グローバル開発品目の国内承認申請時期について、日本先行申請、他国申請から6カ月以内の申請を含む「同時申請」の割合は約6割を超え、他国申請から2カ月以内の申請の割合が増えている傾向にあることが、日本製薬工業協会薬事委員会が実施した調査で明らかになった。ただ、厚生労働省の通知の影響を見ると、日本人第I相試験を省略したプロジェクトは医薬品医療機器総合機構(PMDA)に開発相談を実施したもののうち約9割が合意するなど活用が進む一方、グローバル開発品目で日本人データを伴わない申請には慎重な判断がなされており、現状で積極的な活用には至っていない実態が浮かび上がった。
調査対象は内資系企業47社、外資系企業18社の65社で、グローバル開発実施状況を調べた。開発プロジェクト数は昨年から91件増の1197件で、抗悪性腫瘍薬の割合が高かった。国際共同治験は増加し、国内治験は減少していることがうかがえた。
日本での申請タイミングを見ると、「他国での最初の申請から2カ月以内の申請」が36%、「4カ月以内の申請」が22%、「6カ月以内の申請」が4%、「同日申請」が1%、「日本が先駆けて申請」が1%と、同時申請の割合が6割を超えた。一方で「海外承認済み」は10%、「未定」が21%となった。
早期承認取得等のための薬事制度の利用計画では、希少疾病用医薬品の割合が2023年に29%、24年に28%、今年29%と変化がなく、先駆的医薬品、条件付き承認制度、特定用途医薬品については希少疾病用医薬品よりも制度が活用されていなかった。
日本人第I相を実施したプロジェクトは昨年と同様に約6割となっており、実施時期も昨年と傾向は変わらなかった。日本人第I相試験を省略することについて、PMDA相談を実施した99件のうち未実施を合意できたプロジェクトは86件(87%)で、新有効成分は49件含まれていた。
日本人を含む第I相要否の判断に、海外開発が先行する品目で国際共同治験前の日本人第I相を原則不要とする通知の影響があったと回答したプロジェクトは32件あり、そのうち実際に通知内容に基づき第I相実施要否を検討したのは24件、19件は日本人第I相試験を実施しておらず、今後も通知を活用した日本人第I相をスキップする事例が増える可能性がある。
日本人第I相を省略するプロジェクトが増える一方、希少疾病の医薬品の検証的試験について、日本人患者を対象とした臨床試験成績なしに申請可能とする通知の影響については、現段階で活用が進んでいない傾向にあった。
第II相試験以降の臨床データパッケージに日本参加の国際共同治験を含まない成人対象の開発品目は92件だった一方、海外治験のみで申請はわずか4件のみだった。
PMDAは、グローバル開発品目での日本人患者データを引き続き重視している傾向にある。患者数が少なく開発が困難とされる希少疾患でも一定の日本人データが必要とされる背景があり、その結果として日本人の有効性・安全性の確認や投与経験の蓄積を重視した国内治験が積極的に実施されていた。
国内治験実施の約半数の品目で対面助言に基づき、「日本人患者を組み入れた試験の追加、例数追加」「日本人患者を組み入れた試験デザイン変更」など国内開発計画の変更が要求されており、企業側もこれまでの審査対応を踏まえた保守的な開発判断を行っている状況にあった。
一方で、小児開発実施(予定を含む)は17%、成人とは別に小児単独での開発を実施・予定が10%、未定は約3割あり、小児単独開発プロジェクトの67%が国際共同治験に参加・参加予定としていた。日本で小児開発を進めていない主な理由は「小児は対象外の疾患」が最多であり、小児疾患でも日本で小児開発を進めていない主な理由は「国内開発ニーズなし」「治験実施困難」など開発上のハードル、海外戦略の影響が挙げられた。
2025.9.8