使用成績調査で患者の同意取得経験のある製薬企業が約9割に上ることが、日本製薬工業協会が実施した調査で分かった。全例調査での「同意取得経験あり」も半数の企業に見られた。米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)の合同調査でも、外資系企業の約9割が「全例調査では患者に対して何らかの同意取得が必要」と回答しており、GPSP省令に規定されていない使用成績調査の患者同意や倫理的な手続きについて、法制的な整備や国際的な規制調和が必要との指摘も出ている。
製薬協は、医薬品評価委員会PV部会に所属する43社を対象に、2019年4月以降に開始した使用成績調査について今年5月末時点の患者同意の取得と倫理審査に関する状況を聞いた。
使用成績調査で患者同意を取得した経験があるのは88%に上った。同意取得経験のある企業37社のうち、全例調査で同意を取得したのは20社あった。患者同意を取得する目的で最も多かったのは、「学会・論文などの公表を計画しているため」の33社。「会社の方針(グローバルSOPなどで規定されているため)」も17社あった。同意取得の方法は「文書」が29社、「口頭」が14社となった。
倫理審査委員会での審議については「医療機関のルールに従い、必要な場合には倫理審査委員会等での審議を依頼する」が43社中37社とほぼ施設ルールに従っていた。その37社に倫理審査委員会の審議を必須にしていない理由について聞くと、「GPSP省令に規定していないため」が30社と最も多かった。
また、PhRMAとEFPIAが実施した調査では、全例調査に対して何らかの同意取得が必要と回答したのが20社中17社あった。17社に患者から同意を取得すべき内容を聞くと、「調査への参加」は6社が必要と回答したほか、「学会・論文等の発表」には16社、「第三者提供や海外へのデータ提供などデータの2次利用」には12社が同意取得を必要との考えを示した。
使用成績調査結果に関する医療機関へのフィードバック状況も調査し、「学会または論文で必ず報告を行う」が6社、「調査により対応が異なるが報告を行う」が14社となった。
厚生労働省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」の取りまとめでは、「使用成績調査について同意説明や倫理審査の手続きを法制的に整備すべき」と明記された。
現段階において、厚労省に使用成績調査に関する同意説明や倫理審査について法的にどう対応するか明確な方針は定まっていない状況だが、今後の検討課題と言えそうだ。
2024.9.30