【日病薬 武田会長】専門薬剤師の国家資格化を‐制度乱立で質保証に課題

日本病院薬剤師会の武田泰生会長は17日、盛岡市内で開催された日病薬東北ブロック学術大会で講演し、専門薬剤師の国家資格化の実現に向け、日病薬内でも検討に着手したい意向を明らかにした。各領域で学会・団体による専門・認定薬剤師制度が運用されているが、「制度が乱立しており、専門・認定薬剤師を認定する第三者機関がない」と課題を指摘。薬剤師免許に加えて専門薬剤師免許を国が認定し、上位の国家資格とする二段階の仕組みを実現させることで「専門薬剤師の質をしっかりと担保し、専門薬剤師を国民から認めてもらい、処遇を付けてほしい」と要望した。

専門・認定薬剤師は各種学会・団体によって認定されており、2022年7月時点で30以上に上る。武田氏は「医療は専門領域に細分化されている。医師のみならず、薬剤師にも専門性が求められ、医師と共に問題抽出、問題解決能力を持った薬剤師が専門領域で必要となっている」と述べ、専門性の高い病院薬剤師の育成に意欲を示した。
一方、「それぞれの団体が専門・認定薬剤師制度を運用しているので質保証がされていない」と課題を指摘。専門薬剤師の質保証には統一した基準のもと、認定していく体制が必要との考えを示した。
その上で「質の高い薬剤師の資質が高くなれば、その資質に対してきちんと評価を得ていく。評価を得た薬剤師の処遇がきちんと付いてくる仕組みを作っていかないといけない」と主張。資質の高い薬剤師が手厚く処遇されるための仕組みとして、専門薬剤師の国家資格化を提言した。既に韓国では、24年度に世界で初めて専門薬剤師が国家資格となり、第1回試験では481人が合格し、医療現場で活躍している。
武田氏は、韓国における専門薬剤師の国家資格化について「最初の薬剤師免許はジェネラリストとしての免許であり、専門性を高めた薬剤師に対して一段階上の国家資格を与えるということで薬剤師資格が二段階になった」と説明した。

薬剤師の処遇改善に向けては薬剤師俸給表の創設や医師と同じく医療職(一)の適用を目指し、人事院や厚生労働省などに働きかけているが、武田氏は「32万人いる薬剤師の底上げはもちろんしていかないといけないが、難しい。32万人いる薬剤師の底上げを待つよりも、資質の高い薬剤師をしっかりと国民から認めてもらうことを考えると、二段階制度の国家資格があってもいい」と語り、専門薬剤師の国家資格化によって薬剤師の処遇改善につなげるシナリオを方向性の一つに挙げた。
制度のあり方については、「専門薬剤師制度の評価・認定は国から委託を受けた第三者機関が行い、専門薬剤師に対するインセンティブを付与する」との私見を語った。
病院薬剤師確保に向けた今後の取り組みにも言及。修学資金貸与などの奨学金制度は14自治体、病院薬剤師出向・派遣制度は薬剤業務向上加算の算定施設が4月中にも30施設に拡大していると見られ、今後も広げていく方針も示した。

2025.5.21