【厚労科研】他社比較情報をMR提供へ‐過半数企業が規定改定動く

医師・薬剤師から他社製品に関する情報や自社製品と他社製品との比較情報を求められた場合、一定条件を満たせばMRが提供可能とする販売情報提供ガイドラインのQ&A発出を受け、過半数の製薬企業が社内規定改定に着手していることが、厚生労働行政推進調査事業費補助金分担研究報告書「医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドラインに関するQ&A発出後の製薬企業の対応方針」(研究分担者:慶應義塾大学薬学部山浦克典教授)で明らかになった。MR数が多い企業ほど積極的に社内規定の改定を進めている傾向にあり、MRによる有効性・安全性の比較情報の提供を認める動きにシフトしているようだ。

調査は、日本製薬工業協会に所属する製薬企業70社を対象に昨年8月に実施した。Q&A発出後に社内規定を改定済み・改定予定の企業は20社(29%)、検討中の企業は17社(24%)だった。改定済み・改定予定の企業20社において、最も多い改定項目は比較情報(15社、75%)となった。「未承認・適応外使用情報」「情報提供の切り分け」も一定数存在した。
社内規定を改定しない予定の企業でも、約4割が有効性・安全性に関する比較情報を「提供する方針」だった。既に比較情報を提供する方針だったため、社内規定を改定する必要がないと判断した可能性がある。

一方、未承認薬情報提供の担当職種を「MSL」と回答したのは44社(69%)で、「MR」は29%(45%)にとどまった。適応外使用情報提供の担当職種では「MSL」の回答が43社(62%)と最も多かったが、「MR」と回答した企業も41社(59%)存在した。
MR数が多い企業ほど積極的に社内規定の改定を進めている傾向が見られ、未承認適応外使用情報のMRによる提供を禁止している企業では、禁止していない企業に比べてMSL数が多い傾向が確認された。
販売情報提供ガイドライン策定後、医療機関は製薬企業から必要な情報を入手しづらくなったとの指摘もある。その一因として、研究班は「製薬企業の社内規定が販売情報提供活動のガイドラインの範囲を超えて業務を制限している可能性」を挙げた。
製薬企業も販売情報提供ガイドライン遵守と医療機関の求めに応じた情報提供の狭間で苦悩している実態があり、2023年に実施した先行研究では、販売情報提供ガイドラインで「他社の誹謗中傷」「科学的・客観的根拠」という項目の解釈が難しく、比較情報の提供を控える企業が多いことが明らかになった。

調査結果を踏まえ、厚労省は昨年2月に販売情報提供ガイドラインのQ&Aを発出し、比較情報について情報提供する際の4条件を明示。4条件を満たせば規定には抵触しないとの見解を示した。
今回の結果について、研究班は「Q&Aでは比較情報を提供する際の4条件や、具体的な情報の種類ごとの提供可否についても示されているため、『他社製品との比較』と『他社の誹謗中傷』の線引きの判断が明確となり、社内規定改定への動きにつながったと考えられる」と考察している。
研究分担者の山浦氏は「製薬企業には医療機関が必要として求める情報は積極的に提供するようになってほしい」と話している。

2025.6.25