が大きく異なります。
薬局では、処方箋や患者とのやりとりから病態を推測し、服薬指導をおこなうことが多いでしょう。自宅で過ごす上で必要なサポートを考えることも必要です。かかりつけ薬剤師ともなれば、患者とは長く付き合っていくことになります。
一方、病院薬剤師は電子カルテを見たり、医師・看護師と直接協議したりすることができる環境にあるため、状況を正確に把握してより深い介入がしやすいと言えます。
入院中に新たな治療を開始することも多く、病気や治療に対する患者の理解を高め、アドヒアランスを向上させるのも重要な役割です。
このように、同じ薬剤師でも業務内容は全く異なります。
病院薬剤師の仕事内容
同じ薬剤師でも、薬局と病院では仕事内容が大きく異なります。病院薬剤師の仕事内容は以下のとおりです。
調剤業務
入院患者が服用する内服薬の調剤を行います。病院によってルールは異なりますが、長期入院の患者の場合でも、処方日数が1週間程度の定期処方が基本です。
また、患者の状態に合わせて、臨時の処方をします。一般の調剤薬局では、訪れた順に調剤していくのが一般的です。
一方、院内の薬局では処方箋を発行した順番に関係なく、状況に応じて必要な薬から先に調剤します。
調剤済みとなった薬は病棟に届けられ、看護師などが服薬管理をします。
製剤業務
院内で決められた手順に基づいて薬を調製する「院内製剤」も、病院薬剤師ならではの仕事です。
疾患や患者の病態によっては、有効とされる医薬品が流通していない場合があります。その際は、担当医と相談したうえで、医療用医薬品としての流通のない薬剤を院内で調製します。
薬の調整・品質管理のためには、専門的な薬学の知識が必要です。大学で培った薬学の知識を「現場で発揮できる」と感じる機会となるでしょう。
注射調剤業務
注射調剤業務は、院内処方せんに基づいて注射薬を調剤する業務です。近年では業務効率化のために、注射剤の取りそろえを機械が担っている病院も多くあります。
システムを用いて、投与量や点滴速度・投与間隔は適切か、ほかの注射薬との配合変化は起きないか、といったことは大まかにチェックすることができますが、病態に合わせ薬剤師が個々にチェックすることも大切です。
薬剤師は、患者の安全や効果に問題がないかを総合的に考慮し、専門性を持って薬物治療を管理します。
混注業務
抗がん剤や高カロリー輸液などの混注業務も、薬剤師の仕事です。安全キャビネットやクリーンベンチ内で衛生的に調整します。薬剤師による無菌調整処理には加算がついているため、多くの病院で混注業務に取り組んでいます。
最近では、抗がん剤の自動調整ロボットが出始めていますが、まだまだ人の手で行われる業務です。
病棟薬剤業務
薬剤師が入院患者の元に向かい、服薬指導を行います。入院時の患者との初回面談では、現在使用している医薬品・市販薬の確認や、院内での代替薬を提案するなど、院内に採用していない薬剤や市販薬に関する知識も必要です。
病棟では、医師や看護師・リハビリスタッフなどと密に連携し、ときには病棟のカンファレンスに、病棟担当として参加することもあります。
入院から退院まで、患者一人ひとりに寄り添うことができるのも、病院薬剤師の魅力です。
救命救急業務
救急外来やICUにいる患者に合わせ、薬剤選択をサポートします。特に救急医療では、ハイリスク薬を使用する場合も多いため、薬剤師が治療に関わることに大きな意義があります。
ときには中毒に対する解毒薬に関して相談を受けることもあります。迅速に、かつ適切な情報を提供できるかが試される場でもあります。
治験業務
治験は新薬開発において、国から製造販売承認を受けるために必要な臨床試験です。病院薬剤師であれば、病院で行われる治験に携わる機会もあるでしょう。
治験は、条件が定められたプロトコル(手順)にしたがって進めなければなりません。そのため、治験に使用される薬は厳重に保管される必要があり、患者にも正しく服用してもらう必要があります。
高度な薬学知識を誇り、適切な薬学管理を担う薬剤師が関与して、初めて治験を安全に進められるのです。
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👉希望に合う求人を紹介してもらう病院薬剤師の1日の仕事の流れ
病院薬剤師は、どのような1日を過ごしているのでしょうか。働くイメージが明確になれば、転職を考える上でも参考になると思います。病院や、配属される部署によっても働き方は異なりますが、代表的な例としてご紹介します。
日勤の場合のスケジュール
まずは、病棟専属の薬剤師として日勤をおこなう場合を例に、想定されるスケジュールです。
■ 08:30〜 出勤、部署ミーティング
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■ 08:45〜 入院患者の情報収集
入院予定の患者について、入院目的や使用中の薬剤、アレルギー情報などを収集し、面談の準備をおこないます。
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■ 09:30〜12:00 入院患者との面談、申し送り
