■26年初頭に省令案
厚生労働省は来年度に公布する改正GCP省令の方向性を示した。治験参加者保護やデータの信頼性確保を担保するために定めたICH-E6(R3)の基本原則を改正GCP省令に反映させるため、「治験における基本原則」を新設する方向だ。基本原則では治験の信頼性基準を満たすために医療機関などの業務量が増大する「オーバークオリティ」の是正に向け、「治験の過程・方法には治験参加者や治験責任医師の負担を考慮すること」などを記す。治験参加者保護や試験結果に影響を与え得るリスクを試験計画策定段階で特定し、リスク最小化の方策を検討するリスクベースドアプローチについては各条に規定し、国内治験への実装を促す。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)が15日にオンラインで開催したワークショップで公表したもの。ワークショップには製薬業界や医療機関の担当者など約5500人が参加した。改正GCP省令は2026年初頭に改正省令案を公表し、早ければ来年4月以降に省令公布、来秋にはGCPガイダンス発出・施行していきたい考えだ。
改正省令は現行省令の主要な構成は維持しつつ、ICH-E6(R3)に準じた構成への変更を検討する。治験に参加する「被験者」の呼称は「治験参加者」に変更する。
第1章の総則は変えないが、第2章には「治験における基本原則」を新設する。基本原則は11項目あり、「治験参加者の人権保護」「治験参加者に十分な説明を行い、自由意志に基づき同意を得ること」などを記載する方向だ。そのほか、「治験の過程・方法には収集されるデータの重要性、治験の参加者および治験責任医師の負担が考慮されること」「治験に従事する者における役割と責務を明確化すること」なども規定する。
治験データの質を確保するための規定を検討する。「試験目的に応じて結果の信頼性を確保し、適切な結果の解釈ができるよう十分な質と量の情報が得られるよう治験を実施すること」「治験参加者の負担を考慮しつつ、治験の質を保証できる手順を定め体制を構築すること」などを想定する。
また、現行省令の第2章「治験の準備に関する基準」、第3章「治験の管理に関する基準」を統合し、改正省令では第3章に「治験の準備および管理に関する基準」を設ける。
リスクベースドアプローチ促進に向けては独立した章を新設するのではなく、各条の規定に盛り込む方針。ICH-E6(R2)に関連したGCPガイダンスでもリスクベースドアプローチによる被験者保護やデータの信頼性確保を図ってきたが、実装が進まなかったとの反省がある。
治験業務プロセスの合理化に向け、「チェックリストのGCPから考えるGCP」への転換を図る。試験の準備段階からリスクベースドアプローチに取り組むよう促し、問題が生じた場合には速やかに責任者や関係者への通知を求める。
一方、各医療機関が独自に設置しているIRB(治験審査委員会)を一つのIRBに集約する「シングルIRB」を原則化する。IRBは治験の内容を適切に実施できる委員会であることを示すため、情報公開を求める。
治験実施依頼者や医師主導治験を実施する医師はIRBの選定理由を説明可能な状態するよう規定し、説明責任を課す。
審査効率化のために審査対象となる資料は軽量化し、一部の手順書や分担医師リストは審査対象からの除外を検討。電子媒体での資料授受を原則化する。
国によるIRBの認定は想定しておらず、治験実施依頼者の選定プロセスを透明化することで質の確保を図る。
2025.10.17
