医薬品医療機器総合機構(PMDA)はGMP指摘事例速報(オレンジレター)を公表し、製品の品質を確認するバリデーションについて、滅菌バリデーションによる無菌性保証に欠陥が確認された事例を報告した。使用したBI菌種の選定根拠が示されていないことなどが問題とし、無菌性保証に欠陥がないことを文書で論理的に説明できることが必要とした。
厚生労働省の「医薬品および医薬部外品の製造管理・品質管理の基準に関する省令(GMP省令)」の第13条では、新たに製造開始する場合や、製造手順等について製品の品質に大きな影響を及ぼす変更がある場合などにおいてバリデーションを実施することを求めている。
今回の報告対象となった製造所では、シリンジ製剤の最終滅菌のバリデーションで、「BI/バイオバーデン併用法」を採用し、滅菌バリデーション計画書の目的に、BIチャレンジテストの結果等をもって製品の無菌性を担保すると記載していた。
一方、10年以上前に実施した初回の滅菌バリデーションでBIチャレンジテストを実施していたが、当時使用したBI菌種の選定根拠が示されず不明であった。滅菌対象となる製品のバイオバーデンや製造環境中から得られた最熱抵抗性菌よりも強い熱抵抗性を示す菌種をBIとして用いる必要があるが、BI菌種の選定根拠等の情報がなく、求められる無菌性保証レベルを満たせるか不明だった。また、直近の定期的な再バリデーションではBIチャレンジテストを実施しておらず、不実施の理由や妥当性は文書化されておらず不明だった。
PMDAは今回の事例を踏まえ、無菌性保証に欠陥がないことを文書で論理的に説明できるよう求めた。特に、製品を担体とするBIを作製して用いる場合は、BIの作製方法や保管条件等を定め、BIの信頼性を担保することが重要とした。最終滅菌法か無菌操作法かを問わず、日常的に行うバイオバーデンや製造環境のモニタリングは極めて重要とし、無菌性保証への影響を確認するだけでなく、環境悪化を未然に防ぐために継続的に管理することは無菌医薬品の製造業者にとって重要な責務とした。製品のライフサイクルにわたってバリデーションデータが適切に文書化された状態を維持すると共に、社内の知識管理を徹底することなども求めた。
2025.8.22