入院患者の持参薬の服用方法・管理方法、副作用状況などを確認します。持参薬情報を電子カルテに入力し、採用のない薬剤の代替薬の提案、用量や相互作用の評価などについて、他の医療スタッフに申し送りをおこないます。
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■ 12:00〜13:00 昼休憩
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■ 13:00〜14:00 薬剤指導を実施
新規の薬剤が始まった患者に指導をおこなう、治療中の患者の副作用モニタリングをおこなうなど、患者のベッドサイドで薬剤師として業務をおこないます。担当病棟の医療従事者からの問い合わせにも、随時対応します。
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■ 14:00〜15:00 注射薬のチェック
注射の定期処方の内容をチェックし、疑義照会や処方提案などを実施します。病院によっては、内服の定期処方も病棟担当者が目を通す場合もあります。
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■ 15:00〜16:00 カンファレンスに参加
医師や看護師とカンファレンスをおこない、治療の問題点や退院までに必要な指導・ケアについて話し合います。
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■ 16:00〜17:30 記録の記載
患者との面談で聞き取った内容や、それに基づいた薬剤師としてのアセスメントを記録に残します。
夜勤の場合のスケジュール
次に、夜勤をおこなう場合のスケジュール例です。
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■ 15:00〜17:00 調剤
病院によって、夜勤者がおこなう業務が決められています。数日先から開始予定の定期処方を調剤する、定期処方に間に合わなかった翌日分の注射や内服薬の調剤をするなど、施設の決まりに沿って業務を開始します。
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■ 17:00〜19:00 当日分の緊急処方を調剤・鑑査
就業時刻を過ぎても、入院患者の処方は発行されることが多いです。日勤者が帰宅したあとは、夜勤者がオーダーされたものを調剤・鑑査していきます。
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■ 19:00〜20:00 休憩
処方が落ち着いてきたら、夜に備えて休憩をとります。
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■ 20:00〜翌08:00 緊急オーダーの対応、問い合わせ対応
夜間に救急外来を受診した患者さんの薬や、入院患者で緊急に必要な薬など、処方があればその都度対応します。また、夜間でも配合変化や調整方法などについて医師や看護師から問い合わせを受けることもあります。
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■ 08:00 申し送り、帰宅
日勤者に申し送りをおこない、業務終了です。
病院薬剤師ならではの魅力とは?
次に、病院薬剤師ならではの魅力について具体的に紹介します。
チーム医療に携われる
病院では、チーム医療を支える一員として薬剤師が活躍しています。
例えば、医師からは難治症例の薬剤選択の助言を求められ、看護師からは薬の説明が求められます。
患者以外の人からも頼ってもらえていると感じるのは、薬剤師にとってモチベーションを維持しやすいでしょう。
院内では医師や看護師のほかにも、医療事務・管理栄養士・理学療法士など、幅広いスタッフと連携して働きます。
チームで患者の最善な治療を目指す一体感を味わえるのは、病院薬剤師ならではの魅力といえます。
病院薬剤師ならではの知識が身に付く
病院薬剤師は業務でさまざまな医薬品に触れながら、医薬品に関する幅広い知識が身に付きます。
主に内服薬を扱う薬局に比べると、病院では内服薬・注射薬・外用薬などの医薬品全般を扱うので、病院薬剤師は膨大な知識量が求められます。
また、患者に処方する薬剤だけではなく、検査用医薬品や院内で使用する消毒薬など、院内で使用するすべての医薬品管理も病院薬剤師の仕事です。
病院で要求される医薬品の情報は豊富なため、DI業務(医薬品情報業務)という、医薬品情報を扱う業務を専門に担当する薬剤師もいます。
他職種のスタッフや患者から多様な問い合わせが集まるため、より最新かつ深い薬剤知識が求められます。
ときには抗がん剤の治療や、救命救急業務にも携わります。薬の知識が直接患者の命を救っていると感じる場面があるのは、病院薬剤師だからこそです。
長く働けば年収アップが期待できる
病院薬剤師は、薬局薬剤師よりも給与水準が低いというイメージをお持ちの方が多いかもしれません。実際、初任給で比較すると病院薬剤師の方が低い傾向にあります。しかし、長く勤務することで着実な昇給が見込めるため、生涯賃金は薬局薬剤師とほとんど変わらないことがわかっています。
