社会保障審議会の高額療養費制度のあり方に関する専門委員会が16日に開かれ、患者に不可欠な高額療養費制度を今後も堅持しつつ、同制度に限定せず医療保険制度全体の見直しや国民のコスト意識醸成の重要性を指摘する声が出たほか、制度見直しに向けた素案作成を厚生労働省に求める意見も相次いだ。
この日の委員会で厚労省は、高額療養費制度はセーフティネット機能として患者に不可欠な制度で今後も堅持していく必要性があること、制度改革の必要性は理解しつつ、他の改革項目も含めて医療保険制度改革全体の中で議論していく必要があるなどとした。
その上で、同制度における給付と負担のあり方、仮に自己負担限度額を引き上げた場合は急激に負担が増える事例の発生可能性があるため、制度見直しにどのような制度的配慮が必要か、国民のコスト意識という課題を踏まえ運用面を含めてどのような対応が考えられるかを論点とした。
佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)は、「医療費適正化に向けた低価値医療の抑制、財源のバランス等について検討すると共に、国民の納得感の観点で見直しを進め、費用の見える化と透明化を含めた国民全体のコスト意識の喚起が必要」と訴えた。
井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)も、「患者など当事者だけでなく、国民全体のコスト意識を高めなければ医療費全体の議論は進まない。費用の見える化や科学的根拠を示し、国民に理解してもらう活動も重要」とした。
島弘志委員(日本病院会副会長)は「社会保険料を支払っている現役世代の生活上の負担は厳しく、制度の意味を国民に理解してもらうのは至難の業だが、理解が非常に重要」とした。
原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)は「具体的なたたき台を厚労省が提示し、それをベースに現行制度で何が欠けているか議論してはどうか」と求め、城守国斗委員(日本医師会常任理事)も「患者の年間負担上限額の設定等も含め、見直しの考え方を示してほしい」と述べた。
一方、物価高騰等で国民の経済状況を懸念する袖井孝子委員(高齢社会をよくする女性の会理事)は、「今は負担上限額引き上げの時期として悪い。制度改革は待ったなしと理解するが、直ちに実施しなければならないかは疑問」とした。
天野慎介委員(全国がん患者団体連合会理事長)は、「ドイツでは自己負担限度額は世帯年収の2%、フランスは抗癌剤等の代替性のない高額医薬品の自己負担がない」と欧州を引き合いに、「日本では高額療養費制度の適用があっても年額で2~3割程度の負担となり、突出して海外より負担が低いわけではない」と理解を求めた。
2025.9.19