厚生労働省は1日、「治療用放射性医薬品の非臨床試験・臨床試験デザインに関するガイドライン」を公表した。治療用放射性医薬品の製造販売承認に関する明確なガイドラインが存在しない現状を踏まえ、新規の治療用放射性医薬品の製造販売承認申請や臨床試験開始に必要な非臨床試験、臨床試験を実施する場合に考慮すべき基本的事項をまとめた。ICHガイドラインの考え方に沿った試験の実施を求める一方、非臨床評価によっては既存の学術論文や非GLP試験結果の活用を認め、開発初期に不要な試験を避けて開発の効率化を後押しする。
放射性医薬品の製造販売承認をめぐってはガイドラインがなく、ICH-M3(R2)やS6ガイドラインなど一般的な医薬品、バイオ医薬品向けのガイドラインに準拠して非臨床試験を行う必要があり、実態にそぐわない対応が求められるケースがあったという。
今回、ガイドラインでは開発中の治療用放射性医薬品の放射性核種、非放射性成分が既に医薬品として承認されている場合には「それら成績を用いることで新たな非臨床試験を実施しなくて良い場合もある」とするなど、柔軟な姿勢が示されている。
治療用放射性医薬品の放射性核種の壊変により放出される放射性曝露に基づく影響については、放射線の種類と量を考慮して「非臨床安全性試験の項目の要否を検討することは可能」とし、放射線曝露による毒性についても「適切な文献情報等からの評価も可能」とした。
安全性薬理試験は、非放射性成分の生命維持に重要な器官に対する影響、標識に用いた放射性核種の元素の生体影響が十分に評価されている場合には「治療用放射性医薬品を用いた安全性薬理試験を実施する意義は低い」とし、他のデータでの代替を認める方向だ。
一般毒性評価も、放射性核種の壊変によるヒト・器官・組織への影響や未標識体のヒトへの安全性が十分に評価されている場合は「実施する意義は低いと考えられる」とし、薬効薬理や不純物評価でも既存の学術論文や非GLP試験結果の活用を可能とする。
ガイドラインの発出について、治療用放射性医薬品を製造販売する企業は「放射性医薬品に特有な『有効成分がごく微量で、投与回数が限られる』といった性質を踏まえ、非臨床から臨床へのスムーズな橋渡しを目的とした合理的な試験設計を可能にする内容」と評価した。
また、「ガイドラインは米FDAの腫瘍治療用放射性医薬品に関するガイダンスとも内容が近く、海外と足並みを揃えた制度的整備が進んだことで、海外で開発が先行している製品の日本での申請や承認がよりスムーズになることが期待される」とコメントした。
2025.08.06