同じ職場で長く働き、安定したキャリアを築いていきたいという方にとって、病院薬剤師の給与事情は魅力となるのではないでしょうか。
専門薬剤師の資格取得につながる
がん専門薬剤師や薬物療法専門薬剤師、精神科薬物療法認定薬剤師など、さまざまな認定・専門薬剤師の資格があり、取得していればキャリアアップ・転職にも有用です。こうした資格の申請には病院勤務が必要なもの、病院勤務の方が症例などを集めやすく取得の近道となる資格が多くあります。
専門薬剤師を取得してキャリアの選択肢を広げ、給与アップも目指すというのは、病院薬剤師に有利な道といえるでしょう。
病院薬剤師に求められるスキル・知識
それでは、病院薬剤師にはどのような人材が求められているのでしょうか。病院薬剤師に求められるスキルや知識について説明します。
コミュニケーション能力
病院ではチーム医療が基本です。そのため、医師や看護師をはじめ、PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)など、多くのスタッフと円滑なコミュニケーションを取る能力が必要です。
他部署との連携ももちろんですが、薬局内での連携も重要です。病院では当直時間帯など特殊な場合を除き、基本的に複数人で調剤や監査をします。円滑にコミュニケーションを取ることができ、業務をスムーズに進められる人材が求められます。
病棟薬剤業務では、入院患者の状態に合わせた会話が大切です。患者との会話から服薬状況や健康状態を把握するのは、病院薬剤師に重要なスキルです。
薬剤に関する専門的な知識
病院薬剤師は、あらゆる診療科目の処方せんをもとに調剤できる知識量が求められます。なぜなら、病院に入っている診療科目すべての調剤をする必要があるからです。
病院の間近にある門前薬局の場合、毎日同じ診療科の処方に触れる機会が多くなりますが、病院薬剤師は複数の診療科の処方に対応していかなければなりません。
また、薬の情報は日々アップデートされていくので、継続的に勉強していく必要があります。
薬剤師国家試験で得た知識が、古い情報になってしまうことも珍しくありません。薬学に興味を持ち、自ら勉強会やセミナーに参加しながら学び続ける姿勢が大切です。
業務をこなす体力
意外かもしれませんが、病院薬剤師にとっては体力も重要なスキルです。
当直業務や宿直業務がある病院の場合、変則的なシフトでも業務をこなせる体力が求められます。
また、院内薬局は、街中にある市中薬局よりも規模が大きく広いため、移動距離が自然と長くなります。
患者のいる病室へ向かったり、院内の薬剤を管理するために出向いたりと、病院内を歩き回る必要があることから、想像以上に運動量が多いです。
病院薬剤師ならではの注意点
病院薬剤師としての勤務には、多くのやりがいやメリットがありますが、一方で注意点も理解しておく必要があるでしょう。多くの病院薬剤師に当てはまる2つの注意点をご紹介します。
夜勤・当直がある
特に急性期病院の場合、夜間も病院の機能を維持するため、薬剤師も夜勤・当直を行うことが求められます。薬剤師の人数が少ない病院では、夜勤・当直の回数が多くなり、体力的にツラくなることも考えられるでしょう。
施設により、夜勤・当直中に課される業務負担の大きさは異なりますので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。夜勤手当・時間外手当などがつくため、給与面ではメリットとも言えます。
平均給与が低い傾向にある
病院は調剤薬局と比較して、特に若い年代で平均給与が低い傾向にあります。初任給を見ても月に数万円の差があり、給与の低さが人気の低下にもつながっているようです。
ただし、長く勤めて役職に就く、認定資格に対して手当のつく病院を選ぶなどで、最終的には高い給与が見込める可能性もあるでしょう。現在だけでなく、将来的に見込める給与を加味して総合的に考えてみる必要があります。
病院薬剤師に向いている人とは?
これまで、病院薬剤師の業務内容や薬局との違いについて、さまざまな観点から解説してきました。同じ薬剤師でも、全く違う業務をしているため、「病院薬剤師に挑戦してみたいけど、自分にできるだろうか」と一歩を踏み出すのに躊躇してしまう方もいるかもしれません。
次のような人は、病院薬剤師に向いているといえるのではないでしょうか。当てはまるものがあれば、ぜひチャレンジしてみてください。
● 他職種と協力してよりよい薬学的介入をおこないたい
● 資格を取得して自分の価値を高めたい、キャリアアップしたい
● 体力に自信がある
● いろいろな業務に携わってみたい
● 短期的な高給よりも長期的な安定を好む
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病院薬剤師には病棟薬剤業務や救急業務といった、病院でしか経験できない業務が多数あり、高度な薬学知識が求められます。
日々学び続けることはときに苦労もともないます。しかし、学んだ分だけ薬剤師として大きく成長できる職場ともいえるでしょう。
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