厚生労働省は、2024年度医療用医薬品の販売情報提供活動監視事業報告書を公表し、不適切性が疑われる事例は前年度と同数の18件だった。不適切事例は事業開始した16年度から減少傾向にある一方、「他社製品を誹謗・中傷する表現を用いた」など不適切な要件全てを満たした事例も確認されたため、製薬企業によるMRに対する教育等が引き続き必要とした。
同事業は、広告違反に当たる行為を早期発見し、製薬企業の販売情報提供活動を適正化することが目的。MRの販売情報提供活動に関する情報を選定したモニター医療機関から収集したほか、医療関係者向け専門誌や学会誌、製薬企業ホームページ、医療関係者向け情報サイトについても適切性に疑義がないか、昨年度に9カ月間かけて調査を実施した。
その結果、医薬品に関する情報提供について広告違反が疑われたのは18件で、前年度と同数だった。これら18件について、違反が疑われた項目は23件で、前年度から3件減少。内訳として、「エビデンスのない説明を行った等以外で事実誤認の恐れのある表現を用いた」が5件(21.7%)、「エビデンスのない説明を行った」「他社の製品を誹謗中傷する表現を用いた」「その他」が各4件(17.4%)だった。
これら全ての項目に該当する事例として、企業主催による講演会で、販売情報提供活動の資材等について、使用前の監督部門による審査が不十分なまま不適切な内容が含まれる講演を行った事例を挙げた。
具体的には、演者の医師が承認された用法・用量と異なる短時間投与法や少量長期投与等を繰り返し紹介したほか、他社製品についても言及し、エビデンスを示さずに「両剤は全く同じものだから切り替えても安全」と説明。
「前者は安全・簡単・患者メリット大」などとスライドに記載し、安全性の軽視、誇大表現に当たるとした。
違反が疑われた医薬品に関する情報の入手方法として、「製薬企業担当者(直接対面)」が11件で全体の61.1%を占め、次いで「製薬企業担当者(オンライン・ウェブグループ面談=院内)」が4件の22.2%で続き、前年度から逆転した形となった。
報告書では、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が周知され、不適切事例は着実に減少していると評価された。
一方、依然として企業担当者の説明・表現で不適切性が疑われる報告は多いとして、ガイドラインの理解浸透、企業によるMR教育の徹底を課題に挙げた。
2025.7.30