厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議は23日、日本新薬の勃起不全(ED)治療薬「シアリス錠10mg」(一般名:タダラフィル)のスイッチOTC化について議論した。安全性が高いなどとして日本泌尿器科学会など3学会はOTC化に賛同した一方、日本臨床内科医会は他剤との併用禁忌などを懸念して反対。構成員からは対面販売に向けた薬剤師の対応強化が課題に挙げられ、薬事審議会要指導・一般用医薬品部会に意見として提示することとした。
同剤は、満足な性行為を行うのに十分な勃起とその維持ができないEDを効能・効果とし、2007年に製造販売承認を受けた。
重大な副作用として過敏症、その他の副作用として頭痛や筋痛等が報告されている。海外では英国などでタダラフィルがOTC化されているものの、国内では同種同効薬や類薬はOTC化されていない。
日本新薬から権利許諾を受け、同剤のOTC医薬品としての承認申請を行ったエスエス製薬はこの日の検討会議で、OTC化後の適正使用と適正販売に向けて取り組む内容を説明。薬剤師による対面販売時に使用できる適正使用ガイド案を示したほか、偽造改ざん防止技術を施した製品パッケージの供給、適正販売を順守する取引先だけに販売するなどとした。
日本泌尿器科学会、日本臨床泌尿器科医会、日本性機能学会、日本OTC医薬品協会は、重篤副作用の発現が稀であること、偽造品による健康被害防止等の観点から、OTC化に賛成する見解を示した。
一方、日本臨床内科医会は、一酸化窒素剤との併用は禁忌であること、薬剤師が対面で患者の心血管障害の有無を十分確認することは困難などとしてOTC化に反対の見解を示した。
宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、薬局薬剤師の現状について「患者に何か問題があればどの泌尿器科に受診を勧めるなど具体的なことを伝えていないため、全く受診勧奨ができていない」と厳しく指摘し、患者に適切な対応ができるよう適正使用ガイド案を使用する重要性を強調。1パッケージ当たりの錠数の検討、粗悪な偽造品の排除等も必要と訴えた。
富永孝治構成員(日本薬剤師会常務理事)は、医療用医薬品での使用実績から「この薬剤がOTC化しない方が良い理由はない」とした上で、「無責任な受診勧奨を行っている薬剤師は多く、OTC化された場合は覚悟を持って販売していく必要がある」と同調した。
処方箋不要で購入できることを懸念した宗林さおり構成員(岐阜医療科学大学薬学部教授)は、「疾患を持つ人に使うのが前提であり、疾患の有無をきちんと薬局で確認できなければならない」としたほか、「正常な性行為以外での乱用の危険性はないのか。オーバードーズや性犯罪につながる懸念もある」と指摘した。
2025.5.28