2021年の総患者約7653万人のうち一つの薬局だけを利用した患者の一元化率が12.57%に上り、都道府県や2次医療圏ごとで大きな差がある実態が、長崎国際大学薬学部の宮崎長一郎訪問研究員らの調査結果で明らかになった。都道府県では長野県、石川県、福井県、2次医療圏では長野県上小(上田市)、香川県小豆、福井県奧越の一元化率が高かった。一元化により使用薬剤数が減少する結果も示され、宮崎氏は「非一元化患者の10%(300万人)が一元化された場合、年200~800億円程度の薬剤費抑制が試算される」としている。
宮崎氏らは、国がかかりつけ薬局を推進する中、処方箋の一元化状況に関する報告が多くないことに着目し、厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用い処方一元管理の実態を調査した。
期間は21年4~9月の半年間。複数医療機関を受診した患者のうち、一つの薬局で全ての処方箋を処理した患者の割合を薬局の一元化率と定義し、NDBから得られる全ての調剤レセプトを用いて算出した。
21年前半の総患者7652万9643人のうち、複数の医療機関を受診した患者は全体の43.58%で、そのうち2医療機関受診患者は78.92%、3医療機関までで94.90%を占めていた。一つの薬局だけを利用した患者の一元化率は12.57%となり、都道府県によって一元化された患者の割合が7倍、2次医療圏単位では24倍の差が生じていた。面分業を推進していた長野県上田市の上小地域では一元化率が30%に達し、ベスト10に長野県の2次医療圏が多く並んだ。一方、低かった都道府県・2次医療圏は九州地方に集中した。
別の集計で薬局を対象に調査した患者の一元化率は7.4%、一つの薬局に患者が複数の医療機関の処方箋を持参した患者の割合を示した複数率は9.0%であり、一元化率と複数率は正の相関を示した。複数率では長野県が17.14%と最も高かった。
2次医療圏ごとの一元化率の平均値と薬局数との関係を見ると、薬局数が少ない2次医療圏で一元管理されている患者が多いことが明らかとなった。
また、薬局の一元化により、使用薬剤数の減少につながるとの結果も示した。調査期間内の非一元化患者の平均使用薬剤数は11.95薬剤、一元化患者の平均使用薬剤数は10.25薬剤で、処方箋を一つの薬局で一元的に管理された患者の方が1.70剤少なかった。医療機関数が多い都道府県ほど、一元化患者と非一元化患者の薬剤数の差は大きい傾向にあった。
一元化で1.70剤減らせるとの結果を踏まえ、24年度調剤医療費の動向から1薬剤の調剤費用を2000円と推定すると、平均差に基づく線形換算では非一元化患者の10%が一元化された場合、処方回数を勘案すると年間で最大800億円程度の薬剤費抑制が見込まれるという。
宮崎氏は、薬局の日常業務で一元化率を把握するのは困難とし、「薬局の複数率を把握することによって自らのかかりつけ薬局度合いを測ることができる」と述べ、かかりつけの指標に複数率を提唱した。その上で、「複数医療機関の受診患者を把握し、かかりつけ薬局として利用されているかどうかを計測しておき、地域の薬局としての位置づけを知ることも必要」と訴える。
2025.11.12
