政府は25日に米国の関税措置に関する総合対策本部を開催し、自民党や公明党から申し入れのあった米国の関税措置に関する提言を踏まえ、「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」を決定した。関税措置に対応するための産業構造の転換と競争力強化では医薬品を重点分野の一つに位置づけ、国内投資や輸出を促進する補助制度・戦略分野国内生産促進税制や経済安全保障分野での研究開発税制を活用し、戦略産業の育成を推進すると記載した。具体的には創薬エコシステムの構築やバイオ医薬品等の国内製造体制の整備を推進する。
米国の関税措置を受け政府は、米国との協議の状況や関税措置による輸出産業、関連する中小企業や地域経済、さらに国民生活への影響をよく注視し、躊躇なく追加的に必要な対応を行っていくため緊急対応策を策定した。
緊急対応策で打ち出した施策は、▽相談体制の整備▽影響を受ける企業への資金繰りをはじめとした支援の強化▽雇用維持と人材育成▽国内消費喚起策の強化と国民の暮らしの下支え▽産業構造の転換と競争力強化――の五つ。産業構造の転換と競争力強化では、関税措置を契機に中長期の視点に立ち「国内回帰投資の推進、サプライチェーンの再構築、輸出市場の多角化や新たな販路開拓を加速させる」とした。
重点分野である医薬品では国内投資や輸出を促進する補助制度・戦略分野国内生産促進税制や経済安全保障分野での研究開発税制を活用し、戦略産業の育成を推進する。
具体的には、日本を創薬の地とするための創薬エコシステムの構築を進め、優れた創薬シーズをもとにしたスタートアップの創出を促進し、革新的新薬を生み出すための民間投資を呼び込む体制を強化すると共に、バイオ医薬品等の国内製造体制の整備を推進するとしたほか、医薬品の輸入動向についても注視すると記載した。
この日の対策本部では、武藤容治経済産業相から、対米輸出総額1480億ドルのうち医薬品は74億ドルと全体の4.9%を占め、大部分は相互関税から除外になっている一方、相互関税除外品も個別に関税措置が予定されていることなどが説明された。
石破茂首相は「米国の関税措置はこれまで国際社会が培ってきた自由で公正な経済秩序のあり方を根本から変容させかねない。自動車、鉄鋼などわが国を支える国内産業、世界経済全体に大きな影響を及ぼしかねないものである」と述べ、米国に対して一連の関税措置の見直しを強く求めていく考えを表明した。
2025.4.30