厚生労働省は5日の医療用医薬品の流通改善に関する懇談会で、物価高騰により医薬品卸で流通不採算が生じている現状を踏まえ、流通改善ガイドラインを「流通コスト」の表現を明記した内容に改訂する考えを示した。流通コストの意識醸成に向け、製薬企業が価格設定する際に個々の医薬品の流通に必要な経費を意識することなどを追記するとしたが、医療機関・薬局側から、価格設定に関与できない立場に配慮した内容にするよう求める声が相次いだ。
日本医薬品卸売業連合会は、低価格品が多い後発品と長期収載品の取引で不採算が生じていると従来から説明していた。実際、厚労省が昨年9月の薬価調査結果から集計した2024年度販売額における不採算の状況を見ると、後発品で卸の不採算率は10.5%、取引価格が薬価を超えた状況である逆ザヤ率は0.095%、長期収載品の不採算率は6.9%、逆ザヤ率は0.003%だった。
現状を踏まえ、薬卸連はこの日の懇談会で、物価高騰・人件費上昇の状況下において卸は流通経費の適正な価格転嫁が必要と主張。製薬企業の価格設定の際に「流通に必要な経費」を踏まえること、単品単価交渉の定義の明確化、単品単価交渉のさらなる促進をガイドラインに明記するよう求めた。
これを受け、厚労省は今後の対応の方向性を提示。流通コストを意識した適正な流通取引が行われる環境整備が必要とし、製薬企業と卸、卸と薬局・医療機関の間における取引において、取引条件と同様に流通コストも踏まえた取引が行われる環境を整備する必要があるとした。製薬企業の仕切価設定と割戻し等のあり方において流通コストの意識醸成を図る観点から、ガイドラインに「流通コスト」という表現を明記するとの考えを示した。
具体的には、製薬企業が価格設定する際に個々の医薬品の流通に必要な経費を意識すること、製薬企業が価格設定に必要な情報を取引先の卸から収集すること、卸は薬局等との価格交渉の実情を踏まえて必要な情報を製薬企業に提供することを明記する。
ただ、日本病院薬剤師会の眞野成康副会長が「製薬企業と卸は価格転嫁できるが、薬局等は薬価を動かせず、割戻しのような都合の良い仕組みもない。既にしわ寄せが来ており、何らかの形で解決策をガイドラインに盛り込む必要がある」と訴えるなど、医療機関・薬局の負担を考慮した改訂内容にするよう求める声が相次いだ。厚労省は今後対応の方向性を再検討する。
2025.11.7
