厚生労働省は1日、危機対応医薬品(MCM)について、重点感染症の研究開発優先度を総合的に評価したリストを危機対応医薬品等に関する小委員会に示した。公衆衛生危機の発生の予見性が低いとされているグループA・Bの感染症のうち、ワクチン・治療薬のいずれも研究開発優先度が高いとされたのはエンテロウイルス(A71/D68含む)で、RSウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)については治療薬の研究開発優先度が高いと評価した。
厚労省は、MCMの利用可能性確保の必要性、研究開発の実現可能性の観点から重点感染症に対する診断薬、ワクチン、治療薬の研究開発優先度を3段階で総合評価した。
MCMの利用可能性確保の必要性は、疾病負荷を評価する公衆衛生的指標と、海外承認薬など既存のMCMの有無を評価した戦略的指標に基づき総合点を算出。研究開発の実現可能性では、ワクチン・治療薬について国内パイプラインの有無、国内臨床試験、国際共同治験の状況を踏まえて評価した。
エンテロウイルスは、ワクチンと治療薬において研究開発優先度が最も高いとされる「迅速な実用化を目指して非臨床以降の研究開発を重点的に支援するもの」として評価された。
エンテロウイルスに特異的なワクチンは承認されていないが、海外で承認されているものがある。軽度な症状が多い一方、致死的となることもあるため、重症者に迅速に投与可能な剤形で効果発現が早い薬剤が必要で、重症化リスクが高い小児にも投与可能な治療薬が必要とした。
小児における流行が問題となっているRSウイルス感染症については、感染予防薬が国内で承認されているが、治療薬は海外で承認されているのみ。
そのため、国内の研究開発パイプラインが存在しており、研究開発の実現可能性もあるとした。小児でも投与可能な治療薬が必要であり、安価で手軽に使用可能なモダリティが望ましいともした。そのほか、SFTSは治療薬に加え、診断技術の研究開発優先度も高いと評価された。
グループAの天然痘は診断技術、治療薬、ワクチンのいずれにおいても、研究開発の優先度は3段階で最も低いとし、「感染状況や研究開発の進捗等により適切に研究開発支援に進めていくもの」とした。
グループCの重点感染症で治療薬の研究開発優先度が高い重点感染症は「非結核性抗酸菌」(NTM)、「カンジダアウリス」「アスペルギルスフミガタス」の三つとなった。
総合評価は、感染状況等や研究開発の進捗度・MCMの承認状況等により、柔軟に再評価を行うこととしている。
構成員からは「天然痘やラッサ熱は再評価してもいいのではないか」など個別の感染症に対する評価に疑義を呈する意見も出た。
2025.9.5