医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(メーカー公取協)は、自社講演会で医療従事者に提供する弁当などの食事(アルコール含まず)や慰労などに伴う飲食(アルコール含む)のルールを定めた運用基準を改定し、来年4月1日に施行する。これまで1人当たりの提供上限金額がケースによって3000円、5000円、1万円、2万円と定めていたところを、食事は3000円、飲食は2万円の二つの基準に改めた。医療施設外における医薬情報提供活動での「飲食」は、活動の趣旨から適当ではないとして認めないことにした。
メーカー公取協は、5月29日付で会員社に「飲食、食事等の提供に関するルールについて」をまとめ、公正取引委員会、消費者庁に届出したことを通知した。
新基準では、国民・患者から理解が得られやすくすることを前提に、諸規定の整合、簡素化、食事・飲食の類型を四つに整理し、提供金額基準を運用基準に明記した。これまでの規約違反では、食事・飲食に関係するケースが多く、一因に基準の不明確さ、複雑さもあると見て、内容を整理した。
基本的には、講演会に伴う医療担当者に提供される食事の金額は1人当たり3000円を超えないこととし、慰労の会食などの飲食では同2万円を超えないこととした。
医療施設外での医療担当者への情報提供活動に伴う食事については、これまで同5000円を超えない範囲で「飲食」の提供も許容していたが、同3000円を超えない「食事」に改め、許容範囲を狭めた。
上限額を下げ、「食事」に限定した理由を事務局は、飲酒しながら医薬品の情報提供を行うことは適当ではなく、飲酒を伴わない分上限額を引き下げたという。
自社医薬品の講演会終了後の懇親行事は、「立食形式で行うもの」と整理した。これまで、同1万円を超えない範囲で着席で行うことを認めていた飲食の提供は、認めないことになった。
医師らを講師に招いてMRの知識・技能の向上を目的に行う「社内研修会」における講師への慰労を目的とした飲食については認めないことにした。通知では「乱用の恐れが大きく、これまでも会社によっては必ずしも『社会的儀礼行為』として許容してきておらず、その取り扱いに相違が見られた」として、基準を明確化した。
メーカー公取協の杉山幸成専務理事は、5月30日の総会終了後に記者団に対し、「国民、患者から見ても理解が得られるよう意識した」と話し、その目安として食事の金額については「国家公務員倫理規程にできるだけ近づけた」と話した。
■新会長に安川氏
メーカー公取協は5月30日、新役員を決めた。会長、副会長は次の通り。
会長:安川健司氏(アステラス製薬会長)。副会長:宮柱明日香氏(武田薬品JPBUプレジデント)、吉田逸郎氏(東和薬品社長)、上原茂氏(大正製薬社長)、伊藤毅氏(参天製薬社長)、加藤照和氏(ツムラ社長)
安川氏は同日の総会であいさつし、改定した「飲食、食事の提供に関するルール」の周知、浸透に「積極的に取り組んでいきたい」と述べたほか、規約の遵守、規約違反の未然防止にも取り組む姿勢を示した。
そのほか、今年度の支部体制の廃止に伴い、本部体制を強化していく方針を示した。
2025.6.4