欧米を含む第III相国際共同治験に日本が参加した場合の日本・欧米間における承認申請時期の差(申請ラグ)が過去10年間で2016年度を除き2~6カ月となったのに対し、不参加の場合は29.0~58.0カ月と2年半超のラグが発生していたことが、日本製薬工業協会の調査で明らかになった。日本が国際共同治験に参加した場合は同時申請品目の割合が高かった。これに対し、小児適応関連の承認を取得した新医薬品は、その直前に比べ約2倍に増加しており、実質の日本先行品目、同時申請品目の割合が増えていた。
22年4月~24年3月までに承認された新有効成分含有医薬品59品目のうち、厚生労働省の未承認薬・適応外薬検討会議品目を除く56品目を対象に欧米との申請ラグを調べたところ、欧米との承認申請日の差が1年以内の「同時申請」が29品目(51.8%)と全体の半数以上を占め、欧米の承認申請が日本より1年以上早い「欧米先行」は19品目(33.9%)と続いた。
同時申請品目数は増加傾向を示し、欧米先行品目は概ね横ばいで推移していた。23年度における申請ラグの中央値は6.0カ月と、前年度の2.0カ月から伸びたものの、製薬協は「半年以内であれば同時申請とみなすことができる」と分析している。「日本先行」の品目はゼロだった。
このことから、欧米を含む第III相共同治験への参加が重要なカギを握っていることが明らかになった。14年度~23年度までの申請ラグ中央値を見ると、日本が参加した場合はほぼ2~6カ月に収まり、不参加の場合は29.0~58.0カ月と2年半以上の申請ラグが発生していた。17年度以降には、日本が国際共同治験に参加した品目数が不参加の品目数を上回り、それ以降同様の傾向が見られている。
一方、小児適応を取得した新医薬品61品目を対象に欧米と日本間の承認申請時期の差となる申請ラグを調べたところ、22年4月~24年3月では「欧米先行」が24品目(39.3%)と最も多かったが、「同時申請」が19品目(31.1%)、海外で開発されていない「欧米未開発」が13品目(21.3%)、「日本先行」が1品目(1.6%)となり、実質の日本先行品目と同時申請品目を合わせた割合は約6割と改善傾向が示された。
同時申請となった要因にについては、「日本と欧米の対象疾患領域の臨床評価方法に違いがなかったため」「小児開発についても同時開発が会社方針であるため」「成人の臨床試験と合わせて小児を開発することが可能であるため」が上位回答となった。
「欧米先行」となった要因は、「国内開発開始時または国内導入時に既に海外で治験が開始されていた、または承認されていたため」との回答が圧倒的に多かった。
成人開発時に小児開発が義務化されている欧米の国際共同治験に日本が参画する必要性が改めて示された格好だ。
また、国内外同時申請品目の割合が高い領域としては、▽感覚器官用薬▽泌尿・生殖器官用薬▽呼吸器官用薬▽抗悪性腫瘍薬――が挙げられた一方で、欧米未開発品目が一定程度占める疾患領域は、▽抗ウイルス剤▽代謝性疾患用薬▽ワクチン――となった。
2025.10.1