革新薬の報奨制度が論点‐原価計算方式を疑問視/創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループ

 政府の「創薬力向上のための官民協議会ワーキンググループ」が1日に初会合を開き、今秋の中央社会保険医療協議会への報告に向け、革新的医薬品の特許期間中の薬価やインセンティブ強化等を論点に議論することを確認した。次回開催時期は未定としつつ、後発品関係団体からヒアリングを実施予定としている。

 作業部会では、既に2026年度薬価制度改革に向けた議論が中医協で始まっているため、「投資とイノベーションの循環が持続する社会システムの構築」を先行的に議論し、今秋をメドに中医協に議論の整理を報告する予定。

 有識者として大学教授、製薬業界団体、関係省庁を構成員とし、座長には北里大学大学院薬学研究科の成川衛教授が就いた。
 初会合では、先行的に議論する論点として、▽革新的医薬品創出に対するインセンティブ強化▽革新的医薬品の特許期間中の薬価▽長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却▽後発品産業の持続可能な産業構造のあり方――などを議論することを確認し、業界団体と有識者がこれらの論点に対する見解を示した。

 日本製薬工業協会は、経済・物価動向等にも対応した医薬品市場の持続的成長、中間年改定廃止等による魅力ある市場の形成、予見性の高いシンプルな薬価制度構築を求めた。特に薬価制度については、革新的新薬収載時に原価計算方式を補足する形で柔軟な類似薬の選定による評価を求め、収載後は薬価が維持される「カテゴリー別薬価改定」の実施も必要とした。

 菅原琢磨構成員(法政大学経済学部教授)は、原価計算方式について画期的イノベーションの評価手法として不適切とし、同手法の薬価算定の適用範囲を狭めると共に、より多様な医薬品の価値を評価する手法開発と適用を求めた。

 また、費用対効果が大きく医療経済的にも比較的短期に社会的リターンが見込める場合に限り、別途基金等を活用した財政支援の枠組みも提案した。

 成川氏は、新薬創出等加算制度の維持・発展は意義あるものとしつつ、「特許期間中の新薬」と「革新的新薬」は同義でないことに留意が必要と指摘。流通改善が進み、市場での価値に見合った取引に基づいて革新的新薬の薬価が自ずと維持される環境となることが理想とした。

2025.9.3