治験施設支援機関(SMO)15社を対象に治験依頼者との取引における費用と業務対価との関連性について聞いたところ、10社(66.6%)が「費用が業務対価に見合っていない」との認識を示していたことが、日本経済大学経営学部・大学院の赤瀬朋秀教授による調査で分かった。一方、治験依頼者を対象とした調査では「SMOに支払う費用が透明化されている」との回答は6社(18.1%)にとどまり、SMO費用の妥当性について「業務対価と見合っていない」「対価に見合っているか分からない」は26社(78.8%)に上るなど割高と感じており、認識の隔たりが明らかになった。
調査は、日本SMO協会に加盟している21社を対象に2023年11月にオンライン上でアンケートを実施し、15社から回答を得たもの。治験依頼者との取引において「費用の透明性あり」と回答したのは10社(66.6%)に上った一方、「費用が業務対価に見合っていない」と認識しているSMOも10社あった。
治験依頼者からの要求を聞いた結果、「提示見積金額に対する値引き要求」が14社と最多で、「SMO費用の変動費割合(月額費用や初期費用と症例出来高の割合)の指定」「見積金額の上限提示(予算都合など)」と13社が回答した。
治験実施時に医療機関に支払われる費用について、医療機関費用とSMO費用に対価の重複について聞いたところ、13社(86.6%)は「対価の重複はない」との認識を示した。
過去に実施された治験に支払われた治験費用のデータから作成した基準値(ベンチマーク)に基づき、治験費用を算定する「ベンチマーク型コスト」を用いた算定に応じたSMOは7社(46.6%)にとどまり、そのうち5社は「現在より透明性が得られたと思っていない」とした。
これに対して、治験依頼者にもアンケート調査を行い、日本製薬工業協会の会員企業33社から回答を得た。その結果、「費用に透明性あり」と認識している企業は13社(39.4%)にとどまり、SMOに対する費用の透明性においても「とてもそう思う」「そう思う」が6社(18.1%)とSMO側が回答した67.0%と比較して大きく乖離が見られた。
治験依頼者におけるSMO業務対価の妥当性を聞いたところ、「対価に見合っている」は7社(21.2%)の回答しかなく、「どちらとも言えない」が13社(39.4%)、「見合ってない」「全く見合っていない」が13社(39.4%)と費用の妥当性に関する納得感は小さいことが判明した。
治験依頼者は、SMOに対する業務対価が見合っていないとの意識から「SMOに対する値引き交渉」を行っていることがうかがえる結果となった。
治験依頼者がSMOに対して費用交渉をする際に当てはまるものについて、「マイルストンペイメント(症例出来高のさらなる細分化)支払い」と回答したのは33社と全ての企業が当てはまった。
赤瀬氏は「治験依頼者は、SMOの業務や責務に対する理解を深める努力をすべき。SMO側にも価格を明確にし、分かりやすくするなどの努力は必要」と述べ、ベンチマーク型コストを拙速に導入するのではなく両者の相互理解を深めることが先決としている。
2025.8.20